ウサギくんを置き去りにしたまま、急いでガラス戸を開けてロッカールームに出ます。
もう心臓が爆発寸前でした。

(ドキドキ)

顔が上気して、どうにかなってしまいそうです。

(死んじゃう・・・もう死んじゃう)

まさにそのタイミングで・・・新たに入ってきた男性2人と鉢合わせになりました。

(あ・・・)

大きなナップサックを持った白人の2人組です。

(かっこいい)

ひとりは、ものすごいイケメンでした。
その青い瞳と整った顔立ちに思わず目を奪われそうになります。

「Good morning」

ちょっと焦ってしまって・・・辛うじて・・・。

「・・・morning」

呟くように挨拶を返せただけの私・・・。
もうひとりは、まあ普通のブラウンヘアーの男の人でした。
2人とも40代ぐらいでしょうか。
大きなサックを床に下ろして、もう私のことなんて眼中にないようでした。
手近なロッカーを開けながら・・・。

「◯◯◯、◯◯◯◯・・・」
「◯◯、◯◯◯◯、◯◯◯・・・」

2人はネイティブの早口英語で談笑をしています。
ウサギくんとのことで、ドキドキの余韻も冷めやらぬまま、まだ内心のテンションが上がりっぱなしな私でした。

(ああ、やっちゃう?)

立て続けになりますが、ここまできたらもう1回するのも同じことです。
昨日のカップルのときと同じパターンで演技すればいいだけでした。

(今なら、できちゃう)

ウサギくんだって、まだしばらくはお風呂からあがってくることはないはずです。

(ああ、やっぱり、あっちの人、かっこいい)

緊張しました。
こんな人の前で水着を脱いだりしたら・・・恥ずかしすぎて、私の自尊心は打ちのめされてしまうかもしれません。

(無理だよ。できないよ)

タイミングは今しかありませんでした。
やるのなら、もう本当に今、この瞬間です。

(ああん、イヤあ・・・そこにいるのに)

考えるより先に手が動いていました。
ロッカー前のこの場所で、ゆっくりと上の水着を脱ぎます。

「・・・」

談笑していた2人の会話がぴたっと止まっていました。
自分の頭にかーっと、体中の血が上っていくのを感じます。

(ひいいん、こっち見てる)

胸が丸出しになっている私に・・・イケメンさんが・・・。

「◯◯◯、◯◯◯◯、◯◯」

あちらに脱衣用のブースがあることを教えようとしてくれていました。
私は健気な顔で、英語がまったくわからないふりをします。
ブラウンヘアーが、『わーお』という感じで私を見ていました。

(おっぱいを見ないで、恥ずかしいぃ)

何の罪もない表情で・・・。

「ん?・・・なに?」

下の水着にも手をかけます。
一気にニヤつくブラウンの顔・・・。

(イヤぁあ、だめえ)

2人が見ている前で、するするっと下の水着も下ろしました。

(キゃああ・・・)

すっぽんぽんになって、結わえてあった髪を解きます。

(ああ、こんなの・・・私、すごすぎる)

さすがに耐えられませんでした。
タオルを取り出して腰に巻きます。
2人の目を釘付けにしている自分が快感でした。
表面上は・・・。

「ん?・・・ん?・・・」

半ば、きょとんとして見せています。

(ドキドキ)

最高の気分でした。
イケメンさんも私の胸を見ています。
豊満とは程遠い・・・中学生みたいに小っちゃい私のおっぱい・・・。

(ああん、恥ずかしい)

脱いだ水着を手に持ちました。
2人の視線など意にも介さないかのように浴室のガラス戸のところに行きます。
戸を開けて、さっと中を見渡しました。

(ドキドキ)

大丈夫・・・。
ウサギくんは、まだシャワーブースから出てきていません。
濡れた水着を絞りました。
背後から聞こえてくる2人の会話・・・。

「◯◯、◯◯◯◯◯・・・」
「◯◯◯、◯◯◯◯・・・」

その中に、『cute』とか『girl』とかいう単語が混じっているのがわかります。
欧米人のあの人たちからすれば・・・。

(こんなに控えめな胸だったら)
(言葉もわからないアジアの女だったら)

ノーメイクの今の私が、はたして何歳に見えているのか・・・。
正直、見当もつきませんでした。

(もう少し・・・あと、もう少しだけ)

過去に何度か経験のある、“貧血のふり”の演技が脳裏によぎります。
自分のロッカー前に戻ろうと歩きだしたところで・・・。
不意に、よろよろっとして見せました。
並んだロッカーに手を伸ばして、とっさに寄りかかるふりをします。
2人が、『あっ』という顔になっていました。
その場で足を止めたまま・・・目眩に襲われたように顔をしかめてしまう私・・・。

