とりあえずスペック。
私:当時17歳、JK。
相手:当時20歳、ニート。

その某動画サイトの生放送で出会うという、なんともテンプレなはじまり。
当時、両親にねだってねだってねだりまくってやっと自分のPCを買ってもらった私は大いにはしゃいでいたわけです。
もちろんお金は自分の貯金です。
貯めたバイト代やお年玉など。
前にどこかで、『オタク高校生にPCを与えるということは不良高校生に原付を与えるのと同じ』というのを見たことがありますが、まさにその通り。
新しいものを手に入れると、なんでも試してみたくなる、なんでもやってみたくなる。

小学生の頃からそこそこ濃いめのオタクだった私は、PCというずっと欲しかったマイ単車を手に入れ、それはもう舞い上がっていた。
周りの友人にもオタクはいたけど、かといって引きこもるタイプではなかった。
普通に恋愛の話もするし、彼氏もいたことがある。
性格も社交的だと思う。
ただ小中とかなりイタい黒歴史があったため、出会い厨とかネットに関しては他の同級生より知識はあったと思う。
あと性的なことに関しても。
同級生の男子から「エロ魔人」と呼ばれたことがある程度には知識豊富だった。
例の某動画サイトは、中学生の頃に友人に教えてもらって知った。
その時はアニメの手描きMADや某ボーカロイドの曲が好きで聞いていたけど、生放送の存在は毛ほども気にならなかった。
音楽を聞いたりMAD見たり、それで満足してた。

ただマイPCを手に入れると、自分のPCを持ってる人にしかできないことがしたくなってくる。
ここで私は、自分も動画を投稿してみたいと思うようになった。
家族共用でもエロ画像バリバリ保存しちゃうぜ!
親にも公認だぜ!
なんて人もいるかもだけど、私の両親、特に母親はそういった出会い系やSNSサイトには非常に厳しかった。
エロ画像なんてもってのほかだった。
家族共用パソコンでエロ動画を見るときは履歴を必ず消した。
でもこれは私のPC!
最初に「気をつけなさい、変なのは見ちゃダメよ」なんて注意をされたけど、(動画投稿するだけだし、いいよねー)なんて思った私は、色々調べて四苦八苦したものの、初めて動画を投稿したのである。
なんの動画かは言えないけど。

結論から言うと、動画は作るのが大変だった。
面倒くさいしよくわからないしで、数本作ってもう作らなくなってしまった。
ところがどっこい、ここで転機が訪れる。
このつまらない動画をマイリスしてくれた人がいた。
ちょっと嬉しくなって調べると、その人も自分と同じジャンルで動画を投稿している人だった。
ちょうどそのとき、その人(以下『オレオさん』)が生放送をしてた。
覗いてみると、オレオ氏が喋ってるわけです、放送で。
見ている人は数人のいわゆる過疎放送だったけど、生放送を初めて見る自分にとってはなかなか新鮮なもので、好奇心でコメントしてみた。
そしたら、最初は『誰でしょう?』みたいな反応だったけど、名前を言ったら、『ああ!私さんね!動画面白かったよ~』なんて反応が返ってきて、非常に興奮したのを覚えている。

『私、◯◯好きなんだよね~』

『え!?俺もそれめっちゃ好き!』

『ほんと!?』

みたいな雰囲気。
妙な親近感が勝手に湧くあの感じ。
そして何度かオレオ氏の放送を見ているうちに、今度は自分も生放送をしたいと思うようになったのである。
ちなみにオレオ氏はセックスの相手ではない。
オレオ氏の出番はここで終了。

放送をしたくて始めたはいいものの、とにかくわからないことだらけだった。
だいぶ前の話なんで詳しくは覚えてないけど、画像の設定とかマイクとかその他諸々。
そんな時に現れたのが『ビスコ』だった。
ビスコも生放送をやっているらしく、基本的なことをわかりやすく教えてくれた。
画像設定から音の出し方、PCについても詳しくて、設定なんかも色々とアドバイスをくれた。
そこからビスコは私が生放送するたびにいつも顔を出した。
だんだん親しくなっていき、そこからSkypeで個人的に話すようになっていった。

ビスコと話すのは楽しかった。
年齢は20歳と聞いていたけど、落ち着いたトーンで話す人だった。
ビスコは仕事をしていなくて実家暮らしだった。
話した内容はよく覚えてないから省く。
ちなみにこの時点で、ばれたら母に殺されると思った私は、夜中にこっそり起きてはSkypeで話すというのを繰り返していた。

しばらくしてビスコの様子が変わってきた。
会話の後に、『好きだよ』とか『愛してるよ』とかちょくちょく言ってくるようになった。
当時はドキッとしてたけど、今改めて思い直すとめちゃくちゃキモいな・・・。
要するに、ここからどんどん普通じゃなくなっていく。

