4年生の頃。
あたしの彼氏さまは、卒業後に留学してしまって。
留学後1年くらいは連絡を取り合っていたんだけど、なんとなく音信も途絶え気味になり、自然消滅(?)という流れに入っていました。
(そういう噂はどこから広まるのか・・・)
リサとその彼氏は破局したという説がサークル内の通説になっていました^^;
そのサークル内に、R君という当時2年生の後輩がいました。
東北出身、ご当地では県下一番の進学校出身だそうで。
入部当初は、俺が一番だ!と、とても威勢の良い子でしたが、渡る世間は広いもの。
周りにいるツワモノに早くも飲み込まれ意気消沈。
そのまま幽霊部員になるかと思いきや、見事な転身、筆頭宴会要員に路線変更。
まぁ、とっても元気な子で、実は性格も良いし、あたしの中では高感度No.1の後輩でした。
あたしの容姿がそうさせるのか、性格がそうなのか。
特に男子の後輩からは「姐さん」と呼ばれていました。
それに呼応するように、あたしもそんな男子の後輩に対しては、名前を呼ぶときは呼び捨て^^;
R君も例外ではない。仮に「龍平」としておきましょう^^
ある日、学食で食事をしていた時のこと。
龍平があたしの席の向かい側の空席にやってきた。
「ちーっすっ!」
「姐さん!今度の土曜日ヒマっすか?ケンの家で飲むんですけど。メンバー、俺入れて5人。みんな姐さんにも来て欲しいって言うんで」
「ん・・時間はあるけど」
「マジっすか!!やった!姐さん、なんも用意要りませんから。手ぶらで来てください!」
「そんなわけいくか!後輩の飲みに誘われて、手ぶらで行けるわけないでしょ」
「申し訳ないっす!みんなすげー喜びますよ。じゃぁ、ケンの家に案内しますから、土曜日夕方6時に渋谷ってことでいいっすか?」
「うん。わかった^^いいよ♪」
龍平は声が大きいんだよねぇ。
用件済ませて去っていった彼はいいわよ。
その場に残されたあたしは「姐さん」なんて呼ばれて、しばらく周りからの好奇の目に晒された。
当日、土曜日6時、渋谷。
タンカレーのジン1本、おつまみ数点を購入し、待ち合わせ場所に。
人の目の識別能力というものは、本当にすごいものね。
目の前にいる数百、数千の顔の中から、お目当ての顔を瞬時に見つけるんだもんね。
満面の笑みを蓄えた龍平の顔だけが目に映った。
「お待たせしましたぁ!さ、行きましょう!!」
「んと、どこなの?ケンのお家って」
「たまプラっす。田園都市線ですよ」
「ふーん。そうなんだ。ここからどのくらいかかるの?」
「30分くらいじゃないかなぁ。駅からは近いし、40分後くらいには到着っすよ^^」
電車の中。
田園都市線なんて、しばらくぶり。
用賀に住んでる友達んちに行った時以来かな。
「姐さん、知ってます?ケンと美里って付き合ってるんすよ!」
「ねぇ?龍平は声が大きいんだよぉ^^;公衆の面前で、その姐さん呼ばわりはやめてよぉ^^;」
「あ、ごめんなさい^^;俺、声大きいっすか?」
「声も態度もね」
「態度もっすか!!」
「しっ!マジで、音量落として^^;」
「で?なになに、あの二人付き合ってるの?」
「そうなんすよ。2ヶ月前からなんだって。マジ知らなかったし」
「へぇ・・あたしも知らなかったなぁ」
「今日は美里も来るから、説明してもらいましょう!ところで、姐、いや・・先輩はさ・・彼氏さんと別れたってマジですか?」
「どうもそういうことになってるみたいよねぇ。お互いに、別れよう!って明言はしてないんだけどね・・・。別れちゃったのかもねぇ」
「なんか、ずいぶん他人事じゃないですか^^;彼氏は新しく作るんすか?」
「うーん。別に今は考えてないかなぁ」
「伏目がちでそんなこと言っても、説得力ないですよね」
「うるさいっ!ばかっ!」
