寒い冬、身体をあっためるのにはちょうどいい。
相撲みたいに取っ組み合うわけではなく、ほぼ抱き締めるような格好で押すわけだから、互いの体温で寒さが吹っ飛ぶ。
いつもは男子だけでやる。
女子と身体をくっつけ合うのはさすがにまずいと、小3でもわかっている。
小3っていったら、もう十分性欲というものを分かっている年頃だ。
エロいことを考えたらチンチンが硬くなる。
これは小3男子にもなれば、ほぼ全員が経験してきているだろう。
ところが、その日は特別な日だった。
東京からの教育視察団が、俺の通う小学校を参観していたのだ。
俺が通っていたのはごく普通の市立小学校だが、県内ではちょっと有名だった。
ある名物教師がいて、その教育方法が度々マスコミに取り上げられていたからだ。
視察団が訪れたのもそういう理由があってのことじゃないかと思う。
東京からやって来たその視察団は合計15人くらいで、構成としては男女比2:8くらいで、女性が多かったと記憶している。
少数派の男性教育者たちはおっさんというか、初老に入ったような人ばかりだったが、女性教育者たちはみんな若い。
女性の年は分かりにくいが、それでも30歳を超えた女性はいないように思った。
中には10代としか思われないような女性もいたから、教育者を目指す女子大生とかそんな人たちだったのかもしれない。
最初、俺たちのクラスで理科の実験の授業があり、その様子を父兄参観のように教室の後ろで見守っていた視察団は授業が半ばに差し掛かると、なぜかぞろぞろと生徒の近くへ移動してきた。
たぶん教師と視察団との間で打ち合わせがあったんだろうが、俺たちガキどもは面食らった。
アルコールランプかなんかの実験だったはずだ。
数名がグループになり、理科室の実験用テーブルに何グループかに分かれ、授業を受けていた。
女性軍団は2名ずつくらいに分かれ、各実験テーブルのそばにやって来ると、空いている椅子に腰かけた。
ニコニコしながら俺たちを見て、俺たちの実験テーブルへやって来た。
2人は椅子に腰掛けるなり挨拶した。
「お邪魔します。榎本です」
「斉藤です。お邪魔してごめんね」
「・・・あ、ああ、はい、うん」
若い女性と接した経験があまりない俺は、隣にいる榎本さんに、そんな意味不明な返答をした。
たぶん真っ赤になってたはずだ。
そんな俺たちの様子を見ていた2人はクスクス笑いながら肘を突きあっている。
「やーん、可愛いー」
そんなことを小声で言いつつ、リスか子猫でも見るようなウルウルした眼差しで俺たちを見つめている。
いや、正確には『K』をか。
子供の頃のKは女みたいだった。
小4くらいまではよく女の子に間違えられていた。
色が白く、背も低い。
目がくりっとした二重で、カールした睫毛はバサバサと音を立てそうなほど長い。
クラスの女子にもモテモテだったと記憶している。
授業は滞りなく進行し、やがて終了のチャイムが鳴った。
今から10分の休憩時間だ。
各実験テーブルを参観していた女性たち、および男性教育者たちは、チャイムと同時に教室を出ていった。
「またね、バイバイ!」
そう言って、手を振って榎本さんと斉藤さんも出ていく。
彼女たちはまた他のクラス、他の学年も参観するのだろう。
緊張から開放された俺たちは校庭に駆け出した。
「さぶ!」
寒い、寒すぎた。
6人くらいでなんとなく固まっていた俺たちは、誰ともなく、おしくらまんじゅう状態へと移行していった。
「おい、A、お前なんで榎本ばっか見とんねん。おっぱい大きいからか?」
俺に組み付いてきた男子が頭に来ることを言う。
「うるさい。お前だって斉藤見とったやろ。あの人も胸が大きいぞ」
「うるせえんだよ、ボインボインボイーン」
「あほか」
そんなガサツな集団のもとへ、先ほどの視察団がまたやって来た。
榎本さんと斉藤さんもいる。
(ん?一緒に遊びたいのか?)
