保育所では年に1回、年長組の園児を対象に“お泊り会”が開かれた。
何のことはない、みんな一緒に園舎で一晩過ごすだけだが、ほとんどのガキにとって、親元を離れて眠るのは出生直後を除き初めての経験。
これからの長い人生を展望し自立への第一歩を刻む意味でも、園児にとっては期待と不安に満ち溢れた大イベントだった。

その日は昼間、みんなで近くの農場へ行っての芋掘り体験。
収穫した芋を保育所へ持ち帰り、保母さんや保護者が調理して夕食にする。
小学生以上なら墓地を利用した肝試しなどの企画も考えられたが、そこは外泊初体験の幼児。
大人しく絵本を読み、風呂に入って寝るだけだ。

この種のイベントにはアクシデントがつき物だ。
昼間は元気に騒いでたくせに、夜になると親が恋しくて泣き出すガキがいる。
緊張と興奮で熱を出したり、夕食後にゲロったりする面倒な奴もいる。
普段と異なる環境で、卒業したはずの粗相を再発する子も絶対いる!
そうした事態に備え、保母さんのほか数人の母親が付き添って園舎に泊り込んだ。
親たちも大変だったんだなと、この年になると少し分かる。

風呂は近所の銭湯。
性別を問われない幼児の特権を駆使して、堂々と女湯を利用する。
20代中心の保母さんと混浴なんて、今の俺からすれば夢のような経験だが、当時の俺は愚かにも、そのありがたさを理解できていなかった。
せめて同じ組の幼女たちの裸をじっくり観察しておけばよかった。

幸い俺は泣くことも戻すこともなく床に就いたが、やはり興奮してたんだろう。
深夜、ふと目を覚ましてしまった。
とりあえず尿意を催したんでトイレへ。
出すものを出すと、またもや“じっとしてられない症候群”が頭をもたげてきた。
俺はトイレから部屋に戻らず、夜の園舎探訪という新たな冒険をスタートさせた。

灯りの消えた寺はかなり気味悪く、お遊戯室も園長先生の部屋も人の気配がない。
ちょっと怖くなって部屋に戻ろうとしたら、毎朝お勤めをする本堂から薄ぼんやりと明かりが漏れてくるのに気付いた。
なんとなく興味を引かれた俺は細い渡り廊下を伝って本堂へ移り、入口を小さく開けて中を覗いてみた。
本堂には仏像が3体くらいあったと記憶している。
うち1体は、俺たちが『ののさま』と呼んでいた、ご本尊の観音菩薩像のはずだ。
結局どいつが『ののさま』なのか、最後まで知らずに卒園してしまったが。

本尊の周りにあるいくつかの燭台では、ロウソクの炎が揺らめいてる。
どうやらこの明かりが外に漏れていたらしい。
俺は太い柱の後ろから、いつもお勤めをする畳敷きの中央部を覗き込んだ。
畳には布団が何枚か敷いてある。
そのうち1枚の上では園長の長男が四つん這いになった女を後ろから貫き、激しく腰を振っていた。
女はお泊り会の付き添いで来た、イクミちゃんのママ。
まだ20代半ばだったはずだ。
猫のようにしなやかな肢体が、揺れる灯りに照らされ怪しく揺れていた。
奥の布団では園長の次男が、座位の姿勢で女を突き上げている。
女は園長夫人にして長男&次男の実母。
正式の保母ではなかったはずだが、園児や他の保母さんからは『お母さん先生』と呼ばれていた。
まだ30代だったと思うが、なかなか豊満というか肉感的ボディの持ち主。
包容力ある母親然とした雰囲気のせいか、ガキどもの人気は高かった。
俺も間違えて「おかーさん!」と呼んで赤面したことが、少なくとも2回ある。

次男は白い肉体に押しつぶされながら豊かな乳房に顔を埋めていた。
プールの時もそうだったが、次男はどうやらかなりのオッパイ好きらしい。
というか、よく考えたら、(その相手はマズいだろ)と突っ込みを入れるべき場面だが、すでにおかしなことに慣れっこになっていた俺は特に違和感を覚えなかった。

本尊の真ん前にある布団では、園長が女を組み敷いて腰を打ちつけながら、並んで横たわる別の女の股間を愛撫していた。
いわゆる3Pというやつだ。
巨大な一物を受け入れてるのは、プールで俺を救ってくれたタチバナ先生。
どちらもがっちりした体格で、似合いのカップルと言えなくもない。
園長が愛撫してたのは、やはり付き添いで来てたユウヤ君のママ。
いまひとつ地味な感じの人だが、グラマーで今から思えばかなりそそる肉体だ。
よく見ると園長は、手に握った太い棒のような物を女の股間に突っ込んでいる。
今ならディルドだと分かるが、当時の俺には意味不明の物体だった。

本堂にはさらに2人、裸の女がいた。
付き添いで来たマサミちゃんのママは、別の女をバックで攻める長男と濃厚なキスを交わしている。
保母のイトウ先生は、次男に貫かれたお母さん先生と、これまた熱いキス。
女同士のキスを見たのは約6年間の人生で初めての経験だった。

年の割に濡れ場の目撃経験は豊富な俺だったが、男3人に女6人だと迫力が違う。
特に園長は、組み敷いたタチバナ先生が昇天すると巨砲を引き抜き、並んで横たわるユウヤママにずぶりと挿入。
ガンガンと腰を使いながら持ち替えたディルドでタチバナ先生を攻めるという、器用かつ迫力のある攻めを披露していた。

息子たちはさすがに女2人を同時に攻める技量は持ち合わせていないらしいが、相手の女がイクとすぐに別の女を抱き寄せて続きをはじめる。
というか、待機していた方が『次は私の番よ』とばかり、前の女を突き飛ばしていた。

