話は3日前に戻るんだが。
俺はちゃんと許可を取り、妹の部屋に『乙一』の小説を取りに行った。
なんつうか、乙一にはまってて・・・。
まぁそんなことはどうでもいい。
正直、お前らの“脳内妹”はどうだか知らんが、本当の妹の部屋なんてぐちゃぐちゃなわけだ。
小説のある場所は知っていたが、そこに辿り着くまでも色々ごちゃごちゃしててな。
それを掻き分けて進んでると、ふと本棚の一番下に雑誌のような物が挟まってるのが見えた。
それが色々な意味で地獄のはじまりだった。
最初は辺りにもファッション雑誌みたいなのがわらわらしてたから気にしなかったんだが、なんとか乙一の本を手にとって、何かを踏まないように部屋を出ようとしてると、もう一度それが目に入った。
本の題名らしき集の文字と生足が見える。
ファッション雑誌かとも思ったが、ファッション雑誌で靴下を履かないのはあまりないだろう。
軽い気持ちだったんだ。
軽い気持ちで、引っかかってるそれをグッと引き出してみた。
その題名は、『スカトロ耽美館』。
色々な意味で何かが崩れた。
(いやいやいやいや、これはないだろ)
スカトロとか好きな方には悪いが、この趣味はわからない。
とりあえず没収。
部屋に帰ってページを開いてみると、まぁ・・・わかるよな、吐き気を催す。
ちなみにこの時の時間が大体10時。
もう少ししたら妹は寝る。
なんとなくだが、もう少し調べてみたくなった。
姉や妹がいる奴はわかるだろ。
現実の妹や姉に萌えはない。
俺、姉はいないから、姉は欲しいけど。
11時頃になると、妹は本がなくなったことには気がつかずに寝たらしい。
ちなみに、妹はなぜか自分の部屋を使わずに母親と一緒に寝ている。
よって妹の部屋は現在空状態。
鍵も掛かってない。
とりあえずスネークを開始する。
だが・・・。
30分ほど探すが、予想に反してまったくもって何もない。
期待はずれもいいところだ。
俺は捜索範囲を部屋からPCへと移した。
ちなみに父親と母親はPCに疎い。
よってセキュリティーとか、そんなのは甘々だ。
妹のユーザーにはパスワードすらついてない。
部屋は汚いのにデスクトップは綺麗だなとか思いながら、PC内を捜索。
ちなみにログアウトしてなかったので、メッセもスカイプもIN状態。
メールも見放題。
(ああ・・・)
証拠が山のように出てくる。
妹のスペックだが、身長150センチくらいで体重は普通くらい。
痩せてはいないけど、ぽっちゃりってほどではない。
バレー部に所属。
勉強は天才クラス。
で、中学2年。
まず目に入るのは虹絵検索エンジンで、『うんこ』とか『尿』って書いてあるのが、全部文字の色が変わっていること。
さらに出てくるのは会員制らしき虹絵サイト。
ついでに2ちゃんのフェチ板。
グーグルに至っては検索制限の解除を外してまで、『失禁』とか『便』とかで検索している。
そして、一番ダメージがでかかったのはメール。
『趣味』というフォルダができている。
さすがにそこまで覗くのは気が引けたが、ここまで来たら行くしかない。
メール1『お風呂の中とかでおしっこするとオネショとかしやすくなるらしいよー(笑う顔文字)』
メール2『やってみたんだ(笑)一歩前進だ↑↑』
待て。
ちょっと待て。
うん、なんつうか、『ひでき』って男からのメールってあたりが非常に気になるが、問題はそこじゃねぇ。
色々とふざけんな。
とりあえず、その日はそこで終了。
調べれば山ほど裏が取れそうだが、俺の精神はそのメールでノックアウトされた。
マジで死にたくなった。
次の日、俺は変化球とか牽制とか関係なく、部屋にいる妹に本を差し出した。
俺「これ、何?」
光の速さで奪い取られた。
妹「見た?」
俺「いや、見たけど」
妹「どこまで?」
俺「全部」
ここまで慌てる妹を見るのは初めてだ。
顔が爆発するんじゃないかってくらい赤くなってる。
そして、ここで妹が何か俯き加減で何か考えている。
妹「要求を言って」
(はい?)
妹「お金!?いくら?いくらなの!?」
ここで妹は半泣き。
てか、声がデカい。
とりあえず親は来なそうだが、少し静かにしろ。
すっと無言で、貯金箱を差し出される。
俺「何これ?」
妹「2万くらい入ってる。持ってっていい。母さんに言ったら死んでやる」
ちょっと待て。
とりあえず落ち着かせる。
どうやってこんな本を買ったのか聞いてみると、予想通り楽天だそうです。
ちなみに、金にも体にも興味がないので貯金箱は返しておく。
勉強中だったのか手にシャーペンを持って振りかざしてるから、あまりきつくは言えない。
約10分の説得の甲斐あって、なんとかなだめることに成功。
俺「で、趣味なんか?」
妹「・・・はい」
なぜに敬語?