「何やってんの?おしくらまんじゅう?」
「え?あ、ああたぶん、そう・・・」
俺たちも今やってる遊びだかじゃれ合いだかなんだかよく分からないものを、これが『おしくらまんじゅう』という遊戯であるとは断言できないが、まあたぶんそれだろうということで、俺が代表して返事をした。
「ねえ、私たちも入れてくれる?どうやるの?」
「え?どうやるのって、決まったやり方なんてあるか・・・おい博士、知ってるか?」
「んんー・・・あるような、ないような・・・。でも『おしくらまんじゅう、押されて泣くな』って言うんじゃなかったっけ?」
博士ってあだ名を持つB君が自信なさげに答えた。
おしくらまんじゅうは、いかに30年前と言えど、すでにマイナーな遊びになっている。
しかし、まったくやらなかったわけでもない。
とくに田舎の方ではまだなんとなく子供がワーッと集まって、ぐいぐい押し合いへしあいするのは普通にあったと思う。
視察団の榎本さんと斉藤さん、それにあと3人の若い女性が、俺たち6人のガキに加わった。
「それ!いくよ!」
榎本さんが号令をかけ、合計11人のおしくらまんじゅうが始まった。
たぶん教育視察の一環として、子供の遊びを一緒にやるっていう方針だったんだろう。
まあ俺たちも所詮は小3、まだまだガキだ、うまく乗せられた。
「おしくらまんじゅう!押されて泣くな!」
榎本さんは目敏くKを見つけだし、がっつりと彼を抱き締めながらぐいぐい押し出した。
というか、みんなが団子状態になっている中、Kの四方はすべて女性陣である。
正面から抱きついているのが榎本さん、右方向から斉藤さん、そして左方向からと背面から抱きついているのも女性だ。
他の男子と残る女性1名は、そのKたちを取り囲むようにぐいぐい押している。
つまりはKが中心となった円形おしくらまんじゅうに、いつの間にか移行していた。
「うふふ。もっと押さないと倒れるよ!ほらもっと!」
榎本さん、もはやKと密着したまま離れる気配がない。
Kの顔は、ちょうど榎本さんの胸のあたりだ。
豊満な胸に顔を挟まれ、窒息するんじゃないかと他人事ながら心配する。
Kもまた無我夢中で榎本さんの背中に手をまわし、押し返している。
Kの後頭部は、これまたおっぱいをギュウギュウ押し当てられ、押されている左右の耳もおっぱいに挟まれている。
Kは四方からのおっぱい攻撃にマジで窒息しそうになったようだ。
「ちょ、ちょっと、タイム!息ができない!」
「そうよ、えのもっちゃん、やり過ぎだって」
横から斉藤さんが窘めている。
「だって可愛すぎるもん・・・」
榎本さん、ちょっと緩めた腕の中のKを見つめながら、それでも密着を解除しようとはしない。
「まあ確かにこの子、可愛いわ。東京にもちょっといないね、こんな可愛い子」
褒められているのは分かっているが、“勇ましい男の子”を目指していた当時のKはそれを素直に受け止められない様子だった。
「休憩終わるまでまだちょっとあるね。まだやるよ!そら!」
榎本さんは言うや否や再び攻撃を開始した。
攻撃はKの下半身にも及んでいる。
女性陣の隙間から見ている俺には、Kの腰から下にかけてがぶるぶる震えているように見えた。
どうやら、抱き締めながらさらに膝も押し付けているのか、彼女の膝は、ちょうどKの股間部分を押し付ける格好になっているようだ。
榎本さんに抱き締められ、四方からおっぱいを押し付けられ、さらには股間を膝攻めにされたK。
成人したK曰く、「ほんと怖かった」らしい。
もちろん気持ちいいんだが、得体の知れない恐怖みたいなものがあったと。
「やばい・・・。なんだかフワフワしてオシッコがもれそうだ。でも、なんで?なんでこんな時にオシッコ漏れるの?授業が終わってすぐトイレは済ませたのに・・・ああ、どうしよう。なんか来る!でもこんなとこで・・・みんなに笑われるよ!ああ、ほんとにどうしたら・・・」
これが、飲み会でのK自演の回想だ。
「ほら、もっと押して!」
榎本さんがKの顔に極限まで近づき、引っ付いていた彼を抱き締めたままちょっと屈み、唇をKのおでこに引っ付けている。
