大学時代の話。
今から5年前になるかな。
サークルの後輩が飲みの場で女装したんだが、あまりにもハマり過ぎていた。

俺の入っていたサークルは、学園祭の運営委員会みたいな所。
飲みサーってわけじゃないんだが、長い歴史を持つサークルだったので、上下関係は厳しいわ、飲みにコールがあるわ、まあそういう所だったのよ。
PCMAX

で、あれは俺が2年生の時の話。
その年サークルに入会した1年生は、どういうわけかイケメン揃い。
(逆に女の子は残念揃い)
渋いイケメン、武道やってる体育会系イケメン、チャラいイケメン、そして可愛い系イケメン。

うちのサークルは夏休みに合宿場に行って、そこで親睦を深めるんだよ。
まあ親睦を深めるという名目のオリエンテーションと、大学生らしい安酒の宴会。
で、1年生はこの宴会で、『飲み企画』という出し物をやらなければならない決まりがあった。

後輩(渋)「先輩達の時は何やったんスか」

俺「俺らの時はジェスチャーゲームやったわ」

後輩(渋)「参考にしまッス」

そしてこいつら、『男女逆転、笑っていいとも』をやりやがった。

体育会系イケメン→金髪のカツラを被ってセクシー系の衣装。
これは笑い要因。

渋メン→クラリスみたいな格好。
似合ってた。
それでも男なのは分かるから、結局笑い要因。

可愛い系→JKの格好。
似合い過ぎて笑うものなし。

宴会場にはピアノとか置いてあるような小さい舞台みたいな所があって、そこで1人ずつ出てくるような形だったんだが、JKの格好した後輩が出てきた時は笑いではなく、なんか変な空気になった。

「妹から借りた」という制服は、よく街で見るそれと同じで、ハイソックスにミニスカと今で言う絶対領域装備。

顔立ちは元々整って、可愛い系統だからまあ女装が似合い。
筋肉質ってわけじゃないから、太ももがプルプルしていてエロい。
一緒に見ていた同級生が、「なんかあいつ、エロいな・・・」とポツリと。
そう、エロかった。
芸能人に例えると、若い頃の宮崎あおい。
イケメン後輩軍団の中でもズバ抜けてカッコイイなあと思っていたが、まさか世の中に本当に女装が似合う男がいるとは思わなかった。

あとから聞いた話だが、頑張って太もも部分は脱毛したので肌もつるつる。
制服はシャツの上にクリーム色のセーター、ハイソックス+ミニスカートというテンプレートな格好。
元々女性でいうところのショートヘアくらいの髪の長さなのでヅラは無し。
顔はそのままでイケた。
全然イケた。

JK姿の後輩はパラパラみたいな踊りを踊って俺らを変に興奮させた。
スカートの中身がまたギリギリ見えないような絶妙な動きで、なんかもう、(本当にあいつ、男なの?)という考えが頭を占めた。
みんな酔ってたから、変にムラムラして、理性が働いてなかった。

とりあえず1年生の飲み企画はグダグダな感じで幕を閉じた。
酔ってたし、よく覚えてない。
ただ、JKが新鮮な生足で踊っていた姿だけはみんなの目に焼き付いていたと思う。

「とりあえず脱がそう」

俺と同級生はなるべく理性的な顔つきでそう話し合った。

ここで後輩のスペック。
身長165センチくらい、体型は普通。
年の離れた兄が2人がいて、両親にだいぶ甘やかされたらしく、わがままとは違うんだが、甘えん坊な男だった。
服装のセンスがズバ抜けていて、ファッション雑誌に街撮りで載ったりしてた。
まあ普段は完全に男。
甘いマスクのフニャフニャ男。
これがJKの制服着せたらハマることハマること。

俺はというと完全ノンケだったし、今でこそ男の娘ハァハァってなもんだが、当時はそんな概念は存在せず、「ホモは帰ってくれないか」と本気で思っちゃうくらいストイックだった。
そんな俺や、サークルメンバーの男全員の目を釘付けにするほど、彼の女装姿は似合っていた。

1年生は飲み企画が終わると、俺らの宴会に参加する。
飲みを盛り上げるための前座を大いに果たした彼らは、ある者は化粧を落とし、ある者はドレスから着替えた。
しかしなぜかJKは、そのままのJKで合流した。

「先輩!お疲れ様です」

「お、おう」

視線はスカートから覗く太ももをチラチラ。

「お前似合い過ぎだろw」

「そうですかねえ。みんなにそう言われるんですよ。僕だけは『このままの格好でいい』って言われちゃって」

「それで本当に来るなよ」

「えー、でも、先輩も満更じゃなさそうじゃないですかあ」

ここで後ろから俺の同級生よしお(仮名、スペック:小島よしお)が飛び出してきて、「お前、エロいんだよ、その足!」と足をむにっと掴み出した。
その掴み具合でなんとなく、(あ、柔らかいんだな)と思った。
別にエロとか関係なしに触りたくなったんだが、まあこの時は堪えた。

