そこで俺に仕事教えてくれてたのが、石田という41歳のおっさんだった。
本社から出向してきてて、そこそこの偉いさんらしかったけど、本人曰く、「俺は現場が好きなんだ」と。
嘘くせえとは思いつつも、俺はそんな石田さんが嫌いじゃなかった。
明るくて喋りも巧いし商品知識も豊富。
仕事も遊びもバリバリこなすって感じの、まぁ気のいいおっさんよ。
休日にはスキューバなんかにもよく行くらしく色黒で、バイト女子からの人気も高かった。
夏前くらいには俺も仕事に慣れて、学校もそこそこは楽しく、足しげく通った新歓飲みの甲斐もあってか彼女もでき、まぁ充実した毎日を送っていました。
彼女(由佳)はタメで、どちらかと言えば目立たないタイプのコだった。
俺がテンション高く場を盛り上げるバカキャラだったのに対して、いつも隅っこでそれをニコニコ笑って見ているような。
地味目で可憐。
まさに俺が求めていた女の子で一目惚れ。
猛アタックの結果、めでたく付き合うことになった。
由佳は処女だった。
初めての時に、「優しくしてね」と言われ、そん時も俺は嘘くせえと思ったけど、でもやっぱ嬉しかった。
いつもはしょっぱなから結構無茶すんだけど、由佳に対しては(大切にせねば!)なんて柄にもなく思ったりもして。
そんな幸せな日々の続くある夏の日、石田さんに飲みに誘われた。
「お前にゃあキャバクラはまだ早いから普通の居酒屋な」とか「どうせだから彼女も呼べよ。そこそこ美味いもん奢るぞ」とかなんとか。
特に断る理由もなかったんで快諾した。
某ホテルの上の方にある高そうな鉄板焼屋で3人で飲んだ。
石田さんは慣れた感じだったけど、俺と由佳はめちゃ緊張。
肉が美味かったのは覚えてる。
夜景が美しかったのも覚えてる。
由佳がずっと笑ってたのも・・・まぁ覚えてる。
でも、ワインをしこたまガブ飲みした辺りからはだいぶ曖昧。
石田さんに、「平気か?」と聞かれ、深く頷いた記憶を最後に、その後は全く覚えてない。
気がついた時には、だだっ広いマンションのソファーで寝ていた。
テーブルの上にはウィスキーのボトルや缶ビールが散乱している。
頭がぐわんぐわんする。
石田さんの声が聞こえた。
「お前がどうにもならないから俺の家に連れてきちゃったぞ。カミさんと娘は夏休みで旅行中だから気にしないで今夜は泊まってけよ」
俺は、「すみません・・・」と答えてから、「由佳は?」と聞いた。
「いるよー」と本人の声。
そこで再び眠りに落ちた。
薄明かりのリビングで目覚めた。
吐き気がしたのでトイレを探し、吐いた。
キッチンで水を飲んで一息ついた。
(今、何時?つうかここどこ?あぁ石田さんちか・・・)
ゆっくり頭を働かせながらストレッチをした。
これは寝起きの時の俺の習慣なもんで。
身体を伸ばしきると少しすっきりした。
(はて?石田さんと由佳は?)
玄関には由佳のミュールがある。
そん時の俺は、(まさかね?)という疑心と、(そんなこともあんのかな?)という達観めいた好奇心とでドキドキしていた。
寝室らしき部屋を発見。
ドアノブに手をかける。
もしかしたら、こん時の俺の心の有り様に、『愛がない』と指摘する輩もいるかもしれない。
知るかよそんなん。
由佳のことは真剣に好きだった。
でも予想が的中してた場合の、その後の修羅場を思うと、俺は全身が震えるほど興奮した。
鬱勃起?何それ?
あの体位はなんて言うんだろう?
うつ伏せに突っ伏した由佳の上に石田が跨がり、後ろからマンコにチンコを入れていた。
普通、抜けちゃわねえ?
石田のチンコが長いのかな?
後ろに伸ばした由佳の手を石田が掴み、「パッパカ、パッパカ」と言っている。
(え?乗馬?)
「由佳ちゃん、『ヒヒーン』って言って」
(やっぱ乗馬だ・・・)
寝取られ属性だけど変態性はまるでない健全な俺は、(クソッ!体が動かない・・・うう・・・)とか(なんかしらんが勃ってきた)みたいなヘタレとちゃうぞ。
即行動!
パカパカと腰を振る石田のアホ面にヒザ蹴りを食らわせた。
ほんとは閃光魔術をキメたかったが、つんのめって失敗。
でも俺のわがままな膝小僧はアホ石田の頬骨にクリティカルヒット。
仰向けに倒れた石田のマウントを取ると、叫びながらパウンドの嵐。
(脳ミソ揺れろ!脳ミソ揺れろ!)と、集中的にアゴを狙った。
セオリーでいけば、そこで俺は敢えて腰を浮かして相手に逃げる余裕を与え、顔面を庇って体を反転させるであろう石田の頸動脈をバックから一気にチョークなんだろうが、もうすでに戦意喪失の半失神アホ石田には抵抗する余力はなかったし、俺はどうせならあれも試してみてえと思い、強引にぐったりしてるアホ石田を四点ポジションの体勢にして、脳天にボッコンボッコンと膝を突き刺してみた。
そしたら、アホ石田は動かなくなり、鼾をかき始めた。
俺は「寝てんじゃねえぞ」と、こめかみの辺りをつま先で蹴り上げてやった。
由佳はその間、マンコ丸出しでえんえん泣いてた。
その声が正直異様に耳障りだったので、喉笛にフルショットで逆水平を食らわせてやった。
もんどり打ってブッ倒れた由佳は、全身をバタバタさせながら咽頭ガン患者みたいな声で「コーホーコーホー」とウォーズマンの物真似を披露。
バカにされた気がした俺は由佳の腰に手を回しジャーマンでブン投げた。
しかしクラッチは離さず。
ゲーリーの魂が宿った俺はそのまま引きずり起こし連発。
そして3発目、完璧なアーチを描いた原爆固めがフローリングに突き刺さる。
立ち上がる俺。
由佳は板の間に頭をめり込ませ、『く』の字の体勢のまま動かない。
俺は剥き出しのケツの穴にカクテルバーの瓶をブッ刺し、室内の惨状を携帯のカメラに収めた。
残念ながら石田は死んでなかったみたいで、数日後ボコボコの顔で出勤してきた。
俺とは決して目を合わせようとはしない。
俺から近寄り、「奥さんや子供さんにチクりたくなる衝動を必死にコントロールしています。家族に罪はないですもんね」と声をかけたら怯えた目をしていた。
もちろん由佳とは速攻で別れた。
おしまい。