なので到着した初日こそ祖母と一緒に夕飯を食べたりしましたが、次の日は朝日も昇らないうちから釣りに向かい、帰ったのは日も暮れかけてきた頃でした。
祖母の家に着くと、ちょうど祖母がお風呂から出てきたところでした。
(ちょうどいい、お風呂が沸いてるなら夕飯の前にひとっ風呂浴びるか)
疲れていた俺は、すぐにでも湯船に浸かりたくなり、脱衣場で手早く裸になり、風呂場の曇ガラスのドアを勢いよく開けて、その勢いのまま風呂場に入ってドアを閉めました。
(おおっ!?)
俺は激しくビビリました。
祖母の家の風呂は一般より広めで、ドアの外から中を見ても広い範囲が死角になります。
ただ中に入ってしまえば死角はなくなります。
そんな風呂場で俺が目にしたのは、俺を見て硬直してる全裸の女の子でした。
彼女の体には泡が付いていました。
体を洗っていた最中だったようです。
「あ、ごめんなさい」
俺はドアノブに手をかけ、勢いよく回しました。
祖母と俺しかいないはずの家になぜかいる女性。
その事について聞きたい気持ちより先に、まず自分の裸を見られたくない気持ちと、相手の裸を見てはいけないという気持ちが優先しました。
焦っていたと言ったほうが適当かもしれません。
なぜなら勢いよく回しすぎたドアノブが、ゴキッと音を立てて動かなくなってしまったからです。
「ははっ」
彼女に向けて照れ笑いとも愛想笑いともつかない笑いを発して、もう一度ドアを動かそうと試みましたが、押しても引いてもドアは壁になってしまったかのようにびくともしません。
俺はとりあえずエチケットとして両手で股間を覆って、「あ、なんか壊れちゃったかも・・・」と呟いて彼女のほうを向くと、彼女は浴槽の中に体を沈めてそっぽを向いていました。
体を隠すために浴槽に移動したようです。
「あの・・・あなた誰ですか?なんなんですか?突然・・・」
こっちがしたい質問を彼女が先にしてきました。
「俺はばあちゃんの孫だよ」
「あ、そうなんですか。あ、私はお宅のおばあ様の介護をさせて頂いてる者です」
「あ、そうなんですか、あ、それはどうもお世話様で・・・」
「いえいえ」
この家の孫と知って、いくらか警戒心も解いてくれたのか、彼女は初めて笑顔を見せてくれました。
かなり引き攣った笑顔でしたが、笑うとえくぼが出ます。
愛らしい彼女の魅力は、それだけで十分にわかりました。
肩から下は浴槽に隠されていましたが、女性らしい優しいラインをした彼女の全裸は、しっかりと脳に補完してありました。
「あの、で、出て行かれないので・・・すか?」
彼女はちらっとこちらを見てすぐに目を背けました。
自分の裸を見られる羞恥心はなくなっても、真っ裸に両手で股間を覆っているだけの男を見てしまう恥ずかしさに、彼女は頬を真っ赤に染めていました。
(わかりやすく顔に出るタイプだな・・・)
そう思いつつ、「いや、ドアが壊れてしまったみたいで・・・」と片手を股間隠しに残して、もう片方の手でドアノブを左右に捻りました。
しかし、少し前とは変わって、ドアが開かないことに軽い期待感を抱いていました。
やっぱりドアはビクともしません。
「どうしよう・・・。閉じ込められちゃったんですか・・・?」
相変わらずこちらを見ないで彼女が言いました。
「そうですね~。あ、でも窓から出られるっぽくないですか?」
「ちょっと高くないですか」
「俺が抱きかかえて外に出してあげますよ。そしたら服を着て助けを呼んでください」
「う~ん・・・それはちょっと・・・」
全裸で全裸の男に抱きかかえられることに当然の躊躇いを見せました。
その時、奥の部屋の時計がゴ~ンゴ~ンと7回鳴りました。
