屋上の出口の踊り場に灯いている蛍光灯のぼんやりとした明かりが、妙にエロチックに思え、それは私の心の中に生じている背徳への罪悪感と同時に、私が感じるであろう淫らな快楽の悦びを象徴しているかのようにその眼に映っていました。
扉を開けると、初夏とはいえ冷たい夜風が半袖の白衣の身体に染みるようでした。
手すりにもたれて立っているあの人が、私の方を振り返りました。
サルビァブルーのガウンが周りの闇に駆け込んでいる中、顔色だけがやけに青白く見え、私は胸を締めつけられます。
「待った?寒くない?」
歩み寄りながら私は小声でそう尋ねました。
あの人は微笑んでいるようでした。
「君の方こそ、その格好じゃまだ寒いんじゃない?」
私たちは寄り添って抱き合いました。
それから、屋上のもっと人目につかない場所へ、なるべく暗い場所へと、肩を抱き合って移動したのです。
郊外に建てられたばかりの病院の広い屋上は格好の逢引きの場所でした。
周りには他に建物もなく、覗かれる心配は全くありません。
夜も10時を過ぎれば人気は無くなり、受水槽の裏側の闇に入れば、まず人が来ても気付かれる心配はありません。
「逢いたかった・・・」
どちらからともなく私たちは、その言葉を交わし合います。
昼間何度も会っているくせに。
病院で、廊下で・・・。
検温の時、回診の時、点滴の時、採血の時・・・。
彼は入院患者として、そして私は看護師として、1日に何度も何度も顔を合わせているくせに・・・。
抱き合ってお互いの唇を重ね合い、舌を絡めて激しく吸い合います。
彼の手が白衣の上から私の乳房を揉みます。
優しく、そして時々強くアクセントを入れて。
(ああ・・・。いいわ・・・感じる。とっても、とっても感じちゃう・・・)
答える代わりに私は身悶えしながら彼の身体を弄ります。
股間の膨らみはとても病人のそれとは思えないくらい荒々しく逞しいものです。
パジャマのズボンの中に手を入れて、それを握り、私はゆっくりと指先を動かします。
(ああ、私の、私の大好きな・・・。食べちゃいたいくらい愛しいもの・・・)
その先端部からは、ねっとりとした粘液が洩れているのが判ります。
白衣の肩のボタンを外して、窮屈そうに彼の手が私の乳房を弄ってきます。
いつも思うのですが、白衣っていうのは胸への直接の愛撫には不向きなようです。
前にボタンが付いているのならともかく、そのほとんどは左肩にボタンの付いたものなのですから。
だから私、彼と逢う時はいつもノーブラです。
少しでも彼の愛撫を直に感じられるように、そう思って・・・。
「いけない女だわ。私は看護師失格ね。重い病気の患者さんにこんなことさせて・・・」
吐息混じりに呟きます。
「夜の屋上で白衣のまんま、こんな恥ずかしいことしてるなんて・・・。もし誰かに見つかりでもしたら・・・」
「君はクビで、僕は強制退院ってことになっちゃうのかな?」
そう言いながら彼は私の下半身に手を伸ばしてきます。
ストッキングを通して感じる彼の指の動きが、私はとっても好きです。
「どうせ長くない命だからな。だから君の身体にしっかりと刻み込んでおきたいんだよ。僕の記憶をね」
白衣の裾が捲られます。
ストッキングと一緒にパンティが引きずり下ろされます。
私のそこは十分に潤い、じっとり蜜を湛えています。
「広げて・・・」
言われるままに私は立ったまま両脚を少し広げ、握っていた彼のペニスから手を離します。
彼が脚を伸ばして座り込むようにして、私のそこに顔を近付けます。
「すごく刺激的だなあ。白衣の天使の御開帳だ。見ているだけでイッちゃいそうだよ」
指をゆっくりと挿入し、舌でクリトリスを舐めてきます。
下半身がとろけてしまうようです。
その場に倒れてしまいそうです。
「あ~んッ、んふッ、んふ~ツ・・・」
私は彼の髪の毛を掴んで、お尻を揺すります。
前に後ろに悶えながら・・・。
自分でも呆れてしまうくらいの破廉恥な姿を晒して。
今までに何人かの男の人とセックスしました。
でも、こんなに狂ったのは初めてでした。
ひょっとすると、それは白衣のせいかもしれません。
いえ、きっとそうに違いありません。
男たちが私たち看護師に憧れ、セックスしたがるのは白衣のせいだと、何かの雑誌に書いてあったのを思い出します。
白衣に象徴される純潔のイメージを壊してしまいたいという欲望が、実はその根底にあるのだそうです。
皆が私に対して抱いている、そういったイメージから逃れたいと、心の何処かで願っていたのかもしれません。
だって本当の私はとっても淫らでスケベで、セックスされたくって、恥ずかしいことされたくって、四六時中そのことばかりを頭の中に描いているような女なんですから。
「あ~、そこは・・・そこは嫌・・・」
彼の舌が私のアヌスに移動してきます。
ロでは拒んでも身体は、痺れるような快感にヒクヒクと反応しているのです。
いえ、身体だけでなく心だって、恥辱の悦びに妖しく咽び泣いているのが分かります。
「あ~、もう、もう・・・欲しいの、オマンコして。オマンコ・・・」
うわ言のように恥ずかしい四文字を繰り返し、私は彼を急き立てます。
白衣を着たままの身体をくねらせて、立ったまま片脚を抱え上げられるようにして、私は彼のペニスを迎え入れます。
(なんて淫らな格好なの。ああ、とっても刺激的・・・)
自らの痴態を確かめながら、私は彼の腰の動きに合わせてお尻を振っていました。