15年前の話です。

20時過ぎ、ビールの匂いが充満する準急列車内。
吊り革も空いてなくて、俺は両手を下ろし、おしくらまんじゅうの中で“気を付け”の状態だった。
気が付くと俺の左腕と背中にオッパイらしき感触。
振り向く勇気がなくて確認はできなかったが、後ろに立っている女性の右胸が押し付けられてるようだった。
PCMAX
俺が左の脇を少し開くと、その胸がちょうど挟まるように入ってきた。
さすがにこうなると女性はガードするか向きを変えるだろうと思っていたが、彼女(の胸)は動く気配がなかった。

ここで俺のスケベ心が脳みそをフル回転させ、ある計画を思いついた。
まずは自分の立ち位置を左にずらした。
彼女の両胸の感触を背中で味わうためだ。

(ばれないように、電車の揺れに合わせて、自然に、自然に・・・)

5分もいらなかった。
見事、彼女の両胸が俺の背中にフィットした。
彼女はやはり無反応(のように感じた)。
とにかくこの状況に、俺は幸せだった。

しばらくおっぱいの感触を背中で感じていたが、俺のスケベ心はさらに次の計画を思いつかせた。
まずは右手を自分の左脇に挟み込む。
あたかも背中が痒いかのように。
左脇の後方で、彼女の左胸が俺の背中を押し付けているが、電車の揺れでその隙間が緩くなった瞬間、さっと手刀を差し込み、そっと彼女の胸を包み込む。
決して強く揉んだりはしない。

(俺の手のひらは今、背中になりきっている。バレるはずはない)

さらに調子に乗った俺は次の計画に進んだ。

片一方だけじゃ物足りない。
両方のおっぱいを同時に味わいたい。
そのためには左手も右脇を通して右胸も・・・。
自分の両手が、その体勢から両胸に届くほど柔軟ではないことを考える心のゆとりなどなかった。

(周りから見れば単純に腕組みしてるだけにしか見えねぇよな、絶対)

時間にして30秒くらいだろうか。
彼女の両胸が俺の手のひらに包まれた。
この時点で当時の俺は、人生最高の幸せを噛み締めていた。

だが結局、無理な体勢はそう長くは続かなかった。
腕組み自体が外れて俺は少々焦ったが、周りの乗客も彼女も無反応だったため、なんとか右手だけは女性の左胸に密着させていた。
バレると困るので積極的に揉んだりはしないが、電車の揺れに合わせて押してみたり、膨らみに沿って滑らしたりはした。
なにせ俺の手のひらは今、俺の背中になりきっているのだから・・・。

しばらくその状態を楽しんでいたが、時間の経過と共に乗客が減ってきた。
周りから見ても明らかに不自然に彼女の正面に密着した、俺の背中と俺の手のひら。
馬鹿な俺でもそろそろヤバいと感じ始めた。

少し距離を取ろうか?
そうなると手のひらも離さないとダメだよな。
いや、その前に、彼女の意思で離れることも可能なはず?
しかし彼女に嫌がっている素振りはない・・・。
ひょっとして最初っからばれてたのか?
などと考えてる間も、俺の手のひらはずっと彼女の胸を包み込んでいる。

(そういえば、まだ顔とか見てないけど、まさか知ってる女?)

そう思ったら余計に怖くて顔など確認できない。
だんだん俺の降りる駅が近づいてきた。

いよいよ彼女(の胸)ともお別れかぁ・・・。
もしも彼女が降りたら一緒に降りよう。

当時の俺は考え方が短絡的である。
乗客は既に座ってる人と立っている人が同じくらいの数になっている。
なのに俺が彼女に密着しているのは、不自然極まりない。
なぜ誰にも注意されなかったのか?
この謎は未だに解けていない。

さて、降りる駅に到着したが彼女は降りない。
もちろん俺も乗り越した。

(まだこの状態を味わえるぞ・・・にやり)

しかし、そのとき近くの座席が空いた。

(ああ・・・彼女は絶対座る。さよなら、俺の幸せ、さよなら俺の青春)

ところが彼女は俺の背中から胸を離そうとはしなかった。
密着したまま体勢を変えようとはしなかったのだ。
しかし馬鹿な俺は、絶対に彼女は知人に違いないと思った。
彼女も今の状況を楽しんでるなどという考えなど、これっぽっちも浮かばなかった。

結局そこから3駅先で、何事もなかったかのように俺の背中から離れた彼女はそのままホームに降り、改札へとまっすぐに歩き出した。
俺はズボンにテントを張ったまま、彼女の後ろ姿を見送るだけだった。