衝撃的に幕を開けた週末の夜、電気も点けずに暗闇の中たたずむ男がいる。
男は焦っていた。
蒸し暑い部屋の中で噴き出す汗は冷たかった。
PCMAX
わずかに照らす月明かりも男の心の闇までは届かない。
男は追い詰められていた。
脳裏に蘇る忌まわしい記憶が更なる深い闇へと男を導いてゆく。

男の片手には姉のパンツが握られていた。
やっちまった、パクっちまったぜ姉パンツ!

第二章スタートです・・・。
時間を少し戻します。

学校のない休みの日は、我が家に昼食はない。
昔からそうだった。
その代わり千円もらえた。

手コキ後、二度寝してしまった俺は、台所のテーブルの上にいつも通り置いてある千円札2枚・・・。

(あれ?二千円札じゃん、めんどくせぇ)

まあ、姉弟で千円ずつってこった。
姉に両替してもらってマックでも買いに・・・って・・・ちょと待て待て!

「お姉ちゃーん両替してー」なんて、いつも通りに?

いつも通り?
いつも通りってどんな感じだ?
いやまず俺から何か言ったほうが良いか?
何を?手コキのこと?
いやその話題には触れないほうがよいか?
いやいや避けては通れないだろいや、待て、しかし、でも・・・堂々巡り。
今更ながら手コキの衝撃が全身を駆けめぐる。

姉が階段を降りてきた。
思考が間に合わないまま顔を合わせる。

「あー二千円札だったでしょ、私要らないから、アンタ何か買って食べな」

「あ、はい」

姉は部屋に戻っていった。
遅れ馳せながら、史上最長の賢者タイムが俺を襲った。
生まれて初めて「アンタ」って言われた気がする。
まるで別人のようだった。

気付いたら日が暮れていた。
夕食後、洗面所でハミガキしてたら、シャワーを浴びようとやってきた姉と鉢合わせした。
俺は何も言わずに去った。
まるで他人のようだった。

気付いたら深夜になっていた。
なんだあの姉の素っ気ない態度は。
そしてそれに対抗するかのような俺の態度も一体どうしたってんだ。

シコタンって呼べよバカクソッタレ!
もうどうにでもなりやがれ!!
メチャクチャにしてやる!!!

足音を忍ばせ、獣と化した男は部屋を出て行く。
もう誰にも俺を止められない。
狂気に満ちた理不尽な怒りが沸々と沸き起こり、その矛先は姉に向けられた・・・。

正確に言うと怒りは姉のパンツに向けられた。

いや、決して笑うとこじゃない。
姉のパンツは標準装備だ。
姉の手コキが特別仕様なんだよ。
これが姉萌えのセオリー。
俺はきっと順番を間違えたんだ、だから困惑してるんだ、きっとそうだ。

洗面所に向かう道すがら、やけに暗闇が怖かった。
自分ちなのにね、ハンパない緊張感だった。
しかしあっさりと脱衣カゴからパンツGET。
ブラは結構高いって聞いてたからスルーした。

部屋に戻ってとりあえず全裸になった。
気合いを入れてオナニーするときの正装だ。
明るいと激しく自己嫌悪に陥るので、暗闇の中で勢いに任せて決行した。

頭に被って、予想以上に小さいモノだと気付いた。
身に付けたらどんな感じかと思って、穿いてみた。
勃起したチンポがハミ出した。
そのままチングリ返しの格好になってみた。
わからん、たぶん射精前の儀式みたいなもんだ。

ハッと気付いて、慌てて脱いでニオイを嗅いだ。
自分で穿く前に嗅げばよかったと後悔した。
でも勢いは止まらなかった。
猛然とシゴいたよ、烈火のごとく。

姉の手のひらの感触?
日常のスキンシップでの柔らかい胸?
オナニー後に寝てた姉の無防備な姿?
色んなものを頭に浮かべてゴチャ混ぜにして一刀両断にした。

最後はチンポにパンツ巻きつけて無我夢中で出した。
でもただそれだけだった。
気持ち良くなかった。
思い出した、朝の手コキも全然気持ち良くなかったんだ。

真っ暗な部屋が真っ黒になった気がした。

パンツなんか用済み。
もう単なる布切れ。
まだ体にまとわりついてるのが不快だった。
ガムテープでグルグル巻きにしてゴミ箱行き。
それでも嫌悪感つきまとって、ゴミ箱から取り出して、窓に向かってブン投げた。
そしたら網戸で跳ね返ってきて俺の足下に転がってきた。
もう泣きたかった。
網戸開けてもう一度ブン投げた。
夜空を切り裂いて、遠くのほうでストって音が聞こえた気がした。

(今思い返すと、決して母ちゃんのパンツでなかったことを祈りたい)

それからしばらくは、姉とは全く話をしなくなったんだ。

休みが明け、電車通学のラッシュも苦痛そのもの。
約束だったからガードはしたけど会話はなかった。
まぁもともと「仲良く一緒に登校しましょ」みたいな感じではなかったわけだが、毎朝、家を出るタイミングも違ってたし、ただ同じ列に並んで出来るだけ姉の近くにいただけだから。

