「映画、面白かったよー」

休み時間に美雪が話しかけてきたが、僕はそっぽを向いて、「ああそう」とだけ言った。
美雪は何を言っても生返事の僕に、「馬鹿!」と怒って行ってしまった。
美雪の後ろ姿に水色のショーツが重なった。
僕は美雪の顔をまともに見られなかった。
美雪の自慰を覗き見たせいもあったが、何よりも美雪の母親とのことがあったからだ。

まったく・・・、20歳も上なのに。
元々の僕の性癖なのか、初めての相手がそうだったせいなのかわからないが、僕は年上、しかもかなり年上の女性に心惹かれてしまうようだ。

僕は美雪の母親を自由にしたかった。
だから美雪とは距離を置こう、そう考えた。
しかし、美雪の母親が昨日以上のことを今も望んでいる保証はなかった。
一時の気の迷いで、ああいうことをした自分を恥じているかもしれない。
色々考えた挙句に次の日、思い切って電話を掛けた。

「週末に・・・逢えませんか?」

声が緊張しているのが自分でもわかった。
美雪の母親も緊張した声で、「・・・ええ」と答えた。

「こんな風になっているのね。思ったよりキレイ・・・」

美雪の母親はもの珍しそうに言った。
僕は美雪の母親に逢うとラブホテルに向かった。
それまでこういうホテルに来たことがないと言う美雪の母親は、入る時はかなり緊張の面持ちだった。
僕は彼女の腰を抱き、半ば強引にホテルの中へ入った。
部屋に入ると幾分緊張が解けたのか、ベッドの端に腰掛けると部屋を見回していた。
僕は美雪の母親の横に座った。
彼女は僕の方を見遣った。

「あなたはこういう所、初めてなの?」

「い、いえ・・・」

「2度目です」とは言わなかった。

「そう・・・、まさか美雪と?」

「い、いいえ、違います!美雪・・・さんは妹みたいなもので・・・」

「そうよね。あの子、まだ子供だものね」

僕は裸の美雪を思い起こした。

「娘の同級生とこうなるなんて、とんでもないおばさんだと思ってない?」

「いえ・・・、思ったら誘いません」

美雪の母親は背中を向けた。

「私ね、学生結婚ですぐに美雪を産んで・・・。でも主人はずっと向こうへ行きっぱなしで・・・、おまけに他に女がいて・・・。でも、私がいい妻、いい母親だったら主人は私と美雪の元へ戻って来るかなって頑張って・・・、でも疲れてイライラして・・・、万引きまで・・・」

僕は美雪の母親を背中からひしと抱き締めた。
長い時間そうしていた。
2人とも黙ったままだった。
空調の音だけが部屋に響いていた。

「チュウしてもいいですか?」

僕はこの間の