俺「で、これの他に何か、こういった物はあるの?」
妹「PCの中にちょっと」
(おまwwwwちょっとじゃねぇだろwwww)
俺「ふーん。そういった友達は?」
妹「いない」
俺「そっか。じゃあメールとか見てもいい?」
妹「・・・もう殺して」
俺「いやー、まさか妹がこういった性癖を持ってるとはな」
妹「・・・」
俺「まぁ性癖なんて人それぞれだしさ。俺にも性癖がないわけではないし」
本当にこのままだと自殺しそうなので、なだめる。
さらになだめること10分。
やっと妹にも笑いが戻ってきた。
妹「でもさ。こういうの。だめ?」
俺「いや、駄目じゃないけど。正直。なぁ」
妹「でも、ほら。この写真とか見て」
『スカトロ耽美館』の、かなりきつい写真を見させられる。
妹「どお?興奮とかしない?」
俺「・・・残念ながら」
この後、写真付きでスカトロの素晴らしさ講座がはじまった。
恥ずかしがっている女性の表情、限界点における排泄の気持ちよさ。
うん、吐き気しかない。
だが、ここでこれを聞かないと、マジでこの世間を軽視してる天才は自殺しかねない。
「うん」とか「おお」とか、適当に返事をする。
妹「ね?どう。すごいっでしょ?やってみたいとか思わない?」
俺「ん~、俺はいいや。お前はあるのか?やりたいと思ったこと」
妹「うん。あるよ」
俺「・・・」
えっと、何?その自信に満ち溢れた顔は・・・。
俺「ちなみに、行なったことはあるんでしょうか?」
妹「それはない」
話を聞いてみると、こういったフェチに目覚める人は、過去にそういったトラブルがあった人間らしい。
妹の場合は、小学校3年の時に学校の帰り道で小便を漏らしたことがきっかけだったらしい。
それにしても、恥ずかしがらずに、よくもまぁぺらぺラと。
母「妹~。洗濯を畳んだ時にママのタオルどこやった~?」
また妹が光のスピードで本を隠すテクを見れた。
そしてその時、なんかわけのわからないフラグが立った。
妹「夜、お兄もこっちに引き込んでやるから、母親が寝たら、ちょっと来て」
(なんなんだ?わけがわからん)
ちなみに親父は夜はいつも自室で酒飲んでるからPCのある部屋にはいない。
正直、行きたくない。
あのメールを見た時の精神的ショックを越えるものを見せられるに決まっている。
だが、なんでか俺は・・・。
俺「ん。じゃあ冷やかし程度に見てやるよ」
とか言っちまったんだ。
10時半くらいになって母親が寝る。
それにしても早寝だな。
そして11時くらい。
妹「お兄、いいよ~」
行くのを躊躇っていた俺のメッセが起動した。
メッセで呼び出しを食らった。
そこには、わけのわからない名前の方々が妹を含めて4人、俺を待っていた。
「どうもー」
「こんばんはー」
「妹さんのお兄さんですね。初めまして」
などと挨拶があった後。
スカ好き王子「いやー妹さん、自分の性癖に兄を引き込むとはやるねぇ」
妹「いやいや、それほどでも」
ミント「家族に言うことすら絶対無理やって」
スカ「そうそう」
(え?お前ら何言って・・・?)
俺「あの、まだ別に・・・好きになったわけではないんですが」
いきなり妹が部屋のドア開けて入ってきた。
そして「空気読め」と、それだけ言ってドアを思いっきり閉める。
ミント「え?あーそうなんだ。でも、んじゃ、王子。講座の時間といきますか」
スカ「お?俺行く?」
妹「GOGO!」
妹よ、復活が早すぎるだろ、常識的に考えて。
スカ「時にお兄さん。セックスのご経験は?」
俺「いや。ありませんが」
スカ「そうですか。ん~では、これを見てください」
そして繰り出されるスカ画像。
だが虹だ。
しかも漫画。
スカ「我慢してる表情とか可愛くないですか?」
そう言われると、そんな気も。
洗脳されかかった。
淡々と続くスカトロ講座。
小学校の時にある、お漏らしの思い出を聞かれたり、ちょっと変化球で俺の趣味の面から持ってかれたり。
こいつ、なかなかの策士だな。
そして、妹。
「時たまやるwwwww」っての、やめてくれ。
本題に戻る。
スカの話は続く続く。
ヤフオクとか見ながら、適当に相槌を打ちながら聞く。
そして話はとんでもない方向へ。
スカ「妹さん、実際家族にばれたんなら、もっとばらして後戻りできないようにさせちゃえばどうです?」
妹「え~、でもぉ~wwwww」
どんな恐ろしい含みがあるんだ?
ミント「んじゃ、カミングアウトタイムってことで」
しんじ「お、なんか凄いことになっております」
ここで、ずっとROMってた奴が怒涛の勢いで参戦してきた。
しんじ「私も趣味で何回か漏らしたこと、ある!」
帰りたくなった。
自分の家なのに帰りたくなった。
そして妹がまた部屋に乗り込んでくる。
でも扉を思いっきり音を立てて開けて、何も言わずに出ていった。
うん、黒歴史だよね。
スカ「オーッと、ここでカミングアウト」
ミント「wwwww」
しんじ「さて、ここでお兄さんをプレイに誘え。ほら。今しかない」
お前ら・・・もうやめてくれ。
もう無理だ。
俺のライフはゼロだよ。
妹「いや、それはちょっとwwwww」
とか言いつつ、なんかもう妹はノリノリだった。
このままだと、わけのわからん祭りに参加させられそうだ。
というわけで、俺は逃げた。
俺「すみません。明日早いんで、俺は今日この辺で」
そして3日目、事体は急変する。
俺が学校から家に帰ると、なんとなく空気が重い。
何が起こったかと思えば。
母「あんたは知ってたの?妹のこと」
(ああ・・・)
母親にばれた。
経緯的には、わーお兄ちゃんに趣味話しちゃったー、どうしようどうしよう、グー(妹が寝る)。
『スカトロ耽美館』を出しっぱで。
<続く>