これからまた長時間運転しなきゃいけないことが億劫でなりません。
(あ・・・)
車のドアを開けながら、かなり離れた先にとまっているスクーターに気づきました。
その近くに腰かけていた内気くんが、さっと立ち上がっているのが目に入ります。
(あの子だ)
どきっとしました。
反射的に、まだ気づいていないふりをしてしまっている自分がいます。
(こっち見てる、なんでいるの?)
うまく説明できませんが、なんだか無性にイラッとしました。
(いまさら、なに?またあの気まずい空気はイヤだ)
あの男の子は、なにひとつ悪くないのですが・・・。
とにかく腹が立ってきます。
身勝手なのは私のほうだという自覚はありました。
でも、理屈ではないのです。
この状況が、もはやストレスでしかありませんでした。
(来るなよ、もう来なくていいって)
向こうから、とぼとぼと彼が歩いてきています。
何か話したいことがあるのか・・・。
それとも、連絡先の交換でもしたいのか・・・。
気持ちが爆発しそうになりました。
いずれにしろ、私のことを待っていたのは間違いありません。
(やってやる)
どうせ、二度と会うことのない相手でした。
次の瞬間には、嘘のようにアドレナリン(?)が脳内に満ち溢れてきます。
(かまうもんか、やってやる)
相手のほうにまっすぐ背を向けて、車の傍らに立っていました。
彼に気づいていないふりを続けながら、後部座席に荷物を積みこみます。
運転席のドアを開けっぱなしにしたまま・・・。
(かまうもんか、どう思われようと)
着ていたカットソーを、お腹から捲り上げました。
きょろきょろと周囲を気にしてみせるお姉さん・・・。
真後ろにだけは、“たまたま”首がまわりきっていません。
周りは、ただの雑木林でした。
内気くんとの距離は、まだけっこうあるはずです。
(あんたのせいだ、また現れたりするから)
上半身ブラ姿になって、そのままスカートも脱ぎました。
まとめて助手席のシートに放り込みます。
(どきどきどき)
私の行動にびっくりしているはずでした。
後ろを振り向きたい衝動に駆られますが、ぐっと我慢します。
(ふざけんな、これも脱いでやる)
ブラを外して、ぽいっと車内に投げ込みました。
身に着けているのはパンツとスニーカーだけ、という格好になって・・・。
そのまま車に乗りこみます。
“カチャッ”
ドアをロックしながら、一瞬だけ内気くんの姿を視界のすみに捉えていました。
(いるっ)
まだ20メートルくらいあるでしょうか。
そんな彼の存在に、まだこのお姉さんはまったく気づいていません。
(どきどきどき)
閉めきっていた車内には、むっとするような熱気がこもっていました。
エンジンをかけて、運転席のウインドウを2cmくらい下ろします。
すぐに、またエンジンを切りました。
フロントガラスの向こうから、陽射しがまぶしく顔に照りつけています。
(そうだ)
頭の中で、ひらめきました。
からだを捻って後部座席に手を伸ばします。
(これであの子も簡単に近づいて来られる)
ボストンバッグからスカーフを引っ張り出しました。
その様子が、まだ向こうにいる内気くんにも見えるように・・・。
まるで目隠しするみたいに、顔の上半分を覆って結わえます。
(やってやる、あの子の前で)
邪魔者が現れる心配はありませんでした。
(大丈夫、ちゃんとドアのロックもしてある)
自分の胸を撫でまわしながら・・・。
死ぬほどの緊張感の中、その瞬間を待ち構えます。
(どきどきどき)
待つまでもありませんでした。
いきなりサイドウインドウに張りついた、内気くんの顔・・・。
(ひっ)
もしガラスがなければ、がばっと手が届くほどの近さです。
思いっきり車内を覗き込まれていました。
(ひいいん)
運転席に座ったまま、無心でおっぱいを撫でているお姉さん・・・。
まぶしさ除けに巻いた目隠しのせいで、彼の気配には気づいていません。
(これはやばいぞ、恥ずかしすぎる)
本当は、ちゃんと見えていました。
とっさに使ったこのサマースカーフは、生地がメッシュ状の薄いものです。
重なり合った網目の隙から、透かすように見ることが出来ていました。
内気くんが驚愕の表情で、でも食い入るように車内の私を覗いています。
(信じられる?さっきのお姉さんだよ)
そのお姉さんのおっぱいが、至近距離で見放題でした。