一度だけ、お互いの顔写真を交換しようという話になったことがあった。
私は友人と撮った写真を送った。
もちろん友人の顔は消した。
ビスコは、見た目がちょっとDQNぽかった。
といっても鼻から下は手で隠していたので、顔自体はよくわかんなかったけど。
特別かっこいいわけでもなく、かといって不細工でもなく、普通のお兄さんだった。
それで、まあいつの間にかビスコが好きだと思うようになっていった。
出会い厨とはなんだか違う。
不思議な雰囲気だった。
正直、ネット恋愛とかきめぇと思っていた自分が、まさか会ったこともない人を好きになるなんて・・・と、結構戸惑った。
でもこんなこと友達には相談できなかった。

(言ったらドン引きされておしまい)

そう思った。

とにかく1人で悩んで悩んで悩んだ挙句、告白した。
告白したときのことは省く。
思い出すだけで鳥肌が立ちそうだから。

結果、『俺も』という返事をもらい、晴れて付き合う(?)ことになった。
こうなってからは、とにかく両親にばれないように気をつけた。
見ず知らずの男と夜な夜なチャットで会話してるなんて知られたら、発狂するだろうと思った。
PCを没収されるのだけは嫌だった。

母は仕事の関係で朝方に帰ってくる。
だから母が仕事の時だけ会話した。
当然だけど、私はまだ高校生だったし、平日は学校があった。
でも朝の4時過ぎくらいまで話していると、そこから起きられなくて学校に遅刻することが増えた。
授業中には居眠りもした。
それでも話すことが楽しかったから、たいして問題だとは思わなかった。
恋は盲目というが、まさにその通りだった。
学校生活よりもビスコのことを考えていた。

でも、どっからどう見ても様子がおかしい私に、親が黙っているはずはなかった。
ビスコとのことがばれた。
それはもう散々叱られた。
PCを壊されそうになったけど、なんとか謝って、もうビスコとは話したりメールもしないと約束した。
表面上は・・・。

そうなってからSkypeはしなくなったけど、懲りずにメールはしていた。
ビスコは性的な話はそんなにしなかった。
今日学校で何があったとか家での話とか、そういうのを聞きたがった。
1回だけ、Skypeのとき電話越しに「オナニーして」って言われたことがあったけど、そのとき以外はそんな話にはならなかった。
ちなみにSkypeではいつも音声のみ。
最初にお互いの写真を見せ合ったとき以外で顔を見ることはなかった。
騙されてるとかは思わなかった。

本当にビスコは人の話をうんうんって聞く人で、いつも私ばっかり話してた。
会いたいとは思っていたけど、ビスコと私の住む場所はそれなりに遠いし、金銭的な理由や親にどうやって説明するかなど色々あって、なかなか会いたいとは言い出せなかった。
半年くらい経ってから、私から会いたいと言った。
向こうも、そう思ってたって言ってくれた。
お金はバイトでもして貯めればいい話だけど、問題は親になんて説明するかだった。
お互いの距離からして日帰りは無理そうだったから1泊するしかなかった。
ここで友人に説明して、話を合わせてもらうことにした。
ネットでということは言わなかったけど。
友人は、「いいよー」と二つ返事で承諾してくれた。
これでなんとかなると思った。
私はただひたすら会えることが嬉しくて仕方がなかった。
でも一番大きな問題が残っていた。

ある日ビスコが、『会いたいけど、俺お金がなくて・・・』みたいな内容のメールを送ってきた。
ビスコは全く働いてなかったから、それも当然だった。
会えるってことに舞い上がってすっかり忘れていた。
私は、『今すぐでなくてもいいよ。何ヶ月か後でもいいからバイトとか探してみたら?』と提案した。
でもビスコは渋ってるみたいだった。
ビスコの家は両親が自営業をしているらしく、自分に店を継がせる気なんだと話した。

『それならバイト先を探さなくてもいいじゃん!』と言ったら、『でも俺、親の仕事が嫌なんだよね・・・』と文句を言い始めた。

『じゃあバイトする?』って聞くと、『でも親が俺にバイトさせなくて・・・』と言った。

今まで私はビスコの仕事については触れないようにしてきた。
色んな理由があるだろうし、私がそのことにとやかく首を突っ込んでビスコに不愉快な思いをさせたくなかったから。
でもこの時はちょっとイラっときてしまった。
お金ないけど親の仕事も手伝いたくないしバイトも無理、でも私とは会いたい。
20歳にもなって何を言ってるんだって思った。

『それはちょっと都合が良すぎるよ。私だってビスコとは会いたいけど、そんなお金に余裕があるわけじゃないし、それにお互い会いたいと思ってるなら片方だけが会いに行くっていうのはちょっとおかしいと思う』

こんな内容のことを送った気がする・・・。
せっかく会えると思ったのに、ビスコの煮え切らない態度にちょっと不機嫌になっていた。
そしたらビスコは、『でも、会いたいって先に言ったのはそっちでしょ?』と言ってきた。
私が不機嫌なメールを送ったのも原因だとは思うけど、かなりショックだった。

『だったらもういいよ、会いたくない』

そうメールして、しばらく泣いた。

<続く>