緊張して喉がカラカラでした。
男湯の方には背を向けたまま・・・。

ばしゃっ・・・ざしゃっ・・・。

ゆっくりと大股で歩きます。
目立つように、よろけたふりをして・・・。

「きゃっ」

鋭い悲鳴をあげてみました。
さらに、バランスを崩したように、わざと水を撥ね上げます。
ここまですれば、さすがに目に入ったはずです。
メガネさんが、まだ私に気づいてないとは思えません。
オールヌードで川にいる私・・・。
おじさんにとっては、まさかのハプニングでしょう。
多少距離こそありますが・・・全裸になった私の姿が見えてしまっているのです。
きっと食い入るような目で、こっちを見ているに違いありません。
心臓がドキドキしていました。

(おじさん・・・私、何も着てないよ)

その場にしゃがんで、手のひらに川の流れをすくいました。

(見てるんでしょう?)

肩の辺りから自分の背中にかけます。
声にこそ出しませんが・・・冷たさに驚いたかのように、『ひゃあっ』と全身をくねらせました。
思わず立ち上がってしまったふりをした私は・・・。

(おじさん、見て・・・こっち見て)

今度はしゃがまずに前屈みになります。
必死に演技していました。

ぱちゃぱちゃぱちゃ・・・。

何度も体に水をかけながら、『ひっ』・・・『ひゃあ』・・・。
立ったままで背中をくねらせます。

(もういい、十分)

体を起こして、ごく自然な感じでゆっくり振り向きます。
・・・と同時に、もう女湯の護岸の方へと足を進めていました。

ざしゃっ・・・ざしゃっ・・・。

水の中の砂利石に足を取られないように、顔をうつむけます。
足元ばかり注意しているふりをしました。
戻るべき女湯のほうだけしか目に入っていないふりをして・・・。

ざしゃっ・・・ざしゃっ・・・。

女湯の護岸の前に戻りました。
土台の部分にあがります。

(ドキドキドキ・・・ああん)

心臓が爆発しそうになっています。

(やった・・・やっちゃった)

大袈裟でなく、その場にへたりこみそうなぐらいに足がガクガクしています。
護岸の上に両手を置きました。
コンクリートの出っ張りに足をかけます。
勢いをつけて露天スペースに這い上がりました。
飛び込むように湯だまりに入ります。

(ああ、だめ)

興奮していました。
やっぱり・・・やっぱり・・・この昂りは、日常では味わえません。
実際には、ほんの数十秒のことにすぎませんでしたが・・・おじさんは見ていたでしょうか。
絶対見ていたはずです。

(もうだめ)

鏡なんて見なくても、耳まで赤くなっているのが自分でもわかりました。

(恥ずかしいよ)

湯だまりの中で、自分で自分の体をぎゅっと抱き締めます。
でも、まだ・・・まだここからです。
肩までお湯に浸かりました。
とにかく必死に気持ちを落ち着かせます。

(おじさん、どうする?)

きっかけは作りました。
あとは、あのメガネさん次第です。

(きっと見に来る)

下の土台は、護岸に沿ってずっと男湯まで続いています。
今の私のように、思い切って護岸の外に下りてしまえば・・・。
土台を伝って来るだけで、簡単にこっちまで来てしまえるということです。
メガネさんも、そのことにはもう気づいているはずでした。
お湯につかったまま、“その瞬間”を待ち構えます。
正直、可能性は五分五分だと思っていました。
でも・・・。

(絶対来る)

なぜかそんな予感がしていました。

(もっと見たいはず)

その気になれば、割と簡単に女湯を覗くことができるのです。
お風呂にいるのは、お天気お姉さんに似た若い女・・・。
あのおじさんにとって、こんなチャンスはないはずです。

(来て)

のぼせそうになりながらも、息を殺して神経を張り詰めます。

(気づかないふりしてあげるから)

覗かれるとすれば、おそらくあの立てかけられたすだれのところからでしょう。
束ねられた竹の茎は細くて隙間だらけで、顔を寄せればいくらでも覗き放題です。
3分?・・・それとも5分?
どれぐらいの時間が経ったのか、よくわかりません。

(あ・・・)

唐突に気配を感じた気がしました。
響き渡る蝉の声に邪魔されながらも、かすかな違和感を覚えます。
ほぼ真横の方向です。
左側で、ちらちらっと何かが動きました。

(いる!ドキドキドキドキ・・・)

胸の中で鼓動が跳ね上がります。
もう待ったなしでした。
お湯に浸かったまま、遠くの木々のほうを眺めている表情を作ります。
目の焦点は遠くに合わせていますが・・・。

(ドキドキドキドキ・・・)

視界の隅っこでは、そっちのほうを捉えていました。

(あ・・・)

左側のすだれの下のほうです。
ちょっと雑草が生えている辺りでした。
あの裏は、そのまま護岸になっている場所です。

(いる・・・)

すだれ越しに、こっちを覗いている人がいるのがわかります。

(ああ、だめだ。無理・・・無理・・・)

急に不安に襲われました。

(やっぱりだめ)

いざとなると、この近さはまともじゃありません。
そもそもこの女湯自体がすごく狭いので、本当にすぐそこでした。

(どうしよう)

これでは、お湯から出たら完全に丸見え状態です。
隠れ場所が一切ありません。
そんなことは最初からわかっていたことのはずなのに、お湯の中で身がすくんでしまいました。

(落ち着いて)

目を瞑って気持ちを落ち着かせます。

(ここでやめちゃっていいの?チャンスなんじゃないの?)

