２時間くらい歌った（飲んだ）のか、かなり酔いも回ってきて、妻もいい調子。

友達にくっついたり、肩に腕を回しながら一緒に歌ったりしていた。

私の親友でもあるし、仲良くしてもらっている光景は微笑ましいくらいで、嫉妬感は全くなかった。

友人（Ｋと呼ぶ）は歌が上手く、妻も「Ｋ君！次はコレ歌ってー。私も一緒に歌うー」とノリノリで、音痴な私は若干肩身が狭い思いをしたが、まぁそれは仕方ない。

盛り上がってるし、問題なし。

しかし時間が経つにつれて、妻がＫに密着する時間が多くなってきて、ちょっとヤキモチを焼く気分になった。

しかし、この雰囲気を壊したくなかったので何も言わなかった。

（２人きりにしたら、こいつらもっとイチャつく？）

結婚半年の新婚夫婦。

妻が私を愛していることはすごく伝わってくるし、私も妻をものすごく愛している。

愛の営みも２日と空けない。

（ありえないか・・・）

そう思いつつも、疑惑を拭いきれずにいた。

トイレに行き２人だけにするのが怖い反面、妻の愛を試したい気持ちもあって、我慢もできないのでトイレに行った。

トイレは混んでいた。

急いで済ませて部屋のドアを開けると！

２人は正面から抱き合っていた。

急にドアが開いてビックリしたようで、２人はすぐに離れると、妻は部屋を出ていった。

（マジかよ）

怒りよりも落胆だった。

結婚したばかりの妻、そして親友にも裏切られた。

私に見られて慌てたということは、妻に罪悪感があったということで、悪いことをしたと自覚しているわけだ。

「ノリで」は言い訳にならない。

それでも私は雰囲気を壊すのがイヤで、気にしていない素振りで飲み続けていた。

友達に器の小さい男だと思われるのも嫌だった。

しかし心は動揺していて手が震えた。

妻は出ていったあとすぐに、「トイレに行ってきた」と帰ってきた。

それからは、Ｋと妻はくっつかない。

お互いに反省してるんだろうと、私の気持ちも落ち着いてきた。

結構飲んでいるのでトイレが近い。

少し怖かったが、またトイレに行った。

また混んでいた。

部屋にすぐに戻ろうとして、部屋の近くまで行きガラス越しに部屋を覗いたら、今度は抱き合ってベロチューしていた。

私はとっさに２人から見えない角度、しかし鏡越しに見える場所へ身を隠した。

しばらくしてキスを終えた２人は、離れ際に軽くフレンチキス。

私が帰ってくる時間を考え、短時間で離れたのが分かった。

ショックを隠せなかったが、冷静になろうとした。

何気なく戻ると２人は談笑しながら、「遅いぞ！」と迎える。

「わりぃわりぃ！大きいほうだ！」

この期に及んで雰囲気を気にする自分が嫌になった。

またしばらく飲んでると今度が妻が「トイレ！」と部屋を出ていき、３０秒も経たないうちにＫも、「俺も近いな～！」と部屋から出た。

しかし、５分くらい経っても戻ってこない。

（もしかして外でイチャついてる？）

気が気じゃなくなって探しに行くと、トイレにＫはいない。

（どこへ行った？まさか外か？）

とりあえず妻の所在を確認しようと女子トイレに行き、酔った女子を心配する彼を装い、「おーい、Ａ美～、大丈夫か～」と声をかけた。

Ａ美もいない・・・。

（まさか本当に２人で外に？！）

カラオケ屋の建物を１周してみたがＫもＡ美もいなかった。

仕方なく部屋に戻るとＡ美が戻っていた。

「バッグも置いてどこに行ってたの？」

「お前こそどこに行ってたんだよ！」

「ん？トイレだよ？だってさっきトイレで声かけてくれたじゃん」

「いたのかよ！返事しろよ！」

「しようとしたけど、隣にも入ってたから恥ずかしくて～。大きいのしてたし（笑）」

「そうか・・・」

そのときＫが帰ってきた。

「どこ行ってたんだよ？」

「ん？トレイの後、ちょっと嫁から電話きて電話してた」

「ふーん・・・」

「遅いから怒ってんのか？」

「ぜーんぜーん、気にすることねーよー。さあ、今日は飲むぞー！」

「おー！」

また雰囲気よく飲みだして、妻もノリよく私と肩を組んで歌ったりした。

私は仲がいいところを見せつけようと、「うぉ～！」と妻の豊満な胸元に顔をうずめ、頬ずりするように顔を左右に動かした。

それを見てＫは爆笑。

その時だった。

（ツバの臭いがする！）

妻の胸がツバ臭かったのだ。

妻はすぐに身を引いて、「恥ずかしいってば！も～バカー！」と笑ったが、もう遅い。

確かに妻の胸はツバの臭いがした。

絶対に間違いない。

そう、あの時２人で女子トイレに入ってたのだ。

Ｋは妻の身体を愛撫していたに違いない。

（くっつくだけならまだしも、キスだけならまだしも・・・本当に愛撫だけで済んだのか？）

ハイテンションで歌う２人を見ながら、頭の中がグチャグチャになりそうだった。