今まで誰にも話せなかったことがあります。

21歳になった夏、地元の会社に勤め始めて3ヶ月でした。
友達と遊びに出かけ、軽くお酒を飲んでから、会社の先輩に車で送ってもらうことになりました。
相手は5つ年上。
PCMAX
ちょっと粗暴な感じで、あまりいい印象のない人でしたが、近所で降ろしてもらえばいいやと、つい気持ちを緩めてしまいました。

そして近所の駐車場。

「ここでいいです」

そう言ったとき、相手はエンジンをかけたまま何気ない調子で聞いてきました。

「胸、まだ痛い?」

その前の週末、私と同僚のA子と彼の3人で近くの沼に釣りに行ったときのこと。
バーベキューの炭から跳ねた火の粉が私のTシャツの胸に飛んで、爪の先ほどの火傷ができてしまいました。
彼が払い落としてくれたのですが、粘るような手の感じがなんだか不愉快だったのが忘れられませんでした。
たぶん、相手もずっと同じことを考えていたのでしょう。
私が「少し」と答えた次の瞬間、同じところに触ってきたから、びっくりして払いのけようとすると、素早く助手席の私の肩を押さえつけて覆い被さってきました。
こめかみのところを掴まれ、生臭い口が私の唇にくっつけられました。
手がまた胸に伸びてきました。
必死で藻掻きましたが、相手は学生の頃からラグビーをしていて力では敵いません。
ひじと体重で私を動けなくして、口や首すじにめちゃめちゃにキスされました。
苦しくて、お酒の酔いが戻ってきて、すごく気分が悪くなりました。
叫ぼうかと思いましたが、私の家のすぐ近く。
子供の頃から知ってる人ばかりです。
酒を飲んで男の車で帰ってきて、大声で助けを呼んだりしたら、後で何を言われるかわかりません。
躊躇う気持ちが喉につかえて、声が出なくなりました。

相手の手がシャツの下に潜り込んできました。
両方の二の腕を万力のように押さえつけられて止められません。
街灯で見えた相手の顔は興奮しきって目の光がとても怖くて・・・。
手や腕に必死で爪を立てても、ますます猛り狂っていくようでした。
こんな日に限ってフロントホックのブラでした。
呆気なく外されて、両方の胸にゴツゴツした手のひらを感じました。

(痛い!)

この人、女の胸を触ったことがないんじゃないかと思うくらい乱暴でした。
しばらく感触を確かめるみたいに擦ったり揉んだりした後、乳首をグリグリと摘んできました。
それから私のシャツを首のところまで捲り上げて、触ったところに口をつけてきました。
口をつけてないほうは、鷲掴みにされました。
好きじゃない人に裸の胸を見られて、好き放題にされている。
生温い唇や舌の感じが気持ち悪くて、怖くて、恥ずかしくて、泣きたくなりました。

嫌いな男でも、指や口じゃなくても、こんなに刺激されると乳首はプリプリに硬くなってしまいます。
たぶん私が感じてると勘違いしたんだと思います。
初めはお腹でも首筋でも、触りまくって舐めまくっていたのが、すごくしつこく胸ばかり、胸の先ばかり責めてくるようになりました。
指で摘んだり、胸の丘に押し込んだり、口で音を立てて吸ったり、舌の先でグルグル回したり。
涎でべちゃべちゃになりました。
飢えた動物みたい。
好きな人に、こんなことをされたことはありません。
もっとずっと優しくて、あっさりしていました。

(こんなときに好きな人のことなんか考えない方がいい・・・)

ちょっと変な気持ちになってきました。
くすぐったい感じが胸から腰の方にムズッと来て、だんだん間隔が短くなってきました。
腰から前のほう・・・足の付け根の方にどんどん来る感じで。
微かに濡れ始めたのがわかって、あっと思いました。
好きでもなんでもない男に、車の中で無理やりこんなことをされて感じ始めてる!
いけないと思いました。

「やだ、やめて」

さっきより声がちょっと上擦っているのがわかりました。
しまったと思いました。
暗くても、お互い顔はすぐ目の前。
私の声や表情や息遣いの変化がすぐわかってしまう。
私の反応を楽しむように胸への攻撃がソフトになりました。
必死でそのへんや腰から意識を逸らそうとするのですが、かえって敏感になってしまう。
気がつくと相手のペースにすっかり飲まれてしまっていました。
舌や指が乳首を刺激するたびに勝手に腰がくねってしまう。
抑えきれず、ため息のような、かすれた声が口から漏れました。
相手の手が私のジーンズの前の方にきて、押し戻そうとした両手は強く掴まれ、肩のわきに押し付けられました。
息がぜえぜえと耳にかかります。

相手の腰が少し浮いて、細く空いた隙間でジーンズのホックがプツッと外され、ファスナーが引き下ろされました。
手がデニムの間に潜り込もうとしています。

(触られたら濡れているのがわかってしまう!)

