その日から俺は真面目に読書部に顔を出した。
本を読むためじゃなくて先輩のご機嫌取りだ。
先輩の心変わりが怖かったから、とにかく色々と部活の手伝いをして点数を稼ごうというわけだ・・・。
PCMAX
まさに屑である。

本の整理や本の修理など、先輩を手伝ってみて分かったが、中学の図書室とはいえやる事は結構沢山あるし、本の整理や図書室の掃除となると結構な重労働だった。
顧問の先生はもうすぐ定年のおばあちゃんのような先生だったので、こういう事は全部タケチー先輩が一人でやっていた。
何人か読書部の他の先輩も居たけど、休みの日まで図書室に顔を出して、色々と仕事をこなしていたのはタケチー先輩だけだった。

ある日の土曜日、グラウンドの野球部くらいしか生徒が居ない校舎で俺とタケチー先輩は図書室の掃除をしていた。
先輩も少しずつあの事を許してくれてきていた。

「私も年頃の男の子をいきなり家にあげたのがまずかったよね・・・」とか、先輩はそういうふうに考えちゃう人だった。

そんな事もあってか、なんかむしろ俺と先輩は前より仲良くなってた。
どこか俺を怖がる風ではありつつも、前より格段に俺とハッキリ喋ってくれるようになった。
最初は俺の質問に彼女が答える感じで9:1という感じが、最近は6:4という感じで結構先輩の方から色々と質問されるようになっていた。

季節は7月夏休み真っただ中、読書部に通ってくるのは日に1~4人。
多くが宿題や自由研究の資料を見に、一日中いるのは俺とタケチー先輩くらいのものだった。
先輩のおかげで俺の『夏休みの友』は順調に消化されていた。
今までにないほどハイペースだ。
先輩も宿題や読書をして過ごし、二人でしりとりとかして遊んだ。
俺が毎日コンビニで買った弁当を食べているのを見兼ねて、先輩が弁当を作ってくるようになった。
凄く可愛い弁当だったが、美味かった。

「はぁ・・・うめぇ・・・うちの母ちゃんと全然違うわ・・・先輩料理上手ですね」

可愛いピンクの弁当箱にかぶりつきながら言う。

「私の家、母子家庭だし、お母さんが家事できないから・・・」

頬を微かに赤く染めて先輩が笑う。

「そっか・・・先輩大変だったんですね」
「最初はね、でも、もう慣れちゃったよ」

「そういうもんですか?」
「そういうものですよ」

ふふっと少し寂しそうに笑う先輩が儚げだった。

「なんか困った事あったらいつでも言ってくださいね、何でも協力しますから!」

「うん、ウラキ君のおかげで本の整理とか修理も沢山できたから凄く感謝してるよ」

こうして書くとなんか付き合ってるように端からは見えたかもしれないが、当時の俺たちはそういう意識は無かったと思う。
俺はそうだったら良いなと思ってたが、正直最初にあんな事をしてそんな関係を望むなんて資格がないと思ってたし、今のように普通に喋れてるだけマシだと思ってた。
先輩の話はほとんどが読んでいる本の話。
正直どういう話だったかは興味がないので覚えていないが、とにかく本の話になると先輩はよく笑い、よく喋った。
だから俺も興味がないくせによく話を振っていた。

夏休みももうすぐ終わりの8月末。
宿題を全部片付けた俺と先輩はその日も図書室の戸締まりをして帰ろうとしていた。
ところがタイミング悪く雨が降り始めた。
土砂降り・・・しかも雷だ。

傘を持って来なかった俺たちは、仕方なく校舎の屋根の下に座って少しでも雨が落ち着くのを待った。

「よく降るね・・・天気予報だと晴れだったのに・・・」

「・・・」

それっきり二人の会話がなくなった。
理由はわかってる。
二人とも同じ事を思い出していたから。
あの雨の日の事を。

二人無言のまま、あの日と同じ道順で帰る。
あの日俺と先輩をずぶ濡れにした水たまりは、あのあと道路の改修工事で綺麗に道丸ごと新品のアスファルトに変わっていた。

二人黙ったまま歩く。
何度も何か言おうとしたけど、全部やぶ蛇になりそうで言葉に詰まる。
二人ともどう始めても最後は結局あの日の話に繋がりそうで怖くなっていたと思う。
お互い必死に忘れようと、無かった事にしようとしてきたのかもしれない。
それは全くお互い違う理由からそうしてきたはずだったのに・・・。

「あのさ・・・」

「えっ・・・」

それでも何か無理やり話をしようと先輩の方を初めて見た時・・・。

「・・・」

先輩の目があの日の先輩の目に見えた。
たぶん先輩も同じように俺の目があの日の俺の目に見えたと思う。
だって先輩は俺を見た瞬間に何か蛇睨まれたカエルのように固まってしまって、なんだが俺が考えてる事も先輩が考えてる事も、お互い筒抜けになった気がしたから。
結局お互い何も言えないまままた歩き出した。