「・・・ぅ・・・」

(助けに来て)

演技をしながら、辛そうに薄目にします。
手でロッカーを伝うように、よろよろと歩きだして・・・。
でも、すぐにしゃがみ込んで見せました。

(ああ、私って・・・なんて悪い女)

2人がさっと近づいてきます。

「Are you ok?」

イケメンさんが・・・。

「Whats wrong?」

寄り添うように顔を覗きこんできました。

(ああん、近い)

至近距離なのに、おっぱいを隠すこともできません。
そのまま床にぺたんとお尻をつけるようにへたり込んでしまう私・・・。
いかにも具合悪そうな表情で・・・。

「はあ、はあ、はあ・・・」

苦しそうに息をして見せていました。
心配そうにイケメンさんが私の肩を支えてくれます。

「◯◯◯,anemia ◯◯◯・・・?」

ブラウンヘアーは最低なやつでした。
へたり込んだまま私は膝を抱えています。
辛そうに呼吸をしている私の正面にしゃがんで・・・口ぶりだけは心配そうに・・・。

「You・・・dizzy?」

でも夢中になって覗き見ている感じでした。
腰に巻いたタオルの中が丸見え状態なのです。

(こいつ、最低)

でも、すごく興奮していました。
部屋の隅にはベンチチェアが1台置かれています。
イケメンさんが私のことを、そこまで運んでくれようとしていました。
朦朧としたふりをしたまま・・・。

(あああん)

ここぞとばかりに相手の首にしがみつきます。

(恥ずかしい・・・)

チェアの上に下ろされて仰向けになっていました。
薄い半目にしたまま・・・。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

辛そうなふりをします。

(ああん、見えちゃってる)

腰のタオルが、かなり捲れ上がっていました。
貧血なのは演技なのに・・・。

(あ・・・ぁぁ・・・。最高に恥ずかしい・・・)

本当に・・・本当に涙が滲んできます。

(気持ちいい)

快感でした。
不可抗力のふりをして、あられもない姿を曝け出してしまっています。

だって・・・しょうがないよ。
この子、倒れちゃったんだから。

仰向けに寝たまま湧き上がる興奮を噛みしめていました。

(ああん、気持ちいい)

本当の私が、どれほど身持ちが固いのか・・・。
どれだけ恥ずかしがり屋なのか・・・。
そんなことにはお構いなしに・・・。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

裸のままの私を男2人が見下ろしています。
イケメンさんがブラウンに何かを言って、奥の浴室へと入っていきました。
眉間にしわを寄せたまま・・・。

「はあ、はあ・・・」

迫真の演技で、あの人が戻ってくるのを待ちます。
誰もいないのをいいことに・・・辛そうにしている私の肩に、そっとブラウンが手を置いてきて・・・。

「Do you feel any better?」

(あっイヤ、触れないで)

下心を感じつつも私は振り払うことができませんでした。

「はあ、はあ、はあ・・・」

その手が・・・。

(ぁ・・・)

すっと胸に下りてきて・・・おっぱいの横に押しつけられてきます。

(イヤっ、当たってる)

故意なのは明白でした。

(こいつ・・・。やめろ、ばか)

苦しそうに息をしながら、それでも朦朧としたふりを続けてしまう自分がいます。
やっぱり触られていました。
腕を擦ってあげているという感じで・・・。
何度もおっぱいに手をぶつけてきます。

(イケメンさん、早く戻って来て)

胸の感触を面白がっているという感じでした。
小さくて貧弱な私のおっぱいを、ついには手のひらで包むように触ってきます。

(ばかあ・・・やめろ)

嫌だけれど、じっとしていました。
自分で演じている、この貧血の女に・・・。

(これぐらい、どうってことない。おっぱいぐらい我慢しろ)

と、懸命に言い聞かせます。

(でも・・・恥ずかしいよう)

イケメンさんが戻って来ました。
その瞬間に胸からブラウンの手が離れます。
イケメンさんが冷たいミニタオルのようなものをおでこに乗せてくれました。
わざわざ自分のタオルを水で濡らしてきてくれたようです。

「はああ・・・はああ・・・」

でも、もう潮時でした。
あまり時間はないはずです。

(あの子が来ちゃうかも)

こんな状態で再びウサギくんと顔を合わせるのはごめんでした。
すっと目を開いて、日本語でつぶやきます。

「ありが・・・とう」

2人が私の顔を覗きこんでいました。
よろよろと立ち上がって、まだ表情だけは辛そうにしておきます。
具合悪そうに服を着て・・・。

「さん・・・きゅう・・・」

弱々しく2人にお礼を言う私。
建物を出た途端。

(ああん、死んじゃう)

あまりの羞恥に自分の顔が燃えるように熱くなるのがわかりました。