「じゃあ、こうしましょうか。窓から出ても人の通りの多い今の時間だと、たぶん誰かに見られちゃいます。そこでこの作戦は9時の鐘が鳴るまで保留にして、それまでにドアが直らなかったら実行しましょう」
「う~ん、そうですね・・・」
彼女は躊躇いながら一応了解しました。
それ以上の作戦が考えられない状況なのを彼女も理解してくれたのでしょう。
2人とも祖母に助けを求めることは考えに入れていませんでした。
恥ずかしいのもありましたが、介護を必要としている祖母が頼れるとも思わなかったからです。
とりあえず俺は彼女にお尻を向けてドアの点検に取りかかりました。
「あ、あの・・・」
その声に振り返ると、彼女はそっぽを向いてお風呂の蓋をこちらへ差し出していました。
「ありがとうございます」
すぐに彼女の意図を理解した俺はそれで下半身を隠しました。
「やっとこれでまともに貴方を見られます。結構かっこいいですね」
彼女はにこりと笑ってまっすぐこちらを見ました。
台詞も笑顔も不意打ちでした。
俺のハートにミラクルヒットしました。
「いや、はは、ありがとうございます」
そう返事をしながらも胸の高鳴りに呼応して、ムクムクと膨らむチンコをお風呂の蓋で隠すのに必死でした。
彼女は間を繋ぐためか話しかけてきました。
「えーと、お名前は?」
「Aです」
「あ、そっか。おばあさまと一緒ですよね。Aさんっていくつですか?」
「24歳です」
「え、高校生くらいに見えた!そっか、タメなんだ~」
「へー。そっちこそ、もっと若く見えましたよ」
「あ、敬語じゃなくていいよ。タメなんだし、裸同士で改まるのってなんか変じゃんw」
しばらく自己紹介を兼ねた雑談をしました。
初めのうちはドアを直そうとしながら話していましたが、すぐにドアを直すのは無理っぽいと感じて諦めました。
彼女の名前はSさん。
在宅介護サービス会社の社員で、祖母の入浴などの手伝いをしているらしいです。
なぜ祖母の家のお風呂を利用しているかというと、彼女の家のお風呂が壊れているので、祖母に頼んで入れさせてもらっていると話してくれました。
「だって、この家のお風呂、広くて立派でしょう」
すっかり警戒心を解いた彼女は饒舌になって、明るい声で話してくれました。
とは言っても、この状況下でこれだけ明るくなれるのは、ちょっと能天気なようでもあると感じました。
「あ~でも、もうちょっと限界」
彼女は残っていたお風呂の蓋で体を隠して湯船から出ました。
「お風呂、熱かった?」
「うん、でもダイエットになるかも!」
「えー、そんなの必要ないじゃない」
「脱ぐとヤバいのよ!あ、あちゃ~、そういえば今脱いでるか。ヤバい~」
「それを見た俺が言うんだから間違いないでしょ~。必要ないよ~」
「マジで?ありがと~」
こんな会話の間も天を見上げている我が息子に申し訳ないくらいエロいムードにはなりません。
彼女がやたらと明るいせいかもしれません。
狭い密室で全裸の若い男女が板一枚だけで体を隠しあっている。
それなのに、シコることさえ出来ない今の状況は、断食の修行中に肉汁の滴るステーキを目の前に置かれているようで、とても我慢できるものではありません。
俺の中の下心が会話を徐々にエロい方向へ持っていくように指示してきました。
ガチャガチャ。
「ドア開かないね」
軽い沈黙で、「ごめんなさい」と謝ってみました。
作戦の第一歩です。
「え、何が?」
「ドアを壊しちゃって。あと裸も見ちゃって」
「お互いさまでしょ。私のほうこそごめんなさい」
「でも、こっちはちょっとラッキーなんて思ったり・・・」
「えー?私の裸が見れて?」
「うん」
「エッチ」
(うん、これはいい調子だ)
そう思いつつ、「そう、俺ってエロくてエロくてしょうがない男なのよ」と主砲を放ちました。