心臓が早鐘を打って今にも口から飛び出そうだった。
それは今から自分がやろうとしてる事に対してか、あるいはその結果に対して絶対の自信があったからなのか分からないけど、その日俺はいつも「それじゃあ」と言って別れるはずの曲がり角を曲がらず先輩の後ろを付いていく。
先輩は曲がり角で曲がらず自分の後を付いてくる俺に気がついていたけど、何も言わなかった。
少し不安そうではあったけど・・・ビクビクとまるで獣を怖がるようなそれとは違っていたと思う。

二人そのまま並んで歩く・・・。

先輩のアパートに着いた時間は17時過ぎくらい・・・。
先輩のお母さんは今日も遅い。
二人アパートの階段を上がり、先輩はポケットから鍵を出して開ける。

別に「どうぞ」とも「入って」とも言われていないのに、俺は当たり前のように先輩に続く。
先輩は無言で俺を家に通す。

ただ、先輩の名誉(?)のために言っておくが、先輩はたぶん決してこれから起こる事を正確に予測して、全てを許して認めていた訳じゃないと思う。
そこには、諦めとか怒りとか迷いとか、色んな感情があったんだと思う。
そこにはたぶん彼女自身もまだちゃんと自覚してない、俺への気持ちとかも勿論あったんだと思う。
レイプ紛いの俺が言うと凄く自分勝手な解釈だけど、やっぱり本当に嫌だったらとっくの昔に先輩は誰かに話してただろうし、こんな風にはしないだろう・・・。
幾ら先輩が気が弱くたって、あんな風に楽しく話したりは出来ない。
ハッキリしてる事は、そんな繊細で壊れやすい彼女の気持ちが、しっかり定まるまで俺が待てない、どうしようもない子供で屑だったって事。

玄関で靴を脱ぎ、先輩と二人で真っ暗な先輩の部屋へ入りフスマを閉める。
薄暗い和室の狭い部屋に勉強机とベッド・・・全体にピンク系の色が多い。
如何にも女の子らしい可愛い部屋だった。
カラーボックスの本棚には先輩の好きな作家の本が沢山並んでいる。

暗い部屋のまま、俺は先輩を後ろからベッドに押し倒す。
ボフッと先輩は倒れる。
抵抗など無意味だと分かっているかのように、先輩の体は力なくベッドに横たわり、寂しそうに虚ろに俺の目を見てる。
俺はその目を見ないようにして先輩に覆い被さってキスをする。
先輩は抵抗するわけでもなく、しかし積極的に答えるわけでもなく、ただ糸のキレた人形のようにされるがまま。
セーラー服を脱がせ、下着を強引に剥ぎ取って胸に手を当てて、乱暴に揉み先端に口を付ける。

「あっ・・・」

初めて先輩の声が漏れる。
俺にはそれがまるで神様の許しの声に聞こえた。
夢中で何度も先輩が反応するたびに同じように繰り返した。
先輩は声を噛み殺そうとしていたけど、それでも声が漏れた。
俺は自分のシャツも脱ぎ捨てて先輩を抱き締める。
小さくて華奢な先輩の体は驚くほど軽くて簡単に持ち上がる。
先輩の手が力なく俺の両肩に置かれる。

「先輩・・・大好きです・・・」

先輩は何も言わない。
ただ諦めたような・・・寂しそうな・・・分からないような・・・迷っているような・・・涙目だった。
キスを繰り返し、無我夢中で先輩の中に入った。

「くっ・・・」

初めて入れた時、先輩は苦しそうに呻いたが、その後は何も言わなかった。
気持ち良かったとは思えない。
ただ、入ったと思った時にはすでに射精していた。
その後は何度も女を、先輩を確かめるように繰り返し繰り返し犯した。
たぶん先輩は気持ちよくなんかなかったと思うが・・・。

その後、二人でシャワーを浴びた。
古いお風呂で俺が使い方が解らなかったから一緒に入っただけだが、俺はもう開き直っていた・・・。

(抵抗しない先輩が悪い)

むしろ先輩も心のどこかでこうされる事を望んでいるのでは?とすら思っていた。

明るい場所で見る先輩の体は、白くて綺麗な白い花のようだった。
お風呂場で、俺は仁王立ちのまま先輩を自分の前に跪かせてしゃぶらせた。

「先輩、口でしてください」

そう言うと、先輩は一度だけ俺を見上げて驚いた顔をした。
けどその後は無言で俯いて、恥じらいと戸惑いを浮かばせた表情で、そっと口づけしてしゃぶり始めた。
拙くてとても気持ちがよかったとは言えないけど、俺の言葉に素直に従い、必死に物にしゃぶりつく先輩の表情に俺はサディステックな満足感を感じていた。
先輩を支配してるという満足感で俺はあっという間に射精した。

