私は普段は調教側だけど、じつはMの素養もSの素養もあります。
ただ、よく言う『SもMもちょっとずつ持っている』とは少し違う。
バチッとスイッチが入ると、オーガズムに達するまで、つまり私がイクまでスイッチが戻らないんです。
S側に入ってるときはホント自分でも容赦ないと思うし、“愛のある王女様”って何?みたいな。
PCMAX

今日は、私がM側に目覚めたきっかけについて話します。
思い返すと、私がSMに目覚めたきっかけがMからのスタートだったから。
その辺、いっぺん整理したいなって。
自分のマゾ性の根っこを吐露しておきたいんです。

子供の頃はね、全然私、その気がなかったの。
よく言うでしょう。
小さい頃からMの子ってなんか傾向が出るって。
鬼ごっこで捕まえられちゃうのが好きだとか。

あれは確かお遊戯会だったな。
その練習中の話。
結構真面目な舞台劇だったのね。
私は選ばれて、人質の女刑事役でした。
ほら、男の子ってそういうのに夢中になるでしょう。
小道具のOKが出てたから、モデルガンとか、刑事手帳とか、手錠とか。
あの頃は、私も普通でした。
ありきたりな平凡な子。
ちょっとおっとりしてた気がする。
今の私からだと信じられないでしょう(笑)

その日はホームルームの時間に教室の机を片付けてリハーサルをやってたんです。
私こと『女刑事のジュン』が銃を奪われて、自分で持ってた手錠で後ろ手に括られちゃうの。
盾にされて、もう1人の刑事の前からさらわれちゃう、そんなシーン。
幼時の私、運動神経は良かったからキビキビと立ちまわって、ちゃんと捕まります。
それで悪漢の男の子が手錠をチキキキってかけるんだよね。
すごく痛かったの。
ぎゅうって後ろ手にねじられて、男の子の乱暴さで制服ごと手首にギチチって。
開錠レバーのついた玩具じゃなかったな。
当時はまだ簡単に手に入ったんですよね、しっかりした金属製の手錠が。
SMのプロ的に言えばシングルロック機構だけど(笑)
カギがないと外せないやつ。
拘束されて不自由だし、すごく嫌だった記憶があります。

あの日のリハは特にダメで、男の子が何度か台詞をトチったんです。
だから、そのたびに捕まって後ろ手にギチチ、また手首をねじられて後ろ手にギチチ。
やっとその場面が終わりかけた時でした。

「追ってきたら殺す!」みたいなセリフで悪漢の子が手を振りかざすんだけど、焦ってたのか、銃を持ってない方の、手錠のカギを握ってた方の手を突き上げちゃったんです。

どうなったと思います?
カギが手からすっぽ抜けて、3階の窓から裏庭にすっ飛んで行っちゃったんです。

「え、ウソでしょ?◯◯君?」

頭が真っ白になって、その男の子をなじったのは覚えてます。
あとはもう一瞬でパニックが襲ってきたんです。

(どうしよう?もう手錠をはずせない。このままずっと縛られたままだ・・・)って。

休憩中や練習中に手錠を弄ってたんです。
珍しいからクラスのみんなで逮捕ごっこしたり、嵌めた手錠からの脱獄ごっこをしてみたり。
でも誰1人として成功しませんでした。
だって本物ですから。
重さだって拘束力だって。
そんなの小学生の女子が外せるわけないじゃない?

カギが飛んでったとき、一瞬でそういうことを全部思い出しちゃって、気づいたら顔グチャグチャで泣き叫んでました。
後ろ手にされているのが怖くって、手錠を嵌めたまま背中でがちゃがちゃ振りまわしながら、「どうするのよぅ、どうするのよぉ・・・」って。
今じゃイメージできないかもけど、動揺して潤んだ声で可愛く悲鳴をあげて泣きました。
担任は若い男の先生だったけど、彼も焦って「手錠を探してくる!」って飛び出しちゃったから教室はなんか大混乱。
私はみんなに付き添われて、鼻水とかべしょべしょで教室の隅に座らされて。
何もできない私の代わりに女の子の友達に鼻をかんでもらって、ハンカチで涙を拭ってもらって、ぎゅうって抱き締められた私。

「大丈夫だよ、ミィ(私)、泣かないで」って。

「怖くないよ、心配しないで。みんなでカギ探すからね」って。

なんか、どうしようもなく無力なんですよね。
囚われの私を、みんな優しくしてくれる。
それって私が縛られているからなの?