「俺は先輩の舎弟ですから。いつでも相談乗りますよ。何でも言ってくださいよ」
「姐さんとか、舎弟とか。極道じゃないんだからさ^^;」
こんな他愛のない会話をしつつ。
だけど、おかげで退屈せずに目的の駅に着いた。
歩いて数分。
ケンのお家に到着。
呼び鈴を押すと、ちょっと赤ら顔のケンが出てきた。
「おう!龍平!あっ!姐さーーん!!」
裸足のまま玄関から飛び出て、あたしに抱きついてきた。
こいつ、もう酔ってるし・・っていうか、美里という新妻がいるのに。
「ほれっ、差し入れ。もうっ!酔っ払うの早いんじゃないのぉ~?いい加減離れろ。こらっ!お座りっ!!」
ケンは、これが好きなのよね^^;
お座り!と言われると、本当にその場にお座りするの。
「おじゃましまぁ~す^^」
「お^^美里ぉ~♪」
「きゃぁ~っ!!リサさぁ~ん^^抱きっ♪」
「おす^^コー♪」
「ちっす!先に飲んでます♪」
「おや^^香奈ちゃんも来てたのねぇ^^」
「待ってましたよぉ^^リサさんと飲むの久しぶり!」
やいのやいの・・で、2時間経過。
この2時間は、ケンと美里が酒の肴^^
「俺が彼氏だったら、絶対に姐さんを放っておかないっす!」
「そう?でも、あたしが龍平を放っておくかもよぉ^^」
「それでもいいっす!」
「っていうか。ねぇ?コーさぁ、何寝てんの?」
コー撃沈。
顔を真っ赤にして壁にへばりついている。
「あたし、そろそろ帰ろうかなぁ」
「ん?香奈んちってどこだっけ?帰り大丈夫なの?」
「結構近いんですよ^^タクっても大した金額にならないし」
「なら安心ね^^えっと・・コー、こいつどうする?」
「とりあえず、起すか?」
「おいっ!コー!起きろーーっ!!」
むにゃむにゃ言いながらコー起きる。
「寝るなら隣の部屋で寝ろぉ」
「シャワー浴びるかぁ?」
周りの声なんて聞こえちゃいませんという感じに、のそのそ起き上がって、お部屋を移動する。
「あいつ、どこ行ったんだ?ちょっと見てくる」
ケンが後を追う。
「おーい!その部屋はダメだってぇ~!寝るならこっちさ来ーい!」
しばらくしてケン戻ってくる。
「あいつ親の寝室で寝てやがって」
「そういえば、ご両親は今日帰ってこないの?」
「はい^^旅行に行ってるんですよ」
「そっか^^それで、ここが会場になったわけね」
「親には内緒ですけどね^^;」
「そっか^^」
「ねぇ?香奈、タクシー呼ぶ?」
「うーん。駅近いし、駅前で拾います」
「じゃぁ、あたしが駅まで送るよ^^」
「わぁ~い♪」
「それじゃ、送ってくるわねぇ^^」
香奈ちゃん帰宅。
戻って4人で飲みなおす。
やいのやいの・・で、1時間経過。
「姐さーん。俺じゃダメっすか?馬鹿は相手にしないってか?」
「そんなこと言ってないでしょ!ばかっ!」
そんなあたしと龍平のやり取りを見て、美里はケラケラ^^
この子は本当に笑顔が素敵。
周りを幸せな気分にさせる笑顔って素敵よね^^
ケンも本当に良い彼女を持ったものね。正解よ♪
よく笑う子は疲れるのも早いのか、美里が瞑想状態に入った。
会話の所々で、なんとなく相槌を打つけれど、そのタイミングが微妙にずれている。
マバタキして目を閉じると、しばらく目を開けない。
オネムちゃんなのね。可愛い^^
「ケン?美里、そろそろ寝かせてあげないと^^」
「あ、はい。すみません^^;」
「美里~?もう寝るか?」
「うーん。だいじょぶ、だいじょぶ・・ふにぃ」
「あはは^^ケン?美里・・・強制退去^^」
「かしこまりました^^」
美里はずるずる引きづられて、隣のお部屋へ。
ケンがお布団を敷いている。
お姫様抱っこをして、美里をお布団の上へ。
なんか、キュんってしちゃった^^
襖をシュッとしめて、ケン、再び参戦。
ここで紅一点となったあたし。
今晩はとことん付き合ってやる^^