「ケホッ!!ケホッ!!」

口の中で出されて先輩は驚き咳き込んだが、「先輩、ちゃんと飲んでください」と言うと涙目になりながら必死に飲み下そうとしていた。
ほとんどタイルに溢れてしまっていたけど、先輩が自分の精液を飲み干す姿を見て俺はまた満足した。

狭い湯船に入り、乱暴に先輩を抱き寄せてキスする。
唇のキスはただくっつけるだけだけど、舌を入れるキスだと先輩は微かに舌を動かして応えた。
単に条件反射だったのかもしれないが、これが内心俺を受け入れ始めているというサインにも思えた。
あくまでも表向きは拒みながらも、どこか俺を受け入れてしまう彼女の心理だと思い始めていた。

悪魔的に倒錯的に竹内千枝子という女の子を自分の物にした。

そんな自分に酔っていた。
二人で十分に温まっていると先輩が初めて口を開いた。

「あの・・・ウラキ君・・・もうすぐお母さんが帰ってくるから・・・」

とても言いにくそうに、でも言わないといけないという切羽詰まった感じだった。
まあ当然だろう・・・この状況を説明する事は俺にも無理だ。

「分かった・・・」

俺はそう言うと風呂場から上がる。

俺が脱衣所で体を拭いていると、先輩が俺の背中を自分の持っていたタオルで拭き始めた。
たぶん母親が帰ってくる前に早く体を乾かして俺を帰したかったというのもあるかもしれない。
でも、どこか彼女の拭き方には愛情があるようにこの時の俺には感じられた。

俺はそっとまだ濡れたままの彼女の方に向き直り、できるだけ優しく抱き締めた。
やはり今度も彼女はそれにやんわりと応えるように微かに、抱き締め返してきた。
目を見ると怯えた表情ではない・・・でもどこか俺の心の中を伺うような目だった。
キスしようと顔を近づけると、受け入れるように自然に先輩はふっと目を閉じた。
普通のキスをして俺は服を着る。

「それじゃ」

俺が玄関でそう言うと、「うん・・・」と短く先輩が答える。

もう、今日で俺達の関係は終わりかもしれない・・・。
このまま帰ったら、二度と彼女は俺の前に姿を見せないのではないか。

嫌な想像が頭を巡ってどうしてもドアノブを回せない。

しかし、時間が時間だ。
もうすでにいつ先輩のお母さんが帰ってくるか解らない。
俺は意を決してドアを開け、外に出た。

振り返り、締まるドアの向で先輩が言った。

「また明日・・・」

彼女のその言葉で俺は家に帰る事が出来た。

ふと夏休み図書室で聞いた先輩の話を思い出した。

『人間は許される事で生きていける。人間は生きている限り許され続けている』

そう言った偉い人が大昔にいたらしい。
誰だったかこういう言葉だったのか、先輩の解釈なのか解らないが、俺はまさに先輩に許されていた。
あんなに酷い事をしたのに、何度も傷つけたのに、先輩は今日もこうして俺の前で静かに本を読んでいる・・・。
心なしか今日の俺と先輩は、むしろ俺の方がショックを受けているように思える。
まるで昨日の事は何も無かったかのように先輩は図書室に現れた俺に「おはよう」と言い、今もこうして穏やかな表情で大好きな本を読んでいる。

俺は勿論先輩に嫌われたい訳じゃない。
でも、もっと何か文句の一つでも言ってくれてもいいだろうと思った。
あんなに酷い事をしたんだから、もっと自分の気持ちを素直に俺にぶつけて欲しかった。
対等に遠慮なんかせずに普通のそこらへんのキツイ女の子みたいに「変態」だとか「馬鹿」とかでもいいから。

そんな事を思いながら、俺は図書準備室の床の上でいつの間にか眠っていた。
昼食の後の心地よい日差しの匂いと風だった。

ふっと目を開けると、先輩が俺に寄り添うように眠っていた。

「すー・・・すー・・・」

可愛い寝息だった。

俺は先輩のメガネを、先輩を起こさないようにしてそっと外す。
人見知りで、内気、思った事がはっきり言えない。
頼まれると断れない・・・話し相手と言えば俺か母親くらい・・・。