・・・Mの快感とは違ってたと思います。
そこまで、まだエロじゃなかったし。
でも、ほんのりと心が痺れました。
溶けそうな羞じらいと圧倒的な無力さに、体の奥の方がぞわわって感じてたんですね。
座らされて、それで気持ちもちょっぴり落ち着きました。
食いこんでくる金属の輪の重みを忌まわしいくらい感じていたんです。
どう動かしても食いついてくる金属のイジワルさに、ちょっとだけ目の縁を染めてました。
そんな感じ。

・・・ここで終わりだと思います?
この最初のきっかけの話、ここからが修羅場なんです。

あの日、お遊戯会のリハーサルで後ろ手に手錠をかけられたまま、そのカギを男の子に失くされた私。

「大丈夫だよ、ミィ。心配しないでね」

「こら、男子はさっさと探してこいよ!オクダ、お前もだ!」

女の子たちに囲まれて、私は守ってもらってました。
大半の子が「あーあ」って感じで、しぶしぶ裏庭に向かう子もいたかな。
泣いちゃったのもあって、私はほけーっと手錠を嵌められたまま放心していました。
女の子たちとちょっとずつ話したりして。
で、不意に気づいて、ドックドックって、急に胸が弾みだしちゃったんです。
思うに緊張しすぎたからだと思うんだけど、おしっこがしたくなっちゃったんです。
そう思ったときには腰がもじもじしてて、もう一刻の猶予もないって感じ。

「あ、あのさぁ」

「なぁにミィ?もっとぎゅーってして欲しいの?」

「じつはね・・・」

って言いかけてハッとしました。

(これ、誰にも言えなくない?)って。

でも、言わなきゃみんなは解放してくれない。
そりゃそうだよね。
私は、手錠のカギを失くされた悲劇のヒロインだから。
みんなは世話焼きだし、絶対トイレまでついて来ちゃう。

「あっ、なはは、いや~えっとぉ」

慌てて顔の前で手を振ろうとして、また手錠がガチャンってなって現実に引き戻されます。
こんな仕草さえ許されない。
すごく惨めだけど、事態は秒単位で切迫します。
もう自棄になって、手錠の鎖を掴んで他の子たちから隠したままカラダの後ろ揺さぶったけど、都合よく外れるわけもなく、もっときつく食い込んでくるみたい。

(このままじゃダメだ・・・)

私は彼女たちに笑いかけて言いました。

「あのね。喉が乾いたから水飲み場に行ってくる」

どの子も、なんか怪訝そうな感じの反応でした。
『え?今?急に?』みたいな。
小学校って、廊下を歩いて行くと踊り場の先に水飲み場があったりするじゃないですか。
そこをずっと突っ切った先がトイレなんです。
だから水飲み場にかこつけて抜け出そうとしたんだけど・・・ね。

「でも平気?転ぶと危ないよ。一緒に行ってあげるよ。肩を支えたほうがいいよ」

案の定、何人かがそんなこと言い出します。

「あ、あはは・・・」

もう、あとは焦り気味。
恐る恐る後退りながら、はつらつと活発に振る舞いました。

「だいじょ~ぶ、ちょっと手を縛られてるだけだもん。水くらい飲めるから、すぐ戻るねぇ」

「あっ、ちょっ、ミィ?」

あえて背中の腕を折り曲げて手錠の鎖を鳴らしながら、背中越しに手を振って見せたりして、『大丈夫だよ、縛られてたって問題ないよ』というアピール。
本当は、無情な鎖の音に泣きだしそうだったけど。
でもそれを告白しちゃったら、みんなにトイレまでついて来られちゃう。
一番恥ずかしいおしっこするところ見られたり、お手伝いなんかされちゃったら・・・顔が真っ赤になるとかってレベルじゃないですよ。

