俺の大学時代の話。
バイト先の友人である鈴木と俺は同じ年で仲が良く、しょっちゅうつるんで遊んでた。
大学1年の正月明け、新しいバイトが入ってきて、それが女子高生4人組。
美幸、純子、美奈、真紀だった(みんな仮名)。
全員高校1年生で俺たちとは3歳違いだが、この頃の3歳違い、それも大学生と高校生では大人と子供という感じだった。

そんな中、俺は徐々に美幸に惹かれていった。
美幸は可愛い4人の中でも飛び切りの美人。
ふっくらした輪郭に大きくて可愛い眼。
化粧をしなくても色っぽい唇に腰まで伸びた黒髪。
スタイルも俺好みのちょいぽちゃで、身長も150センチあるかないか。
そのくせ胸は大きくて、90のDカップはあっただろう。
いつもハキハキしていて、ちょっとした下ネタにも明るく返せる性格。
俺の理想にかなり近かった。

バレンタイン近くのある日、鈴木と美幸がどうも怪しい感じがしたので純子に聞いてみたら、「鈴木さんが告ったらしい」とのこと。
(やられた~)と思いつつ、こればっかりはしょうがない。
鈴木が強引に迫ったならまだしも、普通に告って美幸もそれを受け入れたんだから。
その後、俺は鈴木に気取られないよう、また美幸とも変にギクシャクしないように、必死に平静を装いながら接していた。

春休みに入ったある日、鈴木から、「4人で遊びに行かないか」との誘いがあった。
メンバーは俺と鈴木と美幸と純子。
美幸と純子はバイト先で知り合ったらしいが、意気投合して今や親友なんだとか。
その日は俺の運転する車でドライブしながら景色を見に行ったり、ショッピングに行ったりと、仲の良いグループ交際の様相だった。
純子も見た目は大人し目で積極的に話をする方ではないが、こちらの振った話にはきちんと乗ってくる性格で、印象は悪くなかった。

夜になり居酒屋→カラオケの定番コースに入ると、鈴木と美幸はいちゃいちゃしはじめて、どう見てもバカップル。
鼻の下を伸ばした鈴木は初めて見たが幸せそうだった。
俺と純子は何となく付かず離れず、俺は特に意識せず、いつもと同じ感じで接していた。
カラオケの途中、鈴木と美幸が2人で部屋を出ていった。
残された俺は(なんだかな~)と思いつつも純子とデュエットしたりして盛り上がっていた。

ふと曲が止まった時に純子が、「あの・・・」と話しかけてきた。

「ん?」普通に返す俺。

「え・・・と、その・・・」

言葉に詰まる純子。

「どした?」

ちょっと俯き加減になっていた純子を覗き込む格好で聞く俺。
俺と純子の顔が同じ高さになった。
すると同時に純子はいきなり俺にキス!
慌てて顔を離す俺。

「どうした?いきなり?」

驚く俺に純子は、「好きです」とか細い声で告白してきた。
俺はびっくりして、「ええ~?俺?」と聞き返すのが精一杯。
頷く純子。
少し重たい空気が部屋を支配した。
返答に困る俺。
俯いたまま動かない純子。
恥ずかしながら、この歳までキスは経験あるが、それ以上は無し、女の子から告白されたのも初めてだったため対処に困った。

とりあえず純子を座らせ、俺も隣に座ってコーヒーを飲んで、(落ち着け俺、こういう時はどうするのがベストだ?)と自問自答を繰り返す。
純子は相変わらず黙ったまま俯いている。
俺からの返事を待っているんだろう。
俺は高速回転で状況を整理していた。

1.俺は美幸に惚れていたが、美幸はすでに鈴木と付き合っている。
2.今でも美幸のことは好きだが、鈴木と喧嘩してまで取り合いたくはない。
3.純子は見た目は地味だが顔つきは整っていて、垢抜ければ可愛いかも。
4.純子と話をしている時、まるで妹に接しているかのような親近感が持てた。