この段階で、後輩たちが持ち寄ったビール、チューハイ等がすべて空になった。
そこで、あたしが持ってきたタンカレーの登場。
「姐さんって、タンカレー好きなんですか?」
「うん、ジンだったらこれが一番好き♪」
「他には何が好きっすか?」
「うーん。そーだなぁ。ブッカーズも好きだよぉ^^」
「なに?それって、何酒?」
「あ!俺知ってるわ。それバーボンですよね?めちゃアルコール度数強いですよね?」
「おぉ^^知ってるんだ^^うんうん。60度以上あるかな?」
「ひゃぁ!すげーっ!火~噴くなぁ、それぇ」
「火、噴いてみたい^^?」
「火でも水でも、ご要望とあれば何でも噴きますっ!」
「じゃぁ。今度飲ませてやる^^遺書書いて来い^^」
「でぇ。このタンカレー、どうやって飲むんすか?」
「んとぉ。ロックね♪ロックが一番おいしいのよ^^」
「よっしゃーーっ!」
すっかり体育会系のノリになった男2人。
そうさせた紅一点のあたし^^;
「ガーーーっ!ノドが焼けるぅ」
「ちょっと水で割ってもいいっすか?」
「うんうん。ムリすんなぁ^^」
「姐さんって、マジ、酒強いっすよねぇ。酔わせて落とそうなんて。ムリだわなぁ」
「何それ?そんな計画があったわけ?」
「いや・・その・・計画変更っす^^;」
「何に変更よ?」
「俺が落ちるから・・介抱してもらうっす^^」
「放置してやるわ^^」
「おっ♪放置プレイもいいっすよねぇ!!」
「プレイを付けるな!あほっ!」
ケン、危険信号。
目の焦点があってない^^;
「ケン?大丈夫?そろそろやめておきな^^」
「はい・・情けねぇ^^;」
「いいんだよぉ。ムリして飲むもんじゃないって。自分の限界無視して潰れる方が情けないの^^」
「すまん!!俺、もう寝るわ」
ケン、愛妻の元へ。
「しめしめ。これで姐さんを独り占めだ^^」
「じゃぁ・・さしで勝負するぅ^^?」
「勝負はイヤじゃぁ~っ!」
「こらっ!しっ!隣で2人が寝てるのよ^^;」
ここからはテンションをグンと下げて、龍平とテーブルを挟んでヒソヒソ話。
「姐さん、彼氏と離れてからもう1年でしょ?寂しくないんすか?」
「そりゃ・・寂しいけど」
「なんていうか。したくなったりしないんすか?」
「はっ?」
「あの・・エッチを・・。モヤモヤしたりしないっすか?」
「なっ、なに言ってるのよ^^;」
「いや、俺の元カノなんて、1ヶ月もしなかったら狂いそうになるって。姐さんは、1年じゃないですかぁ」
「シラフでそんなこと言えるかぁ^^;」
「えっ!!まだシラフなんすっか!!ひょえぇ~もっと飲んでくださいよぉ。自分だけズルイすっよぉ」
「わかった、わかった・・飲むから。だったら酔わせてよ」
「うーん・・じゃぁ、一気!!」
「アホか君は^^;?そうやって酔わせるか?」
龍平、「うーん」とロダンの『考える人』がそっぽ向いたような形で、しばし天井を見上げて思案中。
「姐さんの横、行ってもいいっすか?」
「えっ?突然なに^^;?」
「ダメっすか?」
「うん。いいけど・・変なことすんなよぉ」
もそもそっと立ち上がり、立ち上がったところで一旦身体の揺れを止め、若干前かがみになって、あたしの方へ移動してきた。
こいつ、結構酔ってるなぁ^^;
「姐さんって、前から思ってたんすけど・・」
「なによ?」
「嫌いだったらごめんです・・加藤あいに似てません?」
「んと。誰?それ?」
「えっ?知らないんすか?」
「知らない・・芸能人?」
「女優っす。マジで知らない?」
「芸能人分からないよぉ^^;テレビ観ないもん」
「えっ!!そうなんすか?」
「うん。小さい頃から」
「さすがだ。やっぱりお嬢は違う」
「誰がお嬢だ^^;」
「テレビネタもダメかぁ~」と、再び考え込む龍平。
なんだ?この子は話題を探してるのか?