まさかと思うようなこんなキレイな人が、誰もいない森の中、人目を忍んでオナニーをはじめています。
口を半開きにして吐息を漏らしました。
(イヤあん、見ないで)
男の子の目の前で、たいして大きくもない自分の胸を、愛おしむように揉みまわします。
(そんなにじろじろ・・・恥ずかしいよう)
と、そのとき、内気くんが『すっ』と、窓の向こうからスマホを向けてきました。
ガラス越しに、私のことを撮ろうとしています。
どきっとしましたが、いまさら遠慮なんかしませんでした。
(かまうもんか)
どうせ顔は半分隠れているのです。
何も知らないふりをして、そっと乳首を摘んでみせました。
「んっ・・・はぁっ・・・」
さっき、わざと窓の上端を空けておいたのです。
聞こえないはずがありません。
このお姉さんの、艶めかしい息づかいが。
乳首を弄りながら、みっともないくらいに鼻息を荒くします。
(あああ・・・感じちゃう)
窓の外で、スマホがゆっくり横に移動していました。
写真ではなく、動画で撮られているんだとわかります。
どっちだろうと同じことでした。
背中をくねらせながら、ちょっと腰を浮かせる感じでパンツをずり下ろします。
ぼとっぼとっ・・・と、スニーカーを脱ぎ捨てました。
パンツも脱いで、全裸になった私・・・。
(ひいいん)
お行儀悪く、ダッシュボードの上に両足を載せてしまいます。
股の間に手を持っていきました。
(恥ずかしすぎて・・・死んじゃう)
男の子がそわそわしています。
脚を上げた体の角度が深くて、肝心なところは見えていないようでした。
サイドウインドウにへばりついて、懸命に私の指先の動きを見下ろそうとしています。
知ったことではありませんでした。
誰もいない森の奥で、どっぷり自分ひとりの世界にひたっている女・・・。
すぐ横に人がいるなんて、夢にも思っていません。
(泣いちゃいそう)
極上の背徳感に、痺れるような興奮を覚えていました。
恥部を弄りながら、快感を誘うデリケートな部分を、指の先端で探っていきます。
(あっ・・あっ・・あっ・・ああん、イヤぁ・・・男が見てるのに)
時間をかけて、じっくりとオナニーに耽りました。
片方の手では乳首をこねまわしながら・・・。
「はぁっ・・はぁっ・・・」
必死に喘ぎを噛み殺します。
覗いている内気くんの顔が、ガラスを隔てたすぐ真横にありました。
その後ろめたさが、最高に快感です。
ヘッドレストに後頭部を預けて、首を仰け反らせました。
自分の顔のすぐ横には、男の子のいやらしい表情・・・。
「ぁっぁっ・・・ぁっ」
彼の目の前で、はしたなく鼻の穴を膨らませてみせます。
(あああ、最高・・・)
ぬるぬるでした。
じっくりじっくり、自身の陰部を指先で追い詰めていきます。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ」
恥も外聞もなく、気持ちを天まで昇らせていく私・・・。
(もうだめ・・・イっちゃう)
絶頂が迫ってきていました。
自虐的な気持ちが抑えられません。
(あああん)
腰かけていたシートの上から、ずるずると体を沈めていきました。
手探りで、レバーに手を伸ばします。
“ガチャッ”
運転席を、フラット近くまで後ろに倒しました。
“ガタン”
ほぼ仰向けの状態です。
ダッシュボードに放り出していた両脚を、宙に浮かせたまま胸もとまで引き寄せました。
ひざを折り畳むような感じにして、体を小っちゃく丸める私・・・。
まるで、オムツを替えてもらう赤ちゃんみたいな格好になります。
(ひいいいん)
見下ろしている彼の、もろに目線の下でした。
内気くんが、私の恥ずかしいところを直視しています。
泣きそうに興奮しました。
お尻の穴まで『こんにちは』した、あられもない格好のまま・・・。
一心不乱に、クリに当てた指先を震わせます。
「ぁん・・・ぁぁん・・・」
我慢できずに喘ぎを洩らしていました。
自尊心と葛藤しながら、なるべく可愛らしい声で悶えまくります。
「ぁっ・・・あぁん・・・ぁっ」
恥ずかしくてたまりませんでした。
いま私は、他人にこんな姿を見られています。
(イヤっ、イヤっ)
ものすごい勢いでピークが押し寄せてきていました。
「ああん・・イヤあ・・・」
はばかることなく、さらに指先を細かく震わせます。
