会話は曖昧だけど思い出しながら書いてみようと思う。
一応、実話。

ゆずの『サヨナラバス』がリリースされた年だった。

PCMAX
当時高3で、部活を引退後、俺は某有名予備校に通うことにした。
学校が放課になると毎日予備校にチャリを扱いで向かって授業を受け、授業の無い日は自習室で勉強していた。
浪人生が少ない予備校だったから、学校が放課になってすぐ向かうと自習室は閑散としていた。
俺は一番奥の窓際の席が気に入っていて、いつもそこに陣取っていた。

勉強だけコツコツこなしていて、気がつくと季節は初夏。
その頃から俺の前の席に浪人生の女の子が陣取るようになった。

茹だるような暑い7月のある日、珍しく勉強が捗り、自習室が閉まる時間まで俺は残っていた。
そしてその日は前の席の女の子も含め、数名が残っていた。
音楽を聴きながら黙々とやっていると机を軽く叩かれ、顔を上げるとその子がこっちを向いている。
俺は慌ててイヤホンを外した。

「先生がもう自習室を閉めちゃうって」

その子はにっこり笑ってそう言った。
俺が見かけるときはいつもツンとした感じだったが、清楚な感じの整った顔立ちだった。
周りはもう帰りだしていた。

「え、ああ」

咄嗟にそんな返事しかできず、急いで帰る用意をした。
すると彼女がこう言った。

「何聴いてたの?」

「ゆずだよ、ゆず」

「『夏色』の人らだよね?」

「そうそう」

「へぇ~、聴かせてよ!」

妙に馴れ馴れしかったが、笑顔が素敵で全く腹が立たなかった。
彼女は俺が帰る準備をしている間、音楽を聴いていた。

「これ、いい曲だね。好きな感じ」

どうやら『サヨナラバス』のことらしい。
俺はその子にCDを貸してやることにした。
その日から俺とその子は友人になった。

彼女の名前は『有紀』とする。
どうやら浪人生らしい。
ちなみに俺は『けんちゃん』と呼ばれていた。
それから俺たちは二人とも講義がない日は最後まで自習室に残って勉強し、一緒に帰宅する仲にまでなった。

時は過ぎて季節は秋。
木漏れ陽の暖かい日だった。
有紀の両親が旅行に出かけるということで、俺は彼女の家に外泊することになった。
実はまだ改まった告白はしていない。
それでもお互いに自分たちが恋人同士である自覚はあった。

その日、彼女は講義があって俺は無し。
講義の終わる時間に予備校の出口前で待ち合わせる約束をした。
有紀の講義が終わると俺は自転車を手で押しながら二人で彼女の自宅に向かった。
途中コンビニに立ち寄り、お菓子やジュースを買い込んだ。
俺は有紀の目を盗んで、用意し忘れたコンドームを買って荷物に仕舞い込んだ。

有紀の家に近づくにつれて緊張してしまい、二人の口数も少なくなっていった。
しばらくすると有紀は俺の左腕に手を通してきた。
完全に気分は恋人同士。
秋の夜の冷え込みは激しく、二人で寄り添うと心まで温かかった。

彼女は裕福な家庭の娘で、家はかなり広かった。
兄貴が1人いるらしいが東京の大学に通うため下宿しているらしい。
有紀の広い家には俺と有紀の二人だけだ。

有紀の部屋に荷物を置いて俺が先にお風呂をお呼ばれした後、有紀も風呂に行った。
部屋を物色する勇気もなかったので、温いこたつに入ってテレビをボーっと眺めていた。
風呂上がりの有紀はすごく顔が上気して頬が紅く染まり、とても色っぽかった。
俺たちはこたつに入ってコンビニで買ったお菓子を食べながら勉強を始めた。
勉強と言っても二人で楽しくおしゃべりしながらであくまでも形だけ。
夜も更けて深夜2時。

「そろそろ寝る?」

「そうだね」

すると有紀は来客用の布団を出してくるという。
俺はコタツで寝ると断ったが腰を痛めると言って有紀は聞かず、布団をクローゼットから引っ張り出してきてくれた。
結局、有紀に迫るタイミングが掴めない俺だったが、その後、思わぬ展開となる。

「おやすみ」

「おやすみー」

沈黙が何分続いただろうか。
有紀は眠ったかのように思えた。
俺は有紀とやり損ねたことを激しく自責して悶々としていた。
すると有紀が俺に小声で声をかけた。

「・・・けんちゃん、起きてる?」

「・・・あぁ」

「・・・一緒に寝ない?」

急な展開に驚いたが、俺は黙って立ち上がると有紀は身体をベッドの端に寄せて布団を捲ってくれた。
そのまま二人で向かい合いながら布団に包まり、無言で見つめ合った。

たまらなく愛しくなった俺は有紀を抱き寄せてキスをした。
互いに吸い込まれるようになり、いつしか口の周りを二人の唾で濡らしながら舌を絡め合っていた。
有紀の唇は驚くほど柔らかかった。
唾液を交換する音だけが静かな部屋に響き渡った。