「スカートの中身はどうなってるんだ」と、よしお。

「さすがに男物ですよ」

「なんだよ、つまんねーな」

「女の子の穿いたらはみ出ちゃいますよw」

「ヘーイ、オッパッピー」

この間、無言で聞いてたけど、俺は別の後輩に、「お疲れ様です」と絡まれて、そっちと話をしだした。

そして1時間後。
JKは酒に弱かった。
新歓コンパではすぐ真っ赤になって女の先輩に可愛がられてたし、宅飲みに行った時は、「サワーとか飲めないですぅ」とか言う。
仕方なしに、「カルーアミルクならどうよ?」と勧めたら、「これは美味い!」ってぐいぐい飲んで、顔を真っ赤にしてぶっ倒れた。
そんなことも忘れて、飲み企画を終わらせた達成感と、周囲の男女の可愛がりでぐいぐい飲んでしまい、首の位置が定まらないくらいフラフラ。

「おい、今なら脱がせるんじゃないか、ウェーイ」とよしお。

「落ち着け。まだ早い。まだ焦るんじゃない」

JKはミニスカから生えた脚を投げ出して、壁にもたれて座っていた。
隣に女の先輩が座って話し掛けているが、ニコニコしながら聞き流している風だった、というか聞こえていないようだった。

「せんぱぁい、せんぱぁい」

JKに呼ばれて隣に座ると、女の先輩は「ちぇー」とか言ってどこかに行った。

「酔いました」

そんなもん見りゃ分かる。

「もう、寝たい、です」

そう、うちのサークルは先輩の許しが出なければ飲みの場から離脱できない決まりがある。
まあ当時はそんな厳しくはなかったが、勝手に帰られて翌日廊下で寝てたとかは困るので、人数管理も含めて、この習慣は残っていた。
で、俺は、その管理をする役目を持った係その1なわけで。

「気持ち悪いとかないか?」

「大丈夫れすー」

顔を真っ赤にしてニコニコニコニコ。

「立てるか?」

尋ねると、だいぶ怪しい足取りだったのでオンブしてやった。

(男なのに、なんでこんなに太ももが柔らかいんだよ!)

とか思いつつ、そこを触らんことには身体の固定も出来ず、その不思議な感触を維持したまま寝部屋へと移動した。
移動時にはよしおにもついて来てもらった。
ドアを開けてもらったりする補佐が必要なのもあるが、こいつは男なのか調べる腹積もりもあった。

宴会場は、合宿場の離れのホールを利用していた。
なので寝部屋は、本館、即ち一度外に出た先にある建物まで行き、階段をのぼって2階に行かなければならない。

夜中の12時くらいだったと思う。
管理人の人はすでに寝ており、基本的に全ての電気が消えている。
非常灯の明かりと月明かりを頼りに部屋へ向かう。
なんだろうなあ。
高校を卒業したばかりだと、男でも肌って綺麗なんだよな。
薄暗い中で密着してると変に意識してしまうんだ。

まあ俺は本当にノンケだった。
正直ムラムラはするんだが、それは制服が似合っているからで、男の身体そのものに性的魅力を感じることもない。
ただ、いかんせん脚がエロい。
靴下で上手く隠れてるせいもあるんだろうな。
脚だけは女にしか見えんのよ。
よしおの誘導のおかげで無事に部屋に到着。
JKを座らせる。

「大丈夫か?」

「はい、しーましぇーんwww」

あれ、こいつ、制服のまま寝るのか?

「お前、どうすんだ。制服のまま寝るのか?」

「駄目ですよ、女の子から借りたものなので」

というようなことを、へべれけな口調で伝えられる。

「駄目れすよー」

そのまま寝転がって目を閉じるJK。

「おいおい」

エロい。
とにかく脚がエロい。
ふわふわした白い掛け布団と、蛍光灯の無機質な明るさに照らされてなんだろうな。
肌も白っぽく見える。
外を移動した際に汗をかいたので、俺はびしょびしょ。
一方でJKは、なんかもう綺麗に梱包された人形みたいに四肢を投げ出し、無防備な姿で眠りかけている。
よしおの何かが疼いてるのが分かる。

「おい、ここに来てエロレベルが飛躍的な上昇を見せいているわけだが」

「ちょっとこれはなあ。エロいよなあ」

2人で目を合わせ、「おーい、JK、聞こえるか?」と呼びかける。

「ふーい」と返事があるが、ただの酔っ払いのようだ。

よしおがスカートに手をかけた。

「いいよな?」

言うが早いか、そのままバッと捲る。
色気も風情もあったものではない。
穿いているのはボクサーパンツ。
紛れもない男のそれだ。
如意棒が収納されているであろう膨らみも確認出来た。

「本当に捲りやがったw」

「やっぱ男だったわw」

なんだろうか、この時、俺とよしおは安堵から急に笑いが起きた。
罪悪感とか同性から溢れる異様な色気の反動とか、酔いの勢いとか夏の暑さとか、なんか色々な要因が重なって、(脱がそう!)という気持ちになっていた。
そしていざ現実を前にすると、湧いていた感情は全部冗談となって消え去ってしまった。

「お前、しゃぶれよw」

「やだよw」

よしおは汚いものを隠すように乱雑にスカートを元に戻した。
で、よしおは先に宴会場に戻ることに。
俺はと言うと、後輩をちゃんと寝かすというお役目があるので、それを達成すべく、しかしどうしたものかと腕を組んで考える。

「JK、いい?」

そんな感じで呼びかけたろうか。
ぱちっとJKの目が開かれた。

<続く>