俺はこの女の子の弱さにつけこんだ気がしていた。

「私も寝ちゃった・・・」

優しい、伸びやかな声にハッとする。
いつの間にか千枝子先輩が俺を見つめていた。

「メガネ返して・・・」

いたずらっ子を窘めるような優しい口調だった。

「やだ!!」

「えっ・・・あっ・・・」

俺は先輩のメガネをポケットにしまうと、誰も入って来れないように資料室の鍵を閉めてカーテンを引く。

「ウラキくん・・・」
「先輩裸になって・・・」

「えっ・・・」
「早く!」

俺の声にビクッとなった先輩は、俯きながら微動だにしない。

「俺の事が好きなら脱げ!」

酷い事を言っている、自分でも分かっているのに止められない。
嫌われたくないのに、嫌われるような事ばかりしている。
先輩はゆっくり俺の前で少しずつセーラー服を脱いでいった。
恥ずかしそうに俯いて・・・。

「下着もだ」

その言葉に彼女は戸惑いは見せながらも、意を決したようにブラを・・・そしてショーツを脱いだ。
それは俺の人生でも一番の幻想的な景色だったと思う。
暖かい午後の日差しが白いカーテン越しに差し込んで、資料室の棚の間に立つ俺と裸の千枝子先輩を照らしている。
窓側に立つ先輩の白肌は光を反射して、まるで後光が差しているかのようだった。
綺麗だった・・・綺麗すぎた。
その美しさを自分が今から汚そうとしている事を想像して、それだけで射精しそうになる痛いほどに猛り、ズボンを押し上げる。

「口でして」

「・・・はい」

俺の命令に彼女は素直に答えると、仁王立ちの俺の前に跪いてズボンを脱がし、パンツを下ろして咥えてくる。

「あっうっ・・・」

暖かい滑りが先端を包むと自分でも恥ずかしくなるほど高い声が出た。
勿論未だ技術的な事はからっきしだが、先輩の口の中は暖かくて昨日よりはるかに情熱的だった。
一生懸命に俺の猛りを覚まそうとしてくれるように尽くしてくれる。

「うっぐっ・・・」

先輩の頭を掴み、喉の奥に突き刺すように思わず腰を振り込む・・・。
先輩は苦しそうにするが逃がさない。
先輩は射精を口の中で受け止めると、ゲホゲホとえずきながらも懸命に飲み込んでいく。
俺の精液と自分の唾液、そして鼻水や涙で崩れていく先輩のドロドロの顔を見て、俺は射精を伴わない絶頂感に似たような快感に襲われた。
俺は先輩を壁に押しつけてお尻を突き出させると、後ろから強引に犯した。

「あっ・・・くっ・・・」

苦悶の表情から昨日の今日できっとまだ破瓜の痛みが残っていたのだろう。

しかし、それに反して先輩のそこは確かな潤いがあった。
俺がペニスを突き入れるたびに先輩は耐えるような声を堪えて自分の手の甲を噛んだ。
パンパンッという二人の下半身がぶつかる音が部屋に響く。

(そういえば避妊してない・・・)

今頃その事に気がつく俺。

しかし、この状態になってはもはや途中でやめるなんて事は無理だった。
そのまま俺は先輩の中にもう一度強く突き入れて、先輩の奥に射精した。

事が終わった後、俺は先輩の脱いだスカートからポケットテッシュを取り出して先輩の顔やアソコを拭いた。
先輩はその間もぐったりして床に横たわっていたが、俺が自分のズボンを履き直す頃には起き上がり、自分の服を着始めていた。
その日はそれっきり二人とも会話らしい会話はなかった。
ただ、俺が窓際に座って外を見てる間、先輩は何も言わずに俺の隣に座っていた。

時間が来て二人で図書室の鍵を閉めて帰る。
何か言わねばと思うのに何も言葉が出てこない。
沢山言いたい事があったはずなのに、窓際に座り、隣に彼女の気配を・・・視線を感じながら沢山色んな言葉が湧いて出たのに・・・結局言えないでいる。
今となっては何を言っても全部嘘にしか聞こえない気がしていた。

自分が一番自分の言葉が信じられないでいる。

そんな時だった・・・ふっと先輩が俺の顔にハンカチを当てた。

「涙・・・」

俺はいつの間にか泣いていた・・・。

「ぐっ・・・千枝子・・・俺は・・・お前を・・・うわぁあああ」

俺は先輩を抱き締めながら大声で泣いた。
まるで母親に泣きつくガキみたいだった。
そんな俺を小さい体で先輩は優しく、そっと背中をポンポンとあやすようにして、「大丈夫・・・わかってるよ・・・」と何度も言ってくれた。

夏休み明けの下校中、俺は正式に先輩に告白した。
ちゃんと付き合いたいと。
先輩は「今更何言ってるのよ、本当不器用なんだから」と笑った。
そして「やっぱり私と一緒だね」と続けた・・・。

終わり。