思いがけない姉の発言に瞬間的に体温が上昇する。
顔の紅潮を痛いほど自覚しながら俺は慎重に言葉を発した。

「お前は、なんでそういうことを(弟の前で)臆面なく言うんや・・・!」

「臆面あるよ、恥ずかしいよ!・・・たぶん姉ちゃん酔ってるんやと思う」
PCMAX

転がる空き缶。
着崩れた制服(学校をサボったくせになぜ着ている)。
上気した頬。
焦点の揺れる眼差し。
そして・・・。

「酒くさぁ」

「うるしゃい」

若干呂律も回らないようだ。

「つーかお前、これ全部1人で?」

部屋全体を見回しながら聞く。

「ローソンで購入しました。へへ」

「こいつは・・・」

呆れもピークに達したその時、不意に姉がこちらにススィと寄ってきた。

「な、なんや。酒臭いねん!」

「勘弁してーな、ちょっとの我慢や。・・・タツ、聞きたいことあんねんけど」

(あれ、なぜに俺の心拍数は上がっているのだろう?)

「タケ先輩に、なんか・・・あった?」

体育座りで俺に寄り添うチビ姉。
答えを求める眼差しで、こちらを見上てきた、その姿。
よく分からないが、(な、なんか・・・まずい)と思った。

「まずい」
「え?」

「あ、いや」
「まずいて何?」

「こ、こっちのこと」
「え、え?何なん?言ってよ。こっち?」

(くわーーーこっち来んなーーー)

まずいと感じた理由。
今ではもうハッキリと分かる。
イメージ的には、『総員、第一種戦闘配置』『了解。主砲展開』みたいな。

(な、なんでや。なんでこんな奴に・・・)

これが5日間の封印から来るバックドラフト?

「先輩のことと関係あんの?」

「いや、関係ないわけではない、つーか接点はあるって言うか」

「はっきりしぃ!」

かつて無い追撃を姉が放つ。
というか必死だった。
そしてついに服を強引に引っ張られた拍子に・・・。

「あ」

それまで股の間に隠していたモノが露わになった。
なってしまった。

「・・・あ」

姉の呟きが聞こえた。
午後10時23分、気まずい沈黙が支配する空間。
乱雑な散らかりっぷりの室内で、俺と姉はなぜか向かい合っていた。
と、とりあえず釈明開始!

「あ、あのな?」

「え、えーと」

見事なシンクロ。

「・・・何?」

俺は姉に発言を促した。

「え、えとな、その、実の姉に欲情するんは、姉ちゃんどうかと・・・」

「ちゃうわ!」

全力で否定した。

「ちゃうわって、でもタツ、それ・・・」

「ああ分かっとる分かっとるわ。そう思われてもしゃーないわな、コレじゃあ!」

屹立する我が半身は、姉にその姿を拝まれてもなお股間にそびえている。
素で晒しているわけではない(誰が晒すか)。
しかし学生ズボンの黒地を突き破らんという勢いは、まざまざと見て取れる。
逆にそれは素チンを晒すよりも赤面モノな光景だった。

(せやかてしゃーないやろ・・・こいつかて一応、女・・・なんやし)

全生物の♂の本能。
こいつにゃ・・・永久に抗えん!
なんかもう訳が分からない。
姉に勃起してるところを見られ、しかもその原因が自分だと姉に気づかれてしまった。

「は、ハズい」

何とかそれだけを口にする。

「姉ちゃんかてハズいし・・・」

赤面してしまう姉。

「・・・ごめん」

率直に謝りながらも一応の理由がこちらにはある。
それでなんとか弁明しようとする。

「その、大会前やんか?今」

「う、うん」

「だからつまり、・・・精力を貯めとかな、アカンねん」

ぐっ、恥ずかしっ!

「せーりょく・・・?」

そして姉よ。
そこで首を傾げるのは非常にイケナイ。

「せいって、『青い米』の?」

それも反則だろう。

「う・・・そうや」

「ふーん・・・そっか。安心したわ」

「は?」

不意打ちの姉の笑みに間抜けた声を上げる俺。

「な、何で?」

「だから、先輩も“そういうこと”なんやろ?」

「あ、ああ。そう、そういうことなんや」

「良かった~。あたし、もう捨てられたんかと・・・」

「せ、先輩はそんな人とちゃうやろ!」

「わかっちゃうて。けどなぁ、ホンマにショックやったんやで?」

「・・・む」

恋人に拒絶される気分ってのは、『いない歴=年齢』の俺には曖昧にしか分からない。
そのことが、無性に俺を苛立たせた。

「あーそうかよ、ごちそうさん。んじゃもう行くわ」

その場で立ち上がり、ドアへと進もうとする。

「あ!ちょ、ちょっと待ちぃな」

その腕を姉が突然掴んできた。
細くひんやりした両腕が俺の無骨な左腕に絡んでくる。

(う・・・)

それだけで俺と俺の半身は直立不動で麻痺してしまうのだった。

「な、なんや。もう問題は解決したやろ。ええか、これ以上先輩に迷惑かけんためにも、明日は朝一で学校に行けよ」

「あたしはそれでええよ。ん、あたしの問題はこれでお終い。・・・けど、タツのんはまだやろ?」

そう言って姉はチラリと視線を下げる。
ビクリと俺の体が痙攣した。

(ま、まさか)

「しんどいんとちゃう?それ・・・」

(しんどいって)

「なんだかんだ言っても姉ちゃんが原因やし・・・」

(お前は何を言ってるんだ?)