以上を総合的に判断した俺の口から、「いいよ、俺も純子のことを可愛いと思っているし」との言葉が発せられた。
すると純子は思いっきり嬉しそうな顔で、「ホントに?!ホントに?!」と眼を輝かせて近づいてきた。
こうなると俺も止まらない。
肩を抱き寄せ、「ホントだよ」と顔を近づけて純子のほっぺに軽くキスをした。

しばらくして鈴木と美幸が戻ってきた。
俺と純子が寄り添って座っているのを見て、「やっぱりそうなったね~」と美幸。
後から聞いた話では、このカラオケでの告白は美幸と純子で計画して、鈴木はアドバイス役だったらしい。
こうして俺は純子と付き合うようになった。

5月の連休、俺と純子は付き合いだしてから1ヶ月ほど経過。
その間、キスは何度も繰り返し、服の上からだが胸を触ったりしていた。
しかし純子はまだ高校生だし、性格的にもなかなか踏ん切りがつかない様子で、まだエッチまではいってなかった。
GW中には進展するだろうかと思っていたのだが、バイト先の人手が足りないのと、純子は部活が忙しく、残念ながら2人でゆっくり会う時間は持てなかった。

GW2日目、バイトから帰ってきてシャワーを浴び、テレビを観ていると誰かが尋ねてきた。
覗き窓から見ると美幸が立っていた。
急いでドアを開けると、ちょうど雨が降り出したらしく、美幸の髪や肩は薄っすらと濡れていた。

「どうしたん?」と聞く俺に、「ちょっと上がらせて」と美幸は部屋に入ってきた。

以前にも鈴木と純子を交えて4人で俺の部屋で食事をしたことはあるが、2人きりは初めてだった。
ちょっと緊張した。

タオルを出して美幸に渡しながら、「どうしたん?急に」と聞くと・・・。

「なんか鈴木さん、最近おかしくて。前は休みの日は毎日会ってくれてたのに、最近は『友達と約束がある』とかってあんまり会ってくれないし。今日もデートの約束だったのに、いきなり友達とパチンコに行くとか言ってドタキャンだよ!」

そう言って怒り出した。

「デートをすっぽかしてパチンコはないだろ?」

鈴木の性格はよく知っている。
俺はそんなはずはないと思って聞き返した。

「うん、パチンコじゃなかった。あの人、浮気してた!」

「は?浮気?何言ってるん?鈴木に限って絶対ないってそれは」

「だって私、見たんだもん!鈴木さんが女の人と楽しく買い物をしてるところ!」

どうやらドタキャンを食らった後、街中をぶらついていたら、鈴木が女子大生風の女とデパートに入っていったところを目撃し、後をつけたらジュエリーショップで何やら買い物をしていたらしい。
俺には信じられなかったが、美幸が見たと言うのだから間違いはないだろう。

「林さん(俺・仮名)は知ってたの?」

「知らない知らない。知ってたら止めてるよ」

「ホントに?男同士で何か隠してるんでしょ?」

「ちょっと待って、いくらなんでも俺が美幸に嘘つくか?」

「だって男同士の友情の方が強いでしょ?」

確かに相手が美幸じゃなかったら、鈴木をかばったかもしれない。
しかし相手は、一時期惚れていた美幸である。
ちょっとした喧嘩とかなら口出しはしないが、本当に浮気なら許せない。
しかし俺が美幸に惚れていたことをこの時点で言うのは自殺行為でしかない。

「俺は何も知らないし、昨日だって鈴木は、『明日は美幸とデート』って嬉しそうに言ってたし」

美幸には俺が鈴木をかばっているように見えたんだろう。

「そういうふうに鈴木さんに言ってくれって頼まれているんでしょ!」

どうやって美幸に信じさせるにはどうすればいいか考えたが、いい案が浮かばない。

「黙るってことはやっぱりそうなんだ」

美幸が軽蔑気味の眼を俺に向けた。

(なんとかして誤解を解かなければ・・・)