勢い余ってガタンと教室の前の扉にお尻をぶつけました。
危うく限界を突破しかけたのを下腹部に力を入れてやり過ごし、背後の両手でドアを開けて、そのまま教室から飛び出しました。
クラスが見えなくなるや、一気にダッシュ。
もしも今、誰かにぽんと肩を叩かれただけでも失禁しちゃう。
そのくらい切羽詰ってました。
制服のブレザーを翻して、もつれるスカートを無視して、上履きの足音を殺して猛ダッシュ。
バランスのとれない両手を飛行機の尾翼みたいに後ろで突っ張らせて、顎から飛び込むみたいに走ってました。
みるみる女子トイレが近づいてきて、我慢し続ける手をグーに握ってトイレに駆け込みました。
あの限界の感じ、分かります?
本当にギリギリだと、もう動いてないと逆に耐えられない感じ。
もうそのくらいヤバくて、一番手前の個室に飛び込むと、洋式便座の蓋を片足で蹴り上げて、そこで急停止。

私はそのとき後ろ手に手錠をされていました。
当然だけど、小学校の制服のスカートと下着をつけていたんです。
・・・地獄でしょう?
スカートの脇のホックを外して、子供用のショーツを脱ぐ。
そのときの私にとって、どれほど難易度の高い行為だったか。
漏れる寸前なんですよ、こっちは。
お股のそこに湿り気さえ感じてるのに、便座も開いてるのに用を足せない。
たった1つの残酷な手錠のおかげで。

そこで半泣きになりながら、私はスカートのホックと格闘しはじめました。
あの不自由さ、意地悪さ、無力感。
思いきり両手を腰の脇にねじってホックを外そうにも、普段と違う体勢だから自分の指が邪魔でうまくいきません。

結論。
スカートは無事に脱げましたが、間に合いませんでした。
ショーツはアウト。
じょろろって、染み出してきたのをよく覚えています。
お気に入りのプリント柄だったのに、すべてが手遅れでした。
とりあえず便座に腰掛けて、心ゆくまで用を足して、ボロボロ泣きました。

でも、問題はその先。
それこそ、ここが一番のトラブル。
決断しなきゃいけなかったんです、私。
トイレに行ったなんてクラスメイトには言いたくない。
だって“お漏らし”なんて、100%イジメの原因になるから。
そのくらいは当時も常識でした。
ましてや上級生になればなおさら。
だから、何がなんでも隠さなきゃダメだったんです。
でも、ショーツはぐしゃぐしゃです。
匂うし、穿いて教室に戻れない。

はい、そうです。
私はその日、ホームルームの時間以降、ずっとノーパンでした。
制約された手でよく女の子の部分を拭って、湿り気も匂いも残らないようにして。
ノーパンって、まるで自分が変態になった気分。
下半身がすーすーして、とってもいやらしい。
悪いことしてるような、なんだかエッチな気持ちです。
そしてダメ押しに後ろ手錠ですから。
本物の変態のロリっ子ですよ。

そんなロリっ子に無理やりされて、しかも戻ってきた先生は開口一番、「カギが見つからない」なんて言い出すし。
とりあえず練習はそこで中断。
結局、とりあえず机と椅子を戻して通常のホームルームを再開。
そのまま連絡事項やプリントを配られて、先生のお話があって、いつも通りに起立、礼、さようならで解散。
私はずっと手錠されっぱなしでした。
縄で縛られてるんだったら無理やり切れるけど、金属ですから。
なんだか合意の上でクラス全員にいじめられてるような気分になっちゃって。
放置されっぱなしなのが人質っぽいでしょ?
みんなでホームルームをしている最中、私だけずっと拘束姿なわけで。

「プリントを捲って裏を見て欲しいんだけど・・・」

なんて先生の話とか、すでにドSの言葉責めですよ。

ホームルームのあと、すぐに担任の先生が近くの鍵屋さんに連れて行ってくれました。
私はギクシャクと足を棒のように動かして歩きました。
“穿いてない秘密”を誰にも知られないようにカチンコチン。
下駄箱で先生に靴を出してもらったときとか、上履きを脱がしてくれてこっちを一瞬見上げたときとか、真っ赤になってました。
担任の先生がノーマルで良かった。

この時かな。
隠したくても隠せない体にされ、自由を奪われて、秘密を抱える快感と、人の言いなりにされる感覚を知ってしまったのは。
おまけに耳まで赤くなるようないやらしい格好での下校。
ほとんど野外調教ですよね。
小学生の頃に知った得体の知れないあの感覚が、マゾの快感なんだって分かったのは、ずっと後のことです。