TVでK1グランプリをやっていたその夜、オレは、Y子と五年間の歴史に終止符を打ちつつあった。
事の発端は、彼女の告白から始まった。

「彼と寝たの・・・」
PCMAX
・・・いやあ、ある意味、K1グランプリより“リアルファイト”です。

ちなみに『彼』とは、Y子と今現在も付き合ってる彼氏のことで、当時、二人が知り合ってから1ヶ月経ってなかったんじゃないかと思う。
知り合って一ヶ月足らずの男に、彼女を寝取られた甲斐性無しって言うな!

色々な思いを込めて、オレは言った。

「彼の事が好きなの?」

黙って頷く彼女。

「じゃあ、別れるか」

敗者は去るのみ。
オレは断腸の思いで呟いた。

「でも、あなたの事も好きなの。どちらかなんて選べない」

そう言って彼女は泣き崩れた。

(・・・いや、泣きたいのはこっちだよ、Y子さん。)

だいたい、五年間つき合ってきたオレと、知り合って1ヶ月経ってない彼が、彼女の中で同格な時点で日割り計算したらオレの負けじゃん。
仕方ない、彼女の本当の気持ちを気付かせてやるのが五年間時間を共有した者の最後の務めだ。

オレは言葉を続けた。

「いいかい、君の中でどちらが大きいか良く考えてごらん」

しばし考え込む彼女・・・。
意外にも彼女が口にした名前はオレの方だった。

「じゃあ、やり直そうか?」

そんなオレに彼女は言った。

「でも、やっぱり彼の方が好き・・・」

(・・・?)

オレの方が彼女の中で大きい。
でも、彼の方が好き?

(どう言うこと?)

・・・今度はオレが考え込む番だった。

そこで、ふと彼女の視線に気付いた。
その視線を追ってみる・・・。

その先には・・・オレの下半身。

OK!謎は全て解けた!
・・・って、誰がチンチンの大きさを聞いとるちゅうねん!!!

・・・・・・・・・。

なんて言うのかな。

「勝負に勝って、試合に負けた」

そんな言葉の意味を知った、鮭25才(当時)の夏の出来事だった。
いや、何の勝負だったかは、おいといて。