しかし・・・。
「否定しないのかよー!」と突っ込まれました。
ここは、「あたしも・・・」って展開を期待してたのですが残念・・・。
すると突然・・・。
「チラッ!」
彼女は体を隠しているお風呂の蓋を少しずらし、くびれから腰までのラインをこちらに少し見せてきました。
想定外の彼女の行動にポカンとしてる俺を見て、彼女はもう一度・・・。
「チラッ。サービス」
そう言って同じ行動をしました。
「もう、ちょっとは反応してよ。恥ずかしいじゃん!」
「いや・・・(股間はめちゃくちゃ反応しとります!)っていうか、突然やるから・・・」
「え~?話の流れに合ってたじゃん」
どうやら彼女はすごく照れ屋のようですが、明るく誤魔化すタイプのようです。
今、これだけ彼女が明るく振る舞っているのは、実は凄く恥ずかしくてドキドキしているからではないかと、なんとなくそう思いました。
「うわっ、今の効いたわ!鼻血ブーだね!」
彼女のノリに乗ってみました。
「でしょー!反応が遅いんだからっ!チラッ!」
「チラ返し!」
そう言って、こちらもギリギリ見えないところまで蓋をずらし戻しました。
「あ、う!な、なかなかやるわね!はは」
軽い気持ちでやった『チラ返し』に、彼女は顔を真っ赤にして本気で動揺しはじめました。
男の裸にあまり免疫がないようです。
「あれ?ドキっとした?エロいなぁ」
「そ、そっちこそ、鼻血出したじゃ~ん!エロいなぁ」
鼻血ブーと言っただけで、鼻血を出してはいないのですが・・・。
ともかくエロい方向へ話を持っていこうと思い、「鼻血の他にも色々出ちゃったよ」と、意味深な感じで言ってみました。
ここで顔を真っ赤にしたら今後の展開にかなり期待できるのですが、彼女はどういう意味だかわからないといった顔で、「色々って?」と聞き返して来ました。
鈍感なのか、エッチな雰囲気にならないように気をつけているのか?
たぶんその両方なんだろうけど。
だけど悪いけど、俺のほうは「チラッ」と彼女がやった瞬間に体中の血液がチンコに集中してしまい、まともな思考ができなくなりました。
もうその場でシコりたい気分でした。
俺は意を決して・・・。
「まあ、その・・・こういう事だよ・・・」
風呂の蓋を体からどかして、MAXパワーのちんこを見せつけました。
「ちょっ、マジで、やめてよー。もう変態みたいだよ」
彼女は目のやり場に困ってキョドり始めましたが、ドン引きはされないで済みました。
「ほら、先っちょから、なんか出ちゃってるでしょ」
俺はちんこの先端を指差して言いました。
彼女の目を盗んで弄っていたちんこは先走り汁を滴らせ、風呂場の明かりを反射させて妖しく光っていました。
「もう!わかったから、それしまって!」
「どこへしまおうか?」
「だから!隠してって!」
「どこへ隠そうか?」
調子に乗ってこのままエッチへ持っていこうとしましたが、彼女は急に真面目顔になり、「そういうこと?」と聞いてきました。
「え?」
とぼけて見せましたが、この作戦はやっぱり少々強引すぎて下心がバレてしまいました。
「私はやだよ、こんなの」
「・・・何が?」
「いくらこんな状況だからってさ、初対面の人と簡単にエッチとかできないよ・・・」
ほぼこちらの野望は打ち砕かれましたが、ここまできたらかっこ悪くても引き下がれません。
「そっちが『チラッ』とかやるから我慢できなくなったんだ」
そう言った後で、まずかったなと思いました。
「人のせいにしないでよ。こっちだってAくんがドアを壊したのも、裸なのも我慢してたんだから」
余計に気まずくなりました。
彼女はそれ以上何も言わず、そっぽを向いたまま黙り込んでしまいました。
<続く>