ところで、保育所のお遊戯室には1辺30センチほどの積み木遊びブロックがあった。
キャラクターシールなんかが貼ってある魅惑的な代物で、毎日お遊びの時間になると限られた数のブロックをめぐって幼児たちの熾烈な争奪戦が繰り広げられたものだ。
前の子が遊び終わると、「次はボクの番!」「アタシよ!」と始まるわけだが、男根をめぐる女同士の争いを見ていると、いつまでも成長せずに物欲にとらわれる人間の業の深さを痛感する。
同時に勃起した肉棒は大人の女どもにとって、キャラ入り積み木ブロックに匹敵する魅力的なものだと幼心に深く刻み込まれた。

園長親子は6人の女に次から次へと硬いアレをぶち込んでいった。
長男も躊躇うことなく園長夫人にズブリと挿入し、気持ち良さそうに腰を振る。
もちろん園長も夫人である『お母さん先生』相手にハッスルしていたが、この2人の絡みがなぜか一番違和感があった。
今もって謎だ。

「ああぁ~~んいいぃぃわあぁぁ~~」

罰当たりな声が本堂に響く。
女が集団で発するヨガリ声は、発情期の猫の鳴き声に似てるというのは新発見。
この光景を『阿鼻叫喚』と表現するのはどう考えても誤用だと思うが、ともかく地獄絵図だか極楽図だか分からない痴態に俺の視線は釘付けだった。
今の俺なら最低4回分のオカズになっていたはずだ。
勃起すらさせずに観察するのは二次性徴を迎えていないお子様ならではだが、悲しいかなお子様は興味が覚めるのも早かった。
いくら合体したところで巨大化するでもなし、背中から翼が生えるでもなし、男女9人が延々と織りなすピストン運動に幼い俺は早々と飽きてしまった。
それ以前に、どうしようもない睡魔が襲ってきた。
ここで寝込むのはさすがにマズいという自覚はあったんだろう。
俺は死力を振り絞って本堂から抜け出すと、仲間たちが眠る部屋に戻り、温かな布団に潜り込んだ。
やはり俺にはここが天国だ。

翌朝、本堂で朝のお勤めを聞きながら、俺が正座してるこのあたりで園長が腰を振ってたんだなと思うと、ちょっと妙な気分になった。
園長はいつもと変わらず、境内の隅々まで響き渡る朗々とした声で読経してる。
ガキどもはといえば、眠い目を擦りながら園長の後ろで一列になって正座し、この意味不明な呪文がいつ終わるのかばかり考えていた。
本堂の隅でお勤めを見ていた付き添いのママや保母さんたちが、やたら生き生きして色艶良く見えたのは俺の記憶違いかもしれない。

霊験あらたかな保育所で園長たちが繰り広げていた不思議で不埒な行為について、それなりに正確なところを俺が知るのは、それからずっと後のこと。
その頃にはかなり記憶が曖昧になってたし、深く追求もしなかった。
日頃は送り迎えしないとはいえ、俺の母親も実は仲間だったんじゃないかとか、一番若くて俺がほのかな恋心を抱いてたサイトウ先生は大丈夫だったのかとか、考えはじめると頭がおかしくなりそうだから、無意識のうちに記憶を封じ込めていた・・・と書くとなんだか心理学者っぽいな。

いずれにせよ上の描写には、あまり正確じゃない部分も相当あると思う。
例えば、今から思うと園長や息子たちは避妊していなかった気もするが、それは単にゴムを被せる光景が記憶に残っていないだけかもしれない。

「あの保育所に通うと在園中に弟や妹ができる」などという噂も聞いたことはない。

そして時が流れ、今度は俺の長男があの保育所に通うことになった。
先日、嫁と長男を連れて約30年ぶりに訪れた寺は、本堂こそ昔のままだが、古臭い木造だった園舎は小綺麗な鉄筋コンクリート造に生まれ変わっていた。
講堂は少し広くなって、電動式のせり上がり舞台も整備されていた。
プールは昔のままだが、こんなしょぼい水たまりによく感動できたもんだと、あの頃の自分の感受性の豊かさにむしろ感動した。
それ以上に、あの頃の俺にとって無限の謎に満ちた魅惑の空間だった境内が、実は大して広くもないという事実が、なんだか寂しかった。

園長職は長男が継いでいた。
もっとも、あのいかつい住職はまだ元気らしい。
40代の現園長は父親似だが、僧兵のような親父さんよりも柔和な感じがする。

「私も昔、遊んでもらったんですよ」と言うと、もちろん覚えてるわけもないが、「おお、そうですか」と目を細めていた。

保母さんも当時とは全員入れ替わってたが、じっとしていられないガキどもを猛獣使いのようにまとめ上げる激務は今も昔も変わらない。
若い保母さんのジャージに包まれたお尻に思わず目が行ってしまうのは、俺がオッサンになったせいだろう。
『お母さん先生』は残念ながら数年前、鬼籍に入られたという。
あのやさしい笑顔がまぶたに浮かぶ。
今ごろ地獄を彷徨っておられることだろう。

園内を一巡して新しい園長先生の部屋でお茶をご馳走になっているとドアが開き、園長に似たイガグリ頭の少年が顔を覗かせた。

「うちの長男です。来年中学に上がるんですよ」

園長に促され、少年がペコリと頭を下げる。
さすがに躾はしっかりしてるようだ。
少年は顔を上げると、俺の隣に座る嫁のグラマーな肢体に舐めるような視線を向けて、心の底から嬉しそうにニコリと微笑んだ。