タイミングが良いのか悪いのか、すぐに夏休みに入ってしまい、わずかな姉との接点も消えることになる。

姉とギクシャク、っていうかほぼ絶縁の原因に関しては、なんとなくだが整理していた。
中学時代に英語スピーチコンテストで、男尊女卑だのレディファースト云々をペラペラ喋ってた人なもんで“痴漢”なんて女性の尊厳を・・・もってのほか!
そのガードを頼んだ弟が、まさか自分に性欲剥き出しだなんて!って感じ?
当時は難しく考えすぎて引っ込みつかなくなっていた俺だった。
実際のとこ、姉の本音なんか今でもわからん。

そうこうするうちに姉からメールが届いた。
部屋でボケーっとしてるときにメール着信音が響いた。

[件名]:家族会議
[本文]:アンタの部屋に集合するから

『家族』と『アンタ』って文字が目に突き刺さった。
もう死んだと思った。

数秒後にコンコンとノック・・・。
姉が入ってきて正座した。
俺は最初から正座してた。

「足、崩そっか」

久しぶりに姉の声を聞いた気がした。
顔は見れない、ベッドに座り直す気配だけがした。
階段を誰かが上ってくる気がした。

「お風呂はいんなさいよー」

母親の声が聞こえた。

「はーい♪」と姉が応えた。

俺「え?家族会議は?」

姉「ないよ、そんなの」

俺「は?」

姉「なんとなく」

俺「なぬ?」

姉「来にくかったから、なんか理由がないと」

そこからは怒涛の姉ラッシュ!

姉「なんで最近冷たいんだ」

俺(いや、そっちこそ)

姉「お姉ちゃんのこと嫌いなのか」

俺(いや、むしろ好きすぎる)

姉「悪いとこあったら直します」

俺(いや、悪いのは俺であって)

姉「女はエッチ終わってからも優しくされたいんだ」

俺(いや、もうワケわからんし)

姉「体だけが目的なのか」

俺(いや、ちょ、おま)

姉「もうこんなのイヤだ」

俺(いや、俺もだ)

姉「仲直りしろ」

俺「はい」

姉「風呂入ったらまた来るから」

そう言い残し姉は去っていった。

とりあえず家族会議がドッキリで良かったとしか思えなかった。
しばらく上の空で過ごして、それから改めて姉のことを考えてみた。

よくわからん変な姉だが、俺はたぶんそんな姉が好きなのではないだろうか。
だから、ただ単に性欲の対象にしてしまった自分が許せなくなってきたのかもしれない。
・・・って心境をまとめて、思い切って風呂上がりの姉に一気に伝えてみた。

実際はもっとスゴくたくさん語ったけど、結構勇気を振り絞った告白だった。
告白っていっても愛の告白とかじゃなく、心境の吐露というか、自己分析の結果を発表したというか・・・。

けれども姉からは一蹴された。
一番身近にいる異性に抱いた好奇心を、恋愛感情と錯覚しているだけだって。

姉「こんな素敵な女性が姉であったことに心から同情いたします」

姉は髪の毛乾かしながら、そんな言葉を添えてきた。
笑うしかなかった。

俺も風呂入って戻ってきたら、姉がバイオハザードで犬のゾンビに追いかけられて悲鳴をあげてた。

「やっつけて」って言われてバトンタッチ。

胡座でコントローラーを握る俺の膝元で、姉が寝ころんで見てた。
キャインとか犬の断末魔が聞こえて、姉にコントローラーを返そうとした。
姉はコントローラーを受け取らず、俺のチンポに手を伸ばす。

「触ってるとなんか落ち着くなコレ」とか笑ってやがる。

不思議と俺の心も穏やかで、悶々としたモノは感じない。
色々と抱えてたものを素直に話したからなのか。
いや、もともと、過剰なスキンシップはあったかもしれない。
結構最近まで一緒に風呂入ってたし。
それでも勃起はしてしまうわけで・・・。

姉「あーあ、柔らかいほうが好きなのに」

俺「俺の意志とは無関係」

バイオハザードに集中、なるべく気を逸らすよう努める。

姉「んー、これはなんだ、やっぱイカせてあげたほうがいいものなの?」

姉よ、せっかく逸らした気がドンドン戻ってきてるよ。

姉「今思ってること、お姉ちゃんぶっちゃけていい?」

俺「・・・うん」

姉よ、気がドンドン集まってきてるよ、もう元気玉できちゃうよ。

姉「お互い風呂も入ったし、なんかこれはヤバいなって感じがしない?」

俺「ははは・・・はは・・・」

(どういう意味?ねえどういう意味なの!)

俺ゾンビに囲まれまくってショットガン連発、上半身だけで這いずり回るゾンビが俺の足元にしがみついてるし、コレ怖すぎ。

姉「フェラとかして欲しい?」

(そういう意味?ねえそういう意味だったの!)

