「めっちゃめちゃ濡れてんじゃん」
「嘘だ」
「だからセクハラじゃないね」
「わかったから離してって」
指を折り曲げる。
「あーーだめ。だめっ」
「あ、ごめん、指抜けない」
彼女を抱え込むような歪な格好で続ける。
「うわ、大嘘っ、んっ。もう、わかった。わかったから。もう。んっ!」
懇願する調子でこっちを見てくる。
「何が?」
「ホテル行ってあげるから。ね」
耳に囁くように言ってきた。
無論、俺は応える。
「なんで?いや、いいよ別に」
「うわ・・・最悪だ・・・」
指をクイクイと動かす。
すると、さっきまでとは違ってしっかりと濡れてくる。
「あーんっ!もうっ。すっっっごい恥ずかしいんだけど!」
「いや、セクハラじゃないからこれ」
「セクハラだよ!!」
彼女の形のいい唇が半開きになっていい声が漏れてくる。
「ねえ、どうするのっ?ねえっ。もう離して」
途切れるように言ってくる。
「ここでイッちゃえば?」
「イッちゃえ」と言った瞬間、彼女はぎゅっと目を瞑った。
「だめ、絶対だめだって。誰か来たらどうすんの?」
確かに公園だったりする。
「じゃあ、どうして欲しいの?」
「離してって」
「だめ」
「ホテル・・・」
「行きたいの?」
こくこくと頷く。
「ホテル行って何すんだよ」
彼女は俺から目線を離すようにして耳元に唇を近づけると・・・。
「入れて」
せっぱ詰まった声でうーと唸りながらそう言ってきた。
「入れて欲しいの?」
「うわーーーもうっもうっ!」
足をバタバタとさせる。
「ね、恥ずかしくない?自分で言ってて」
「恥ずかしいけど」
それを聞くと、「もう、わかったから」と言って彼女は俺の腕の中に身を預けてきた。
指を抜くと彼女は慌てて自分の服の袖で俺の指を拭ってきた。
立ち上がってぱっぱと服を整えると、「びしー」と効果音付きで頭を引っ叩いてきた。
「うわ、やられた」
顔が真っ赤になっている。
「うわ、もう、すごい恥ずかしいよ」
「何気に俺も」
「ほら、行くよ。街道出てタクシー拾おう」
「え?何しに?」
そう言うと彼女は真っ赤な顔で両手を俺の頬に当てて。
「本気で言ってる?」
「あ、そうか。入れて欲しいんだっけ?」
「うわーーっもういい。もういい!みーー!もう!」
勢いよく向こうに振り返ろうとする彼女の腕を取って再度顔を近づける。
そのままの勢いで唇を合わせた。
「んっ・・・なんかさ、手練手管って感じ。慣れてる?」
「まさか」
すべてこれ、近所の公園だったりする。
タクシーから出て転がるようにホテルに入る。
暖かくなっている部屋に入って、ガチガチと歯が当たるようにキスしながらベッドへと倒れこんだ。
「酔っ払ってる?」
「俺は平気だけど」
「私は酔ってる」
うーと言いながら。
腕をなぞるようにして。
「うーーーもう、すごいかっこいい。気持ちいいっ」
そう言うと彼女はたまらないように口を半分開いて舌を出してきた。
出した舌に絡みつくように舌を絡ませてくる。
「えーと、一年ぶり?」
「・・・もっと。一年半くらいかも」
「今、出会い系とかあるじゃん」
「やだ。やりたいのにだって気分くらいあるのっ!」
「今は気分?」
答えはなくって、んーーと舌を差し出してくる。
「久しぶりで処女みたいなもんだよ。もう」
そう言って、「えい」と巴投げの要領で俺をベッドの上に引き上げてきた。
「濡れてる?」
そう耳元で囁くと彼女は唇を離して猫のように目を丸くしながら俺の下から這い出そうとした。
「どうしたどうした?」
「だめだめだめだめ。ちょっと着替える。ついでにシャワー浴びてくる」
立ち上がって風呂の方に行こうとする彼女を捕まえて、再度ベッドの中に転がした。
「わっわっ、ダメだって」
一気にスカートを捲り上げ、下着の中に手を入れる。
「うわ、濡れてる」
「だからダメだって。後で穿けなくなっちゃうから」
「じゃあ、今脱げよ」
「うん」
そう言いながらまた舌先を伸ばして、脱がせろと言わんばかりに彼女は腰を上げてきた。
脱がせるのも、俺が脱ぐのももどかしくて、それでもちゃんとゴムは装備しながら彼女に重なった。
俺は詳しくはわからないんだけれど、彼女の体は香水の匂いがした。
俺が入れた瞬間、肩をすぼめるようにしながら腰と背中をぐぐぐうっと反らせた。
「っっあーーー。は、入った?」
「根元までしっかり」
「う、あんっ、やだっ、その言い方」
「うわ、しまった」
「なによ」
「『入れて』って言わすの忘れた」
「やだもう」と言いながら彼女は俺の耳元に口を近づけて、「入れてるじゃん」と言った。
「根元まで入ってる」
リズミカルに動きながら彼女に言う。
「もう、あんっ・・・だめ、言っちゃ」
自分の動きに合わせて胸の膨らみが動いたり、彼女の唇から声が出てきたりするのを確認するように。
「すごい・・・太い・・・」
「・・・わかんの?」
というかサイズは並みのはずだ。
「・・・わかんない。でも・・・」
そう言って彼女はぺろりと舌を出すような要領で笑うと、笑いながら唇を求めてきた。
「あ、やばい、もうイキそう」
「ん、っうんっ・・・いいよ」
目線を逸らせて息を弾ませるようにして彼女は言う。
今になって恥ずかしくなったかのように両腕で胸を隠すようにする。
「えっと、今日は泊りで大丈夫?」
イキたいのと、もっと楽しみたいのが綯い交ぜになったような気持ちで聞いた。
「絶対大丈夫じゃない。んっ!うんっ!」
だよなあ。
「でも、4時くらいまでなら大丈夫」
23時くらいを指している時計に目を走らせながら、彼女はそう言って正常位の格好のまま本格的に腰を前後に動かしてきた。
それにあわせてラストスパートをかけるように俺は上下に揺さぶるように動く。
「んっんっ・・・あんっ」
彼女は集中するように目を瞑って、俺に合わせるように腰を前後に動かす。
包み込まれるその感触と、視覚的エロさにすぐ追い込まれた。
「あーーやばい、イク!」
言った瞬間、彼女は胸を隠していた手を首に巻きつけて、ぎゅーーーっと絡み付いてきた。
「やっちゃった・・・」
汗をかいた体をシーツに包めるようにして、わざとらしく後悔しているといった口調で彼女は言った。
「俺は本懐を遂げたんで」
爽やかなもんだ。
「私、彼氏以外としたのって初めてなんだけど・・・うわ、恥ずかしい」
彼女は枕に頭を埋めてぶんぶんと横に振る。
(彼氏以外ねえ)
今言ってはいけないような気がしたので、そのときは黙っておいた。
「シャワー浴びてくる」
「あ、うん」
「4時まで、だよな」
「うわ、まだやる気?」
シーツからぴょこんと顔を出してそう言った彼女はあんまり嫌そうじゃなかった。