ある日、3~4日来ないので今日辺りかなと思っていたが、サークルの連中から久々にお声がかかったので食事がてら居酒屋で盛り上がった。
そういえば最初に蹴られた日も飲みに行ってたんだと思ってなんとなく嫌な予感がしたが、無事に飲み会も終わって大学通りをぼちぼち歩いていると・・・。

「あぁ~!あんた何でこんなとこにおるんや!!」

PCMAX

俺はビビって振り返ると、眉毛を吊り上げた松島が俺を睨みつけていた。
(げ!)っと思ったが、松島がなぜ怒っているのか?

「榎本、あんたんとこに行ってるんとちゃうんか?」

「え、知らん。まだ部屋に戻ってないし・・・」

「ちょ~こっち来いや!」

松島は俺の肩を掴むとトレーナーが破れるような勢いで引っ張り物陰に連れ込んだ。

「待って待って、ごめん、すみませんすみません」

16歳やそこらのガキに情けないことこの上ないが、俺はビビりまくっていた。

「あんな、お前これで2回目ちゃうんか」

「な、なんですか?」

「とぼけんな!榎本のこと無視すんな、ボケェ」

「ぇ・・・?」

「お前なぁ、榎本がどんだけ好きか分かっとんのんか?お前のせいで停学を食ろたんは知っとるやろ?」

「は?・・・いや・・・」

「何でもええから、はよ帰れ、乗せってったるわ!」

「いや・・・でも・・・免許・・・」

「シバクぞ!!はよせぇ!!」

俺は仕方なく松島の派手な原チャリに乗って、無茶苦茶な運転に死ぬ思いで部屋の前まで帰った。

榎本はマンションの駐輪場のところでボーッと突っ立っていた。
キョトンとしている榎本に向かって、松島が「大学通りをウロウロしとったから連れて来たったで」と言った。

「余計なことしぃな!」

そう言いながらも榎本はちょっとだけ嬉しそうな顔をした。
それより俺は停学のことが気になっていた。

「俺のせいで停学って、なんのことなん?」

「あんた、言うたんか、あほ!」

榎本は松島を睨んだ。

「せやかてホンマのことやん、あんたもちゃんと言うたらなあかんで」

「ええちゅうねん!さっさといにや!」

松島は不満そうにブツブツ言いながらけたたましい音とともに帰っていった。

部屋に入って俺は改めて聞いた。
一応年長者としての責任も感じたし、「俺のせい」と言うからにはほっとくわけにもいかない。

「何したん?」

「なんにも・・・」

「何にもなかったら停学にならへんやん」

「もうええて!」

「いつから?」

「前の話やし・・・」

「ちゃんと言うてや!」

俺は初めて榎本に対して語気を荒げて言った。
言ってから身構えてしまったが・・・。
意外にも榎本は俺の言葉に素直に答えた。

「たいしたことちゃう、持ち検で引っかかっただけや」

「ん?なんで俺のせいなん?」

「せやからもうええて!」

「何持って行ったんや、言い!」

俺は榎本の話を聞いてひっくり返りそうになった。

ややこしいので簡単に言うと・・・。
初エッチの日に帰ってから多少の痛みと興奮で寝付けないでいたら、夜中にお水のお姉さんがご機嫌で帰宅。
榎本はその日あったことを相談がてら報告。

「痛かったんか?」

「うん、今もちょっと」

「最初は気持ちええことないやろ?」

「ちょっとだけ、どないしたらようなるん?」

「自分で練習したらええねん」

お姉さんは酔った勢いもあったのか、妹にとんでもないことを言う。

「今度はいつ逢うん?」

「わからんけどすぐに逢いたい」

「これ、貸したろか?」

「何?」

「バイブ」

「!!」

いくら血が繋がってないとはいえ、15歳の妹に姉が言うことだろうか?
それで馬鹿正直に練習しようと思ったが、ちょっと怖いし、念のため詳しい友達にも相談しようと(まったく今どきの女子高生は)、よりによって学校に持って行ったそうだ。
そのときはここまで詳しくは聞けなかったが、何回か時間をかけて真相を聞いた。
それで停学1週間(そんなもんで済んでよかった)。
ちょうど俺の部屋に来なかった時のことだそうだ。

俺はあまりにも自分と住む世界が違う榎本と周りの環境に唖然として、超引いてしまった。
嫌悪感さえ覚えた。

(やっぱり関わらないほうが良い)

俺は自分にそう言い聞かせた。

(でも、どうやって・・・)

初エッチからすでに数ヶ月が過ぎ、年も明けた頃、榎本は相変わらず何日かに一度は俺の部屋に来ては数時間を過ごす日々が続いていた。
俺も半分諦めの気持ちで応じていたが、やはりどうしても心の中に釈然としない部分が残っていた。
さらにそれはクリスマスに同じサークルの娘からお誘いがあったのに、周りの連中の余計な一言(榎本のこと)でポシャってしまってから一層強く感じるようになった。

そんな時にサークルの追コンがあって一次会が終了した後、かなり上のOBに連れられて、生まれて初めてラウンジという場所に連れて行かれた。
と言ってもそれほど上等な所ではないが、ボックス席があってOBと次期幹部の3年生が2人、2年生が1人、それに俺を含めて5人が腰掛けると、綺麗な洋服に身を包んだいい匂いのする女性が3人、俺たちの間に割り込むようにして就いた。

OBは馴染みらしく、3年生も何度か連れて来てもらっているようで、俺と2年は様子が分からずにモジモジしていると妙にウケて、特に俺が一番若かったので女性たちがからかい半分にチヤホヤした。
今でもそうだが、どうも俺には苦手な環境だった。

<続く>