ある日彼女が、病室で言った。
「あたし処女のまま死ぬのってイヤだなあ、ねえ今度夜這いにこない?」
その晩、実際に夜這いに行った俺を迎えた彼女は、病院の寝巻姿ではあったが髪はちゃんと整えてあり、うっすら化粧をして、下着も当時流行り始めたTバックだった。
行為そのものは少々やっかいで、彼女は自分で脚を開くこともできなかった。
彼女はわざとらしい喘ぎ声をあげて、なんとか無事終ることができた。
そのあと俺に寝巻きを着せてもらいながら、彼女は嗚咽していた。
翌日、俺の実家に彼女の母親から、
「息子さんの優しいお見舞いに感謝します。」
・・・と電話があったという。
俺はまさかと思ったが、しばらくして戦慄した。
彼女はもう、起き上がることすらできない。
トイレだって行けないからたぶんおむつの世話になっているはずだ。
では誰が・・・?
彼女の髪をとかし整えてやったのか?
彼女に薄化粧を施してやったのか?
彼女のおむつを脱がし、流行りの下着をはかせてやったのか?
それがわかったとき、嗚咽とはいかないが不覚にも涙が出てきた。
あれから8年、彼女はもはや目も動かせない状態で今も闘病を続けているという。