怒った顔がまた綺麗で女子に人気があり、素直に懐けない男子と対立するというバカな構図になってた。
中学時代は特に何もなく、そのまま卒業。
高校を出て大学行って、就職活動をするようになった。
俺らの就活時期はちょうどバブルの頃で、運転免許くらいしか資格がなくても電話帳みたいな分厚さの就職案内がいくつも送られてきた。
特に不動産関係が凄くて、体育会系に入っているだけでOBの先輩からの勧誘が毎日のようにあった。
優秀な学生の場合は、接待なんてことまであった。
その接待で風俗に連れて行ってもらったんだけど、恥ずかしいことに童貞だったから、正直に先輩にそう言ったら、「どうせ経費で落ちんだから、最高の嬢のとこに連れて行ってやる」って言われた。
世話になってた人だし、風俗で初体験なんて本当は嫌だったけど逆らえなかった。
それで、お店に行って少し待ったあと案内された部屋に行ったら、なんだか見覚えのある人がいた。
その人が笑って挨拶した顔が、俺を見て一瞬で強張った。
俺も何がなんだかわからないくらい動揺した。
そう、中学の時の音楽教師だった。
もう30歳は過ぎてるはずだけど相変わらず綺麗だった。
だけど目元に、化粧で誤魔化していたけどクマがあった。
しばらく無言が続いたけれど、何もなかったかのように笑顔で話しかけてきてプレイが始まった。
風呂から出た後、体ガチガチで童貞丸出しの俺を男にしてくれた。
その後、俺はバイト代が入るたびに、そこに通った。
最初は知らない者同士のふりをしていたけど、話をするようになって、風俗に入った理由を教えてくれた。
結婚したはいいが、旦那がパチンカスだったそうで、結婚後に正体を現して、金の無心に学校まで来るようなクズだったらしい。
別れるのに苦労して、教師も辞めざる得ないくらい嫌がらせされて、弁護士や警察もあまり役に立たなかったらしい。
なんとか借金を肩代わりする条件で離婚して、生活費と借金返済のために働いているとのこと。
買い物に一緒に行ったり、映画を見に行ったりもして、「付き合って欲しい」とお願いしたけど苦笑された。
「初めての相手だから特別に感じてるだけよ」
そう諭されたりもした。
その後、先生はお店を2年ほどで辞めて、故郷の九州に帰った。
年賀状のやりとりをして文通みたいなこともしていた。
ある日、『ある男性から、結婚を前提にお付き合いを申し込まれた』という旨の手紙が届いた。
『お幸せに』と返すべきなのは理解していたけれど、どうしても出来なかった。
その週末、新幹線で先生の住む町に向かった。
電話で来たことを伝えたら、駅まで迎えに来てくれた。
先生はとても驚いていた。
「馬鹿ね」って笑われたけど、涙ぐんだ顔が可愛くてどうしようもなかった。
今でも8歳年上の妻を、「先生」と呼んでしまうことがある。
少し笑いジワが増えたけど、照れる顔は昔と変わらずとても綺麗です。