「その・・・タツさえ良ければ、あたし」

(いや待て!?)

そこで、はたと気がつく。

「お前・・・やっぱ酔っ払っとるやろ?」

「そうやなぁ。あたし・・・今ちょっとおかしいねん」

「十分承知。とりあえず水飲んで来い!」

「いや」

「・・・はい?」

意味不明な姉の言動に困惑する俺。

「タツも・・・して欲しんやろ?」

「なっ」

(あかん。こいつ、なんかスイッチ入りよる)

鼓動が痛い。
顔が熱い。
下半身など言うまでもない。
トンと俺の胸に伸ばした姉の手が触れた。

「お、おいおいおい!」

「静かにしい。下にお母ちゃんらいてるんやで」

(ならこの行為を止めろ!)

とは、なぜか言えなかった。
どころか姉が手に力を込める。

「あ?」

ただそれだけで俺は背後のベッドまで倒れてしまった。

(マジで・・・体が麻痺しよる)

前代未聞の出来事に神経の大半がイカレてしまったのだろうか。

「言う割りには抵抗せんやん」と悪戯っぽい微笑を見せる姉。

(嘘やろ・・・そんな馬鹿な。これではまるでエロ本の世界やないか?!)

姉は容赦ない。
倒れ込んだ俺の上に覆いかぶさるように乗っかってきた。
小柄な体格通り、体重はほとんど感じない。
しかしやはり、人が乗っているという感覚は十分あるわけで。
しかも、女。
しかも、姉。

(うわぁ・・・!)

狼狽する俺をよそに、こともあろうに姉は、己の身体をピタリと密着させてきた。

(ぐわわわ!)

当然、とある部分が当たるわけである。
身長はあれだが、こっちはまあそれなりに発育してるようだ安心安心、とか思っていた部分が。

「ちょっ、ちょまずいやろ。マジ」

「ん~?柔らかい?姉ちゃんのおっぱい」

完全に発情猫と化している。

「んふ。嬉しいな~、弟にそう言ってもらえると」

「何も言ってへんやろ・・・ってオイッ!」

何を思ったのか、姉は俺のシャツをごそごそし始めた。
どうやらボタンを外しているらしい。

「こうしたほうが、よー感触が分かる」

「!!」

全てのボタンが外れ、その下の地肌が現れる。

「ふぅ。でわでわ」

注意する間もなく、姉が自分の制服に手をやった。

(ま、まじ?)

劣情を煽る衣擦れの音。
生唾すら飲み込んで俺はその音を聞いていた。
音が鳴るたび、少しずつ裸体に近づいていくその姿を、半ば夢のような心地で見る。
それほどの時を待たず、目の前には下着姿となった姉がいた。

(・・・白色)

しばらく俺の脳は、その単語以外の進入を拒んだ。

「ほい」

そして妙な掛け声と共に姉が再度身体を密着させてくる。
しかしその感触は、確かに先程とは比べ物にならなかった。

(うわっ・・・やらかいやらかいやらかい)

ひたすらフニフニするそれが、可及的速やかに理性の崩壊を促していく。
しかも!

「・・・っん・・・!」

姉、なんか喘いでるんすけど。

「わぁぁぁぁあっ!!」
「ひゃ」

(愛と正気を取り戻せ!)

最後の踏ん張りで俺は叫び、身体を起こした。
その拍子に乗っていた姉がしがみついてくる。

「あ、危ないなーもう。それに、静かにしってゆーたやろ」

「やかまし!これ以上はほんま怒るで、俺」

「ブラも外そか?」

「いやいい!そのままでいい!!・・・あれ?」

耳元でクスリという笑い声が聞こえる。

「もう観念しい」

囁くような言葉と共に生温かい吐息が鼓膜を振るわせた。

(ああ、もう・・・無理だな)と。

「ほれ、続き続き」

また覆いかぶさる体勢に戻される。
半ば諦め口調で俺は言う。

「・・・ええんかよ、こんなこと」

「ええんよ」

姉の言葉が脳髄に深々と突き刺さった。
初めはただ押し当てるだけだったのが、今では擦り付けるようにして感触を与えてくる。
知らずに俺の呼吸は乱れ始めていた。
そして姉も。

「お前も」
「ん?」

「気持ち、ええんか?」
「うん。ええよ」

ふっと浅く息を吐きながら身をすり寄せてくる姉。
思えば、ここまで間近に迫ることは今までなかった。
まじまじと顔を覗き込む。
姉はこちらの視線に気づかず、目を閉じて身体を動かしている。
時おり強く目を閉じるタイミングがあった。

「ん・・・うぅん!」

その何かに耐えるように歪められた眉が、より一層俺の興奮を高めていく。

(・・・こいつ、可愛い)

自分より遥かに小さいその姿は、今では1人の女の子として俺の目に映っている。
女の子が自分の性欲を処理しようとしてくれている。
もはや血の繋がりがどうとか、実姉に性衝動は持たないとか言っていたことなどを棚に上げて・・・。

<続く>