「姐さん、すげぇいい匂いすっよね。何付けてるんすか?」
「んとぉ。今日はエルメス。地中海の庭だよ^^」
「んと・・・。分かんね^^;俺、全然ダメっすよね。男の色気ないっすよねぇ」
「ぷっ!何それ?ハタチのガキんちょが色気も何もないでしょ^^;」
「でも、テクはあるんすよ!」
「何のテク?」
「エッチの・・」
「あっそ」
「うわぁ・・ダメだぁ~、全然ダメだぁ」
うな垂れる龍平を見てたら、とっても可愛くなって^^
ちょっとキュんっとなってしまった。
母性本能なのか。
ダメダメ君にホロっていっちゃう感じ。
シラフとは言ったものの、本当は結構酔っていた。
母性本能といたずら心が混ざり合わさって・・自分でも信じられない行動に。
「龍平?」
「はい?」
龍平がボヤっとした視線のまま、あたしの方に顔を向けるなり・・ちゅっ♪
龍平の唇に軽くキスをした。
とっさに、龍平が顔を遠ざけた。
「やべぇ。姐さん、すみません!俺、そんな」
「ばかっ。謝るな」
「いえっ!すみません!本当にごめんなさい」
「よしよし^^もういいから^^」
そう言って、龍平を引き寄せて・・ぎゅっと抱いた。
龍平の気持ちには気づいていた。
龍平がサークルに入ってきた当初から、分かっていた。
6月くらいだったかな、一緒に飲んだよね。
入部当初はやけに元気な奴という印象だった君が、徐々に色褪せるように後退していくようで、それが気がかりで、あたしから飲みに誘ったのよね。
高校までは誰にも負けなかった。
常に学校のトップだった。
天才と言われて育ってきた。
それが、大学に入ったらただの人になってしまった。
本当に悔しかったんだろうね。
あたしの前で泣きながらそう言ってたね。
「ねぇ?もう負けを認めたの?仮に負けだとして・・あなたの価値ってそれでなくなっちゃうの?」
「いえ」
「上とか下があるとしてね、じゃぁ上に立ったらどうなるの?」
「優越感とか」
「優越感に、それほどの価値があるの?たかだがテストの点の良し悪しでしょ?それで味わってきた優越感でしょ?人の価値ってそれだけ?」
「いえ」
「今あなたは初めて挫折したのよ・・そこからどうやって身を起すか。挫折や失敗をどう次に生かすか。そこに真価が問われるんじゃない?」
「はい」
「じゃぁ、起き上がりなさいよ。上とか下とか、そんなチンケな世界にいないで。もっと大きな世界に行きなさいよ。あなたの真価見せなさい」
龍平もあの時のことを思い出してたのね^^
ぎゅっと抱きしめて、しばらくお互いに黙っていたら・・・。
「姐さん。俺、あの時に生まれ変わった気がします。真価見せろって言われて」
「うんうん・・分かってるって^^」
龍平、斜に構えて人を見下す感じだったのに、見事な転身よね^^
壊れキャラ^^
「俺、友達いなかったんすよ・・高校まで。でも、自分が変わったら、周りもこんなにも変わるんすね」
「点数かき集めるよりもずっといいでしょ?友達は財産だからね」
「今の自分、めちゃ好きっすよ^^」
「よしよし。いい子^^」
さらに、力を入れてぎゅっと抱きしめた。
普段はなんだかんだ悪態をついてるけれど、本当は、この子が可愛いの。
「うわ・・姐さん、マジやべぇ」
「何が?」
「胸・・マジ柔らかいっす」
「そう?触りたい?」
「えっ!マジっすか?」
「ばか。ウソだよ」
「ってか・・やべっ・・勃っちゃった」
「えっ^^;ホントに?」
「えぇ・・そりゃもう」
いたずら心炸裂。
時間も時間だし、アルコールも入ってるしで。
ここからの展開に対して、事前に自己弁護^^;
「どれどれ。」
龍平の股間へと手を伸ばしてしまったあたし。
「うわっ!」
「ホントだ^^すごいことになってるねぇ^^」
手の平をピトってあてがっただけだったけど、龍平のソコの熱が即座に伝わってきた。
手の平全体に伝わる、その存在感と熱。
その熱によって炙り出されるように。
身体の奥底から何かがジュワっと染み出すような感覚。
中指の先で、龍平のソコを、下から上へ。
「マジやべぇ・・それだけで出ちゃいそう」
「何?早漏なの?」
「違いますよ・・姐さんの手がソコにあるって思うだけで、もう出ちゃいそう」
「じゃぁ・・出すか?」