その思いからつい言ってしまった。

「俺は前からお前のことが好きだった!けど鈴木と付き合ってるから言わんかっただけや。その俺がいくら親友の頼みでもお前に嘘をつくわけがない!」

一瞬きょとんとした美幸。
溜まっていたものを吐き出した俺。
2人は沈黙した。
最初に口を開いたのは美幸だった。

「私のこと好きなの?じゃあ純子は?」

「・・・」

言葉に詰まる俺。
取り繕う言葉が出てこない。

「純子のこと好きでもないのに付き合ってるの?なんで?」

美幸が聞いてくる。

「それは・・・純子はいい子だし、一緒にいると妹が出来たみたいで楽しいし」

「でも純子のこと本気で好きなんじゃないんでしょ?それでキスとかしてエッチなこともしてるの?なんで?林さんもそんな人なの?」

俺は言葉が出てこなかった。
否定しようにも否定しきれない俺がいるのに気付いた。

「なんかもうわかんない!」

美幸は怒り出したが、怒りのやり場に困ったのか、近くにあったクッションを俺に投げつけてきた。
沈黙の時間が続く。
ようやく落ち着きを取り戻した美幸は、「何で林さんは私のこと好きになったの?」とおもむろに聞いてきた。
そこで俺は一目惚れに近かったこと、その後も話をしていてどんどん惹かれていったこと、しかし気付いた時には鈴木と美幸が付き合っていたこと、だから無理やり気持ちを抑えていたことなどを話した。
美幸は美幸でそんなことには気づかなかったらしく、「そうだったんだ、そうとは知らずに純子とくっつけちゃったんだね」とぽつりと言った。

また沈黙が続く。
外から雨の音が聞こえる。
時間は10時を過ぎようとしていた。

「ごめんね、帰る」

美幸が言った。

俺も、「ん、そうだね」と送ろうとして玄関まで行く。

外は土砂降り。
傘はあるが、この雨では意味をなさないだろうと車で送ることになり、一旦部屋に戻ってキーを持って来たとき、ひどい雷が鳴った。

「きゃっ!!」

美幸は俺に抱きついてきた。
俺も抱き締めた。
小柄な美幸は俺の腕の中にすっぽりと包まれる。
雷が鳴り終えても離さない、というか離せない。
こんな日を夢見てた時があったことが頭をよぎる。

(今でも俺は美幸に惚れてるんだ)

そう考えると、俺の右手は自然に美幸のあごを上に向けていた。
美幸は、『あっ!』という顔をした。
そこにキス。
驚く美幸。
しかし撥ね除けようとはしない。
軽く唇と唇が重なっていただけだったが、俺は我慢しきれず、美幸の唇の間から俺の舌を忍び込ませた。
意外にすんなり入った。

(なぜだ?)

美幸はそんな軽い女の子じゃない。
短い間であったが美幸を観察してきた俺は知っていた。

(彼氏の友人に簡単にディープキスをさせるのか?)

俺は少し混乱しながらも残った左手で美幸の腰をぐっと引き寄せた。
身長差があるため、密着すると唇は離れた。
もっとキスをしていたかった。
美幸は、「林さん、キス上手いね」と言って俺の胸に顔をうずめてきた。
これ以上を期待していいのか、これ以上はダメという信号なのか一瞬迷った俺だが、続く美幸の言葉に驚きを隠せなかった。

「私、初めて見たときから林さん、感じいいなって思ってたんだよ」

「え?え?何が?え?」

こんな感じで言葉が継げない。
美幸は鈴木に告白されて、その場でOKしている。
なのに俺のこと感じがいい?
それはバイト先の先輩として?
少し年上の友人として?
まさか男として?
・・・ではないだろう。
とにかく混乱している俺を見て美幸はにこっと微笑み、体をすっと離すと、「冗談だよ」と満面の笑みを浮かべて言った。
俺は気落ちしたが、ここで止めるには良い方法だったかもしれない。

俺と美幸は微妙な位置関係になった。
手を伸ばせば届くし、抱き締められる。
しかし逃げようとすれば、すぐに逃げられる。

そのまま数秒立ち尽くしていると美幸は、「今夜、泊まってもいい?」と口に出した。

<続く>