暴れました。
足を藻掻いて、全力で相手を押しのけようとしました。
もう一度二の腕に爪を立てようとした瞬間、すごい力でまたシートに磔にされました。
そのまま足をこじ開けて、きつい隙間から指が下着の中に入ってきました。
ピチャッと小さな音がしました。

ばれました。
感じちゃっていたのが。
嫌だって言いながら濡れはじめていたのが・・・。
女の体は相手に関係なく感じるように出来てしまっているのでしょうか。
でも、よりによってなんでコイツでなければいけないのか?

相手は嬉しそうでした。
また胸に顔を寄せてきました。
恥ずかしくて、悔しくて、涙で視界が曇りました。
バックミラーに相手の背中が映っています。
その下で私は半分体を剥き出しにされて、ほとんどされるがままになっていました。

何分くらい経ったのでしょう。
女に触ったことがないような様子で、理性なんかなくしたように見えて、しっかりこっちの反応を見るのは憎らしいくらい上手い奴でした。
初めはただそのへんを擦るようにしていたのが、すぐに私の感じるところ、感じる触り方に変えてきました。
早く終わればいいのにと思いながら、もう止められないくらい濡れていました。
ちょっと指の動きが止まったと思ったら、親指が私の中に入ってきました。

「あっ!」

さっきより大きな声が出て、体が反りました。
でも、痛くはなかった。
私の中に親指を浅く入れたり出したりしながら、他の指はまわりをなぞっています。
胸の攻撃は一層ねばっこくなって、今では敏感な3ヶ所を一度に責めています。
好きな人にも、こんなことされたことない。
こんな性欲のための道具みたいにいやらしい扱いをされたことはありませんでした。
なのに声が止まりません。

「あっ、はああっ」

腕や足の力が抜けて、パンツの前がぐっしょり濡れているのがわかりました。
相手の親指が、私も知らなかった私の中の感じるスポットを探り当てました。
そこで動かされると全身がピクッと動いて、アッアッとはっきり声が出てしまうのです。
もうそこばかり責められました。

ピチャ、ピチャ、ピチャ。

胸にある口と下着の中の指が一緒に音を立てています。
どっちの刺激か区別がつかないくらい、すごく感じていました。
下の指の動きがどんどん速くなります。

「アッ、アッ、アッ、アッ」

快感が腰のあたりにどんどん溜まっていく感じで、意識がぼんやりしてきました。
こんなときに泣きたくなかったけど、目尻から涙がこぼれました。

(いつまでこんなことが続くんだろう?最後までされるんだろうか?)

この調子では相手を止めるのは無理です。
相手だけじゃなく、私自身も・・・。
『無理』という言葉が頭の中で浮かんだ時、すっと最後の力が抜けて、突然、私の予想しなかったこと、そして相手が待ち望んでいたことが起こりました。
エクスタシーが来たのです。
生まれて初めての感覚が体の中から突き上がってきて目の前が真っ白になりました。
気づくと私は相手の腰に手をまわし、汗まみれの体を弓なりに反らして細い叫び声を上げていました。

「アアッ!ア~ア~ア~」

その後しばらく、2人の息遣いとエンジンの音以外何も聞こえませんでした。

(これがイクということ?)

こんな場所で、こんな奴に無理やり教えられてしまった。
相手の体重がすっと引きました。
胸が解放されて、尖った乳首に冷房がヒリヒリしました。

(済んだ?)

そう思ったと同時に腰に手がかかり、足をガッと広げられました。
スニーカーを両方ぽんぽんと脱がすと、相手は私のジーンズを剥がしにかかりました。

(勝手にして)

ジーンズを片方の足だけ脱がせたところで、相手がベルトを外しはじめました。
待ちきれなくなったんだと思います。
私に馬乗りになったまま窮屈な姿勢でズボンを脱ぎ、それから私のも脱がせるかと思ったら、下着の上から自分のを押し付けてきました。

(硬い。おぞましい。コレが私の中に入るの?でも入れられたら、きっとまた気持ち良くなってしまう・・・)

今、私のそこは僅かに動き、私の気持ちとは無関係な生き物みたいでした。

ごめんなさい、やっぱり最後のことは話せません。
それから私は、恋人と寝ると必ずイクようになりました。
たまにダメなときは、「もっと」と相手に求めるようになりました。
あるいは“イッたふり”をするようになりました。

でも、間もなく彼とは別れました。
それ以来、どんな男性と付き合っても同じです。
好きな人とは絶対イカなきゃという強迫観念があって、自分も相手も疲れてしまうんです。
相手が尋ねてきても、本当のことは話せませんでした。

今は誰とも付き合っていません。
自分はなんていやらしい女なんだろうと、自己嫌悪は消えません。
毎夏、同じ日付が近づくと、余計にひどくなります。
ときどき、あの夜の夢を見ます。
同じ姿勢で、同じことをされて、自分の声で目が覚めて、下着がしっとり濡れているのに気付くのです。

すみません、なんかとりとめがなくて。
ただ誰かに聞いて欲しかったんです。