つまりそれは、『キス』と言われる行為であった。
「ちょっと、えのもん!あんただけズルい!あたしも!」
斉藤さんまでキスをする。
左にいた女性まで左側のほっぺにキスしてきた。
後ろからKを抱えている女性も彼の柔らかな頭髪に顔を埋め、くんくん匂いを嗅いでいる。
「やーん、なんかこのままずっと嗅いでいたい・・・」
「ばか、あんたって相変わらず変態なんだから」
「ふふふ・・・」
その時、Kの腰が激しく震えた。
K曰く、彼の記憶はここから3分間ほど「消滅した」と。
Kに代わって、俺が見たままを書こう。
「あ、あっ、あーっ」
甲高い声で叫びながら、4人の女性に囲まれたKが腰をぶるぶると震わせ始めた。
Kの顔にキスの雨を降らせていた榎本さんも、さすがにギョッとした様子で身体を離す。
榎本さんの腕の中、Kは彼女にしなだれかかり、ぴくぴく震えている。
顔が真っ赤で、病気になったんじゃないかと思った。
「ちょ、ちょっと、えのもん!」
「え、えーと・・・やっちゃった感じ・・・かな?」
「え?この子、出しちゃったの?濡れてんだけど、ズボンが・・・」
後ろから抱きついていた女性がKの制服の半ズボンの前に手を這わすなり、そう言った。
「・・・、射精・・・するの?え?でも小3だよ?」
「でもオシッコ漏らすのに、なんであんな声が出んの?」
「だよね。やっちったなあ」
Kは頬をほんのりピンクに染めて榎本さんに身を預けている。
「やっぱ・・・可愛いー!!!」
榎本さんは自分がしたことを忘れ、再びキス攻撃を始めた。
その攻撃が彼の開き気味の小さな唇に及んだ。
ぶちゅ。
俺たちは呆気にとられてその光景を眺めていた。
寒さは、もう感じなかった。
ただKに対する圧倒的敗北感を、しみじみと感じていた。
唇にキスされたKはようやく我に返ったようだ。
「・・・、あ、今なんか、ヌルッてしたの入ってきた」
「んふふ、ばれたか」
榎本さんがいたずらっぽく腕の中のKに笑いかける。
「ちょっと、えのもん、舌入れてんじゃねーよ!」
「はいはい。ごめん。でもちょっとだけだし」
「わ、私も・・・したい」
後ろからKを支えている女性がおずおずと言う。
「だめー。はい、もう終わり。この件は、これでおしまい」
「えのもん、あんたって女は、ほんとどうしようもないね。でもやばくない?」
「大丈夫よ。あの子たち、全然分かってないから」
俺は代表して質問した。
「あの、K、どうなったの?なんかしたの?」
「違うの、どうもしないの。心配ないのよ、ちょっと彼、熱気に煽られただけ。トイレに連れて行くね。顔を洗ってもらうから」
「う、うん・・・」
俺たちを残し、女性陣はKをトイレへ引っ張っていった。
K「で、ズボンを脱がされたチンポを見られた」
俺「マジ?」
K「マジ。ヌルヌルのチンポをハンカチで拭かれた」
俺「おいおい。また勃ったんじゃねえの?」
K「勃った」
俺「で?それから?」
K「で、パックリ」
俺「パックリ?マジかよ。ほんとにパックリいかれたのか?」
K「いかれたね。ありゃびっくりしたわ。何が起こったのかわからないし」
俺「そ、それでどうなったんだ?」
K「んなもん決まってるだろ。またイッちまったよ。ドピュドピュって」
俺「お前ってやつは・・・なんて羨ましい・・・」
K「うん。今でもオナネタはそればっかだな。あん時の記憶だけで1000回はオナったね」
俺「何秒くらい持った?」
K「30秒くらいかな?」
俺「気持ちよかったのか?」
K「当たり前だ」
俺「どんな風に気持ち良かったんだ?」
K「そうだな。あえて言うなら、今まで行った風俗は全部カスってくらい気持ちよかった」
俺「・・・それって、幸せなのか?その気持ちよさを超えられないんだろ?」
K「いいんだよ。あの気持ちよさ、あのドクドク感は、大人になっちまったら、もう無理なんだよ」
俺「あーあ。俺もなんかいいことないかね?」
K「まあ、がんばれ」
俺「おう」
ぜひとも来世はイケメンとして生まれることを希望するよ。
激しくな。