お互い経験済みであることは分かっている。
俺は有紀のパジャマの上から胸を擦った。
嫌がる様子はない。
俺は身体を起こして有紀を仰向けにさせると、パジャマの前ボタンをひとつひとつ指で外した。
有紀は顔を反対側に向けていた。
有紀はブラジャーをしておらず、ふくよかな身体がオレンジ色の豆電球の下に照らし出された。

俺は有紀に跨がって布団を被りながら丁寧に指と舌を有紀の身体に這わせた。
吸い付くような柔らかな肌。
有紀は声は出さないものの息は荒く、顔は上気していた。
乳首と首筋がよく感じるようだった。
パジャマのズボンを脱がそうとさらに潜ると、有紀は腰を上げて脱ぐのを手伝ってくれた。
手探りでズボンを脱がしてショーツの上から指で軽くアソコを撫でた。

「ん・・・」

初めて有紀の喘ぎ声らしい声が漏れた。
ショーツの手触りをしばらく楽しんだ後、有紀の腰の下に手を入れて軽く持ち上げるとショーツを抜きとった。
俺はまた手探りでクリトリスを撫で、クンニした。
石鹸の匂いだった。
有紀のアソコからは愛液が染み出し、俺の口の周りを濡らした。
有紀は布団の端を咥え、声を堪えていた。
しばらくすると俺は暑くなったので布団を取り払った。
有紀も汗びっしょりだ。
俺が荷物から黙ってコンドームを取り出して装着しようとしたとき、有紀は言った。

「待って」

有紀は俺の手からコンドームを取り上げた。
そしてと有紀は起き上がって、いきなりフェラを始めた。
決して上手ではなかったが有紀の優しさを感じた。
舌がカリを這うと快感で背筋がゾクゾクした。
そして有紀はコンドームの封を切し、中身を取り出して俺のチンポに優しく付けてくれた。

「入れるよ・・・」

「・・・うん」

俺は正常位でゆっくり有紀の膣にチンポを入れた。
ヌルヌルしていて温かく、とろけそうだった。
有紀は切なそうな声で喘いだ。
布の擦れる音が艶かしい。
両手を肩の上にあげて曲げ、目を強く瞑る有紀はこの上なく綺麗だった。
俺たちは滴る汗が二人の身体を撫でる快感に酔いしれた。
俺は有紀の胸を揉みしだきながら必死に腰を振るとすぐにイッてしまった。

まだイケそうだったので、コンドームを付け替えて2回戦。
一回戦が終わってチンポに余裕が出来たのでバックや騎乗位、座位など色々試した。
バックでチンポを入れると、有紀の膣がキュッキュッと締まり、俺も声を出して呻いた。
俺は有紀の両手を掴み、腰を深くグラインドさせた。
腰がぶつかる音とともに有紀は大きな声を上げて喘いで感じていた。

「好きっ・・・好きっ・・・」

有紀はこう叫んでいた。
そして最後は正常位でお互いの唇を貪りながらフィニッシュした。

二人で後始末をして、一緒にシャワーを浴びた。
熱いシャワーに二人で当たりながら唇を重ねあった。
この瞬間がずっと続けばいいと思った。

そして春。
お互いなんとか志望校に合格することが出来た。
有紀は東京、俺は地元の大学に通うことになっていた。
お互い遠距離なんて器用なことはできないだろう。
有紀との別れは予期していたが、現実となると話は別だ。
俺は気づけば新幹線の停車する駅まで見送りに来ていた。
俺は頭の中が真っ白だった。
有紀が小さな声で『サヨナラバス』を歌っていたことだけはよく覚えている。

気がつくともうプラットホームだった。
他にも見送りがいたが、俺たちは臆することなく唇を重ね合わせた。
周りの囃し立てる声なんて気にならなかった。
発車のベルが鳴り響いた。
名残惜しくてもう一度軽くキスをすると有紀は新幹線に乗り込んだ。
ガラス1枚隔てて有紀が照れくさそうに微笑んだ。
俺は喉がすごく渇いた気がした。
有紀を乗せた新幹線は静かに走り出した。
俺も有紀も泣いていた。

「さようならさようなら。また笑って話せるその日まで。僕は僕らしくいるから」

二人の出会いだった『サヨナラバス』と重なったのは偶然だろうか。
そうじゃないと俺は信じている。
俺は今でも俺らしく生きています。
有紀はどうですか?