小6から中2にかけて持病で長期入院していたんだが、その年に入ったばかりの新人看護婦さんが、運動会にも文化祭にも卒業式にも入学式にも出られない俺に同情してくれて、いつも一緒にいてくれた。

中1の5月頃、夢精した。

PCMAX
小6の保健の授業をスルーしていた俺は何がなんだかわからず、涙目でその新人看護婦さん(すでに新人ではなかったが)を呼んだ。
看護婦さんはちょっと驚いた顔をしたものの、いつもと違わないやさしい微笑みで俺の体に何が起きたのか教えてくれた。
下半身を見られるのは入院した当初から頻繁にあったから別に恥ずかしさはなかったものの、はにかんだような照れたような顔をしながら、「そっかあ、◯◯くんももう大人かあ」と遠い目で見つめられるのはちょっと恥ずかしかった。

俺はその後も夢精を繰り返した。
そのたびにその看護婦さんを呼んだが、「また~?」と笑いながら丁寧に綺麗にしてもらった。

しかし夢精のペースが早くなり、陰毛が生えだしたにも関わらず初歩的な性の質問ばかりをする俺を見て、何か思うところがあったんだろう。
ある日、小学生用の性教育の本を持ってきて、性について一から教えてもらった。
結構衝撃的だった。

そして看護婦さんが見守る前で初めてのオナニーをした。
看護婦さんは別にその場でさせるつもりではなく、どうすればできるのか手の動かし方だけ教えるつもりだったようだが、結果として俺は射精してしまった。
看護婦さんはちょっと困った顔をしていたが、処理をした後、「これで、もう1人でできるね」と笑顔を浮かべた。
夢精したときに看護婦さんに処理してもらうのをすでに習慣と捉えていた俺はなんとも言えない強烈な寂しさに襲われ、「どこにも行かないで」と中1とは思えないほど子供っぽい駄々をこねた。
看護婦さんは困惑していたが、それでもその夜は俺が寝つくまでそばで手を繋いでいてくれた。
これを俺は図々しくも、“了解”だと捉えた。

その後、オナニーをするときには看護婦さんを呼んで横で眺めていてもらうことを何度かしたものの、人手が足りない中で俺に付きっきりで時間をとられる看護婦さんが疲弊しているのが目に見えてわかった。
さすがに申し訳なくなって、ある夜に謝った。
看護婦さんは無言のまま話を聞いていてくれて、俺が話し終わると、「◯◯くんは本当に大人になったね」と微笑んだ。
ベッドライトの光でぼんやりと見える顔は本当にきれいだった。
これによって看護婦さんが俺と一緒にいてくれる時間は減ったが、俺は寂しくはなかった。
退院の時には涙を流して抱き締めてくれた。

最近、孫を連れてその病院に行った。
もうあの看護婦さんはいないかもしれないなと思ったが、応対してくれた婦長さんがあのやさしげな微笑みを浮かべていた。
年はとっていたものの、まぎれもなく彼女だった。
俺のこともしっかり覚えていて、持病に負けずどうにかやっていることを喜んでくれた。
孫を見せるとたいそう驚いていたが、しばらくしてから、「・・・でも、昔の◯◯くんにそっくり」とあの微笑みを皺の深い顔に浮かべた。