姉そのセリフでゴロゴロ寝返りうって膝元にしがみついてるし、ソレ可愛すぎ。

俺「・・・わかんない、いや・・・しなくていい」

正直な気持ちだった。

(ってオイ、聞いてないし、しかもすでにチンポ取り出してるじゃん。ちょ・・我慢汁に興味持つな!その興味津々な表情ヤメろ!)

姉「・・・良かった、してって言われたらどうしようかと思った・・・」

聞いてたのか。

姉「でも、イカせては欲しいんでしょ?」

姉、脚パタパタさせながらニコニコ顔で俺の顔を見上げてる。
手の動きはシコシコにシフト。

なんかしばらく話もしてなかった反動なのか、一気に距離が縮まってた。
風呂入る前に「お姉ちゃんのこと嫌いなのか」とか「悪いとこあったら直します」とか言われたのが精神的にグッときてたし、玉袋とケツの間がキュイーンってなってきた。

俺「ちょっとヤバいかも」

姉の手が止まる。

姉「どうしよ、続けたほうがいい?」

手コキ再始動。

姉「あとどのくらい?」

(可愛いんですけど、そのセリフ)

俺「ああああ」

手コキ停止。

「イク?」

(ぐはっ、なにその天然焦らし!)

姉「どうしよ、どうしよ、いつ出るの、このままでいいの?」

姉の焦りがリアルに伝わる。
考えてみたら、先日の手コキだってイカせようとしてたわけじゃなかったんだよね。
ニギニギしてただけだし。
結果的に俺が勝手にイッただけ。

俺「ヤバい、ティッシュ!」

姉「え?」

俺「飛ぶ、絶対ヤバい、飛ぶ!」

姉「ええっ!?」

もういいや、って諦めて発射。
ドーン、ドドーン、ドンドドーン。
やべプレステに着弾、ゾンビも驚きの飛距離。

姉「飛んだ・・・」

姉、呆然。
そんな姉を尻目にしばし余韻に浸る俺。
そして止まった時間が動き出す。

姉「『ヤバい』とか『飛ぶ』とか、専門用語難しすぎだよ」

ティッシュでプレステを拭きながら姉が呟く。

俺「だいたいわかるでしょ、感覚的に」

チンポを拭いてトランクスにしまう俺。

姉「わかんないよ、お姉ちゃん処女だもん」

困ったような顔をする姉。
そんな素直なセリフも言える人なんだなって意外に思った。

世の理は全て知ってますって感じだったから。
若くして何でもかんでも知り尽くしてしまって、その上でこの世界にちょっと辟易してしまっているような印象もあったし、ちょっと孤独で孤高な人だと思ってた。
事実、かなり周囲から浮いてた時期あったしね。

姉「え?シコタンって童貞じゃないの?」

俺「童貞です・・・」

姉「だよね、安心した」

意味深なセリフだが、バカな弟は愚者タイムでウハウハなのでスルー。

姉が処女なのは薄々気付いてはいた。
彼氏すら出来たことないだろうなって思ってた。
軽いノリでヤッちゃうよりは、処女のほうがいいんじゃないかと漠然と思ってた。
まぁ弟には全く関係のないことだったワケだな。

姉「このままシコタンとエッチしちゃったりするのかな?」

まぁ弟にも全く関係のないことではなくなってきたワケだ・・・。

俺「俺っ!?」

爆弾発言にドキッ!としている俺だけど、すでに蚊帳の外。

姉「痛いのキライなんだよな、注射とかもうホントやだ」

俺は、姉が、自由人すぎてヤダ。
浮き世離れしたクールさやドライな言動が目立つ反面、ガキみたいに無邪気なとこがあって、男を逆に近付けなくさせてんだろうなって思う。
でもそこがまたこの人の魅力なんだろうとも思う。

今更ながら「メール、びっくりさせてゴメン」って姉が言った。
どうやらそろそろオネムの時間らしい。

「好きな人とかいないの?」って質問してみた。

姉「んーお姉ちゃんたぶん、男に興味ないんだと思う、つかむしろ嫌いかな?」

自分でも半信半疑って表情を浮かべて立ち上がる。

姉「でもシコタンは好きw」

去り際にちょっかい出しましたって感じで微笑んで、姉は部屋を出て行った。
このときのセリフの真相は数年経った今でも現在進行形で謎のまま。

未来を知る由もないこのときの俺は、姉の笑顔を見送った後、抱き枕を相手に「ウオーウオー」って藻掻いてた。

『恋愛感情は錯覚だ』とバッサリ切り捨てられたことで、逆にスッキリと射精できたっぽかった。
一回目の手コキとは比べものにならない快感が思い出され、満たされてゆく。
朝勃ちではないチンポを触られたという充足感。
姉の手で弄られ勃起したってことに価値を見出していた。

暑く、そして熱い夏休みはまだ始まったばかりだった。

第二章『パンツ泥棒奮闘編』[完]