そして・・・。
(あああああああ)
私は、絶頂の瞬間を迎えていました。
「あっ、あっ・・・ああ!!」
体がビクビクビクッと痙攣します。
自分で自分を抱きしめるかのように・・・。
体を丸めたまま、ぎゅっと両方の太ももを抱え込みました。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
幾重にも寄せる快感と、完全にとろけてしまった脳・・・。
心地よい疲労と満足感に、すべてがふわーっと満たされていきます・・・。
動けませんでした。
ぎゅうっとからだを小さくして、絶頂感の余韻にひたります。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
じっと見下ろしている男の子と、その手には、たぶんずっと録画状態のスマホ・・・。
力尽きていました。
(もう追い払わなきゃ)
自分でも、ちゃんと頭ではわかっているのに・・・。
鉛のように体が重たくなって、完全に脱力してしまっています。
抱え込んでいた太ももを放しました。
狭い運転席のシートの上で、放心したように体を投げ出します。
「はあ、はあ、はあ」
幸せでした。
(もう、好きにして)
何も出来ないほどぐったりしている自分がいます。
でも、でも・・・。
(終わりにしなきゃ)
急速に羞恥心が湧き上がってきていました。
さりげなく隠すように手であそこを覆います。
手のひらの膨らみが、敏感な部分に当たって・・・。
自分の意思とは関係なく、またビクビクッとしてしまう体・・・。
(ばかっ、馬鹿っ。イヤっ、もうイヤ)
いまだそこにいる彼の目の前で、忸怩たる思いでした。
屈辱感にまみれながら、そのまま2回目をはじめてしまいます。
「ぁっ・・ぁっ・・ぁっ」
まるで、生き恥を晒しているような気持ちでした。
男の子に見守られながら、2度目のオナニーをしている私がいます。
「ぁぁっ・・ぁっ・・ぁっ」
内気くんが、ニヤニヤしていました。
「ああん・・・」
恥を忍んで、引き絞るような声を漏らします。
「だめえ、だめえイっちゃう・・・」
あそこを弄りながら、ひとりで悶えてみせました。
コンソールボックスに左足を突っぱねて、体を捩らせます。
「いやあ、だめえ、だめえ」
今度は、すぐでした。
あっという間に絶頂が迫ってきます。
目隠しをしたまま、スカーフの中で泣いていました。
(だって、だって・・・目の前で見てるよ)
内気くんが、ニヤニヤ見下ろしています。
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ」
(イっちゃう・・・イっちゃう、見ないで、見ないでえ)
そして・・・。
「ぁぁぁっ!」
再び、私は果てました。
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」
体のどこにも力が入らず、燃え尽きた私・・・。
(だめ、もうだめ)
神経がすり減って、もはや演技を続けることも困難です。
(ごめんなさい、帰って・・・お願い、もう帰って)
まともに考えることもできませんでした。
いつまでもスマホを向けている男の子に対して、いまさら都合のいい言葉など見つかりません。
いきなり“ばっ”と首を起こして・・・。
「誰っ!?」
切羽詰まった声を放ちます。
次の瞬間には・・・。
「きゃっ、キヤァァああああ!!!」
森をつんざくような大きな声で、すさまじい悲鳴をあげる私・・・。
猛ダッシュで、彼が逃げていきました。
ものすごい速さで後ろ姿が遠ざかっていきます。
私は、顔に巻いていたスカーフを取りました。
(びっくりさせてごめん・・・こうするしかないの)
やがて聞こえてくる、スクーターの甲高いエンジン音・・・。
そのまま、遥か彼方へと消えていきます。
(私みたいな女はろくな人生を送れないんだろうな)
再び、ぽつんと孤独になる私・・・。
でも満足でした。
汗だくでした。
手早く後始末を済ませて、服を着ます。
車を出していました。
もう、精も根も尽き果てています。
(帰らなきゃ)
事故をおこさないよう気をつけながら、林道を走ります。
もとの野天温泉に戻ろうとしていました。
もう時間がありません。
でも、どうしても汗を流してから帰りたかったのです。