数年前の夏、俺は初めて携帯の出会い系サイトを利用した。
気に入った感じの子を見つけても、返ってくる返事は業者の勧誘メールばかり・・・。
1人2人頻繁に返事をくれていたが、それも結局は誘導目的のサクラだった。
期待ばかりが先行した出会い系、2日目には半ば飽き始めていた。

そして3日目、検索範囲を都内だけに限らず、関東全域に広げてみた。
飽き始めたはずだが、期待する部分もまだまだ大きかったのが正直なところ。
すると、茨城県西部で気になる子を発見!
年齢的には一回り下、趣味が車と釣りで、俺と同じであった。
出会い系で趣味が共通しようが大して関係ないように思っていたが、この時は、とりあえず誰でもいいから1度会ってみたかった。
数度のメール交換を経て、向こうの地元近くで待ち合わせするところまで漕ぎ着けた。

金曜の夜、仕事を終えた俺は車に乗り一路、茨城へ。
近くから首都高に上がり、渋滞を避けたかったので5号線から外環-東北道と走った蓮田SAで、現在地とナビの到着予定時刻をメールした。
すぐに返事が来た、『楽しみに待ってるよ♪』と。
心が華やいだ、気が急いた、アクセルをいつもより多く踏んでいた。
ナビ通りに群馬の館林で東北道を下り、国道を東進。
小1時間も進んだだろうか、昼間なら左手に渡良瀬遊水地が見えるであろう橋を渡った。
ここから先が茨城県だ。
またしてもメールを入れた。
いい年をしてすっかり小僧気分である。
ナビの説明通り進むと、駅横を抜け、大型店舗の並ぶ国道に入った。
待ち合わせをした場所はすぐに分かった。
ボーリング場や書店、スーパー、レンタル店、靴屋、服飾関係、なんでもある複合ショッピング店舗だった。
都内には、こういった大型複合店舗というのが少なく、物珍しげに駐車場へ滑り込んだ。
『2階駐車場の店舗入口あたりで待ってる』とメールにあったので、なるべく近くに停めようと車をまわした。
暗過ぎはしないが決して明るくない駐車場に一際明るい一角があり、そこが店舗の入口のようだった。
ラッキーなことにすぐ目の前が空いており、すんなり車を停めることが出来た。
と、そこにメール着信。

『横見て』

あまりにも短い内容に一瞬考えてしまったが。
気配を感じ、その方向を見ると人が、手を振り満面の笑みを浮かべ立っていた。

それが、ひとみとの出会いだった。
鮮やかに染められたミルクティ色の髪。
細身を強調するかのような黒いタンクトップ。
スウェット地のハーフパンツ。
そして目元強調メイク・・・。
今じゃすっか見慣れたが、当時は軽く面食らったことを覚えている。
都内じゃ滅多にお目に掛かれない典型的なタイプだった。

「いよっ!お疲れ、遠かったんじゃない?」

窓を開けた途端に気さく過ぎるくらいのタメ口スタート。

「そうでもなかったよ、高速使って都内から1時間ちょいだし」

俺の方が緊張していた。
写メ交換もしないまま、勢いで来たことに今頃気付く。

「乗っていいかなぁ?」

助手席あたりを指差しながら彼女が言った。

「ああ、どうぞどうぞ。遠慮なく」

嗚呼・・・しどろもどろだ。
彼女が乗り込むと、女の子特有のいい香りが車内へ一気に流れ込んできた。

(さて何しよう?どこへ行こう?)

何も考えてなかった俺を見越してか・・・。

「とりあえずさ、ココスでも行って飯食わない?お茶でもいーし」

物凄くフランクだ・・・。
初対面の男に物怖じしないのか・・・凄いな。

車を出し、駐車場から出たところで右折の指示。
すぐにココスがあった。

「あのさ、先に言っとくけど、私はお金目的じゃないからねw単なる暇潰しで書き込んでただけだから」

先制パンチだった。
かなり効いた、だいぶ凹んだ。
ザワザワと騒がしい店内ドリンクバーとポテトで会話。
この隣町が地元であること、前週から1人暮らしを始めたこと。
高校卒業後は美容師を目指して専門に通ってること。
ひとしきり話すと、今度は質問してくる。

仕事は?地元は?彼女は?出会い系の経験は?

隠すことでもないので、ありのまま答える。
すると店内に響くような大笑いをしたひとみ。

「あんた馬鹿だなw出会い系で知り合ったヤツに真面目に答え過ぎだよwww」

俺、大失敗?
こういう場合は適当に話合わせて流すものなのか?