帰っていくシャイ君たちを見送りながら、後悔した自分を思い出します。
ここは女湯です。

(そうだよ)

どんなに丸見えだろうと・・・。

(私は悪くない)

私は覗きの被害者です。
不運で可哀想な、“何も知らない女の子”なのです。
お湯の熱さにのぼせてきました。

(おじさん)

覚悟を決めます。

(見せてあげる)

自分のタイミングを計ります。
心の中でひと呼吸置いて・・・。

ざば。

私はお湯の中から立ち上がりました。
そのまま湯だまりの縁に腰かけてしまいます。

(あああ・・・)

おっぱい丸出しのまま、メガネさんの正面を向いていました。

(イヤぁ、恥ずかしい)

一糸まとわぬ自分を曝け出しています。

(ああだめ)

脚は閉じたものの、アンダーヘアを隠しきれていません。

(見ないで)

顔がかーっと熱くなりました。

(ああん、見てる)

パンツすら穿かずに向き合っているこの屈辱感・・・。
血圧が急上昇する感覚に襲われます。
すだれの竹茎は細くて隙間だらけです。
私の方からも覗いているおじさんの姿がほぼ見えていました。
おそらく護岸の下の土台に立ったままなのでしょう。
竹茎の隙間に透けるように、肩から上のシルエットが見えています。
すだれに顔をぴったりくっつけて覗いているのが丸わかりでした。
もちろん、こっちからは何も見えていないふりをします。
全身が強張って、まともに呼吸ができません。

「ふーっ」

のぼせたかのように、ため息をついて誤魔化します。

(ほら・・・この子・・・ほら・・・あなたの前で、おっぱい丸出しだよ)

一生懸命にぼーっと、のぼせた表情を作りました。

(すごいよ、ほら。こんな子がパンツも穿かずに・・・あなたの目の前ですっぽんぽんだよ)

本当は、もう泣きそうになっていました。
羞恥心にとても耐えられません。
両手で前を隠したいのを我慢して必死に演技を続けます。
ぽけーとしたまま・・・。

(私の顔を見て)

「く・・・」

空に向けて両手を伸ばします。

「んんんー」

思いっきり伸びをしました。
気持ち良さそうに目を瞑って・・・。
にっこりと幸せそうな表情を浮かべて見せます。

(きれいな子でしょ?おじさん・・・私、きれいでしょ?)

髪をかきあげて、すっかりリラックスしてるふりをしました。

「ふうー」

腕を下ろして、また目を開けました。
にっこりとした幸せ顔のままで、「ふぅー」と、ため息を連発します。
なんとなくという感じで両手を左右の胸に持っていきました。

(大丈夫)

うまく演技できています。
まさか男の人に覗かれてるなんて夢にも思っていない・・・。
そんな不憫な女の子が、ここにいます。

「ふぅー」

おもむろに手のひらで自分の胸を擦りあげました。
何も知らないこの女の子は・・・男の人が見てるのに・・・。

(ああん、見ないで)

よりによって、その目の前でバストアップのマッサージです。

(ああん、いやぁ)

心の中で悲鳴をあげながら・・・下から上へと、おっぱいを撫であげて見せました。
私の胸は、たいして大きいわけじゃありません。
それでも丁寧に丁寧に・・・いじらしくも懸命にマッサージしてみせます。

だめだよ、おじさん。
見ちゃだめ・・・。
こんなの覗かれてるなんて知ったら・・・。
この子、ショックで泣いちゃうよ。

羞恥心でいっぱいでした。

(おじさん、嬉しい?)

硬く膨らんだ乳首が恥ずかしくてなりません。

(私のおっぱい見れて、嬉しい?)

すぐそこから覗いている目を意識して、興奮が止まりません。

(次は?・・・次は?)

真ん中にただ湯だまりがあるだけの、本当に狭い女湯です。
余計なことをしようとすれば、すぐに不自然に思われてしまいそうでした。
それこそ、意味なくうろうろ歩きまわることすらはばかられる感じです。
こうやって静かに腰かけているか、またお湯に浸かってしまうか・・・自然体を装い続けるなら、そのどちらかしかありません。

(動きたい)

衝動に駆られます。

(理由が欲しい。そうだ!)

トートの中にはペットボトルのお茶が入っています。
湯だまりの縁から立ち上がりました。

(ああ、おじさん)

オールヌードの立ち姿をメガネさんにお披露目します。

(ああん・・・恥ずかしい・・・)

まさに素っ裸でした。
日差しが全身を照りつけています。
眩しいほどの光の中で深呼吸して見せました。
開放感に満ちた顔で・・・。

「うー・・・ん」

両腕を真上に突き上げます。
おっぱいを丸出しにしたまま気持ち良さそうに全身で伸びをしました。

(だめぇ)

メガネさんの視線を意識して膝が震えそうです。

「ふう」

かかとを下ろして肩を落としました。
まだまだこれからです。

(おじさん見てて)

前も後ろも隠さないままトートを置いた石の前に行きます。
メガネさんに後ろ姿を向けていました。
両脚を開いたままで・・・大胆に前屈みになります。

(あああ)

トートの中に手を突っ込みました。
お尻を後ろに突き出して、恥ずかしいところが完全に露わになっています。
自然体を装って、あられもない姿を見せつけていました。

(あああ、だめぇ)

ペットボトルを取り出して、すぐに姿勢を戻します。

(だめぇ)

恥ずかしくて、もう振り向けませんでした。
なおも背中を向けたままで、キャップを外します。
ボトルに口をつけながらも羞恥心に涙ぐみそうになりました。
鼻の奥がきゅうっとなって、目がしらが熱くなってきます。
今にも泣きそうになるのを、必死にこらえました。

<続く>