「まあ、嫌いじゃないよ。おもろいじゃんw」

ケラケラ笑い、コロコロと表情が変わるひとみ。
正直、可愛らしいと思った。
1時間もぶっ続けに話しただろうか、ふいにひとみが言った。

「どっか行こうか?とりあえず出よ」

ひとみがトイレに立った間に会計を済まし、戻ったところで外へ。
車に乗るなり開口一番。

「どこ行く?何したい?」

初めて来たとこで土地勘もないのにその質問・・・悩む。

「とりあえず、ドライブでもすっかね」

適当にひとみが右だ左だと指示するままに流す。
コンビニで飲み物やお菓子、それに花火を適当に買った。
なんとはなしにやって来たのは『渡良瀬遊水地』だった。
夏の夜、湿地帯特有なのか妙に蒸し暑い。
市街では窓全開でいたが、さすがに虫も多くエアコンに切り替えた。
ひとみは後席に置いていたMDケースを熱心に見ていた。

「お!aikoじゃーん、聞くんだ?」

三十路でaikoは危険なのか?
どう答えようか迷っていると・・・。

「あたしさ、aiko超好きなんだよねぇ!歌っちゃうよぉ~」

なんか急にテンション上がり始めてんすけど。
初対面ながら全く物怖じせず、緊張した素振りも見せないひとみ。
そんなフランクさに慣れてきたのか、ようやく冷静に話せるようになってきた。

「うまいな、カラオケよく行くの?」

今時の若い子って皆、歌が上手いように思う三十路・・・。

「ん~、こっち越して来てからは1回かな。前はよく行ったよ」

ひとみが言った直後、次の曲が流れ始めた。
カブトムシ。

「これいいよなぁ~、aiko最高!」

またしても熱唱、かなり本気モード、そしてホントに歌が上手い。
5~6曲熱唱したところで、来る途中で買った午後ティーを1口。
少しまったりとした空気が流れる。
俺は煙草を燻らせていた。

「ブンターかぁ、あたしはマルメンライト」

ココスでは吸ってなかったから、煙草は吸わないんだとばかり。

「煙草吸う女は嫌い?」

唐突な質問だったが、普通に答える。

「特に気にならないけど」

「そっか」

またしても微妙な空気。
周りは街灯もなく本格的に真暗、不気味なくらいだった。

「さっき買った花火しようぜぇ!」

そりゃいい、花火なんてしばらくやってない。

「ここってさ、来週花火大会あるんだよ知ってる?」

「いや、初耳」

「三尺玉ってデカいのが上がるんだよ」

「へぇー、凄いんだな」

「だろ?子供の頃から結構来てるんだ」

どうして女の子と花火ってのは似合うんだか・・・グッときます。
よくよく見れば、ひとみが選んだのは全て線香花火。

「なんで線香花火だけなの?」

「好きなだけ~。嫌い?」

「いやいや、そんな事ない」

他愛もない会話をしながら花火に興じる2人。
風で蝋燭代わりのジッポーが消えた。
点けなおそうと何も考えずに持った。

「!!!!!!熱ッ!!!!!!」

少し考えれば分かるものを、馬鹿丸出しな俺・・・。

「あーぁ、馬鹿だねぇwどれ、見せてみ?」

片手を差し出し、見せてみろとポーズするひとみ。
そのまま車内に戻り、手を凝視。

「あとで少し水ぶくれになるかもな、気を付けなよ。ガキじゃねーんだからw」

そう言いながら火傷箇所にデコピン食らわすひとみ。
一回りも下の子にすっかり窘められる俺・・・。

「でさ、さっきの話だけど興味ある?」

さて、何の話だろうか?
さっぱり分からん。

「花火大会だよ。三尺玉が上がるのが来週あるって言ったじゃんか」

目付きが鋭い・・・確実にヤンでしょ貴女・・・。
仕事の予定を思い出していた。

「なぁ、コタロー」

ん?いきなり呼び捨てっすかw

「あたしと一緒に行かない?」

誘われてるぅ!!
誘われてんだよな?

「友達なんかと行かないの?」

嗚呼、そんなこと聞くな、俺!

「ん~、引越したせいとか彼氏とデートとかで・・・な」

軽く凹み気味っぽい。

「おし、分かった。是非一緒に行って下さいな」

ルームランプに照らされた笑顔のひとみはホントに可愛かった。

「お!やった!!お前いいヤツだなw」

今度は、お前呼ばわりですか・・・。
友人は彼氏と花火大会、ひとみに彼は・・・まあ、いっか。

「なぁ、コタロー。キスしよっか?」

おぉー!来たか?
来ましたね!?

「何、突然?」

冷静ぶってます。
なんせ一回り上ですから。

「しないの?ならいーよ別に」

「あ、いや待って!したいです、キスしたいです!」

「お前、必死すぎw」

「・・・」

弄ばれています、ええ完全に。
大人の魅力を見せる時間が来たようですw
助手席側に向き直し、ひとみの首筋から頬、そして髪を撫で上げた。
薄っすらと笑みを浮かべるひとみ。

「何?」

小娘をあしらう如く対応したい俺。

「コタローってエロそうだなぁと思ってさwww」

マズイです、見透かされてます。
思い切り・・・。

「そりゃそーだ。こんなとこで女の子と2人なんだし・・・」

間髪入れず不用意に唇を奪われたw
同時に舌が艶かしく動く。
頭を両手で押さえつけてくる。
俺をじっと見つめたまま、時折笑みを浮かべながら続くキス。

ひとみはきっとSなんだろうな・・・。
そうじゃない、俺!
攻めろ!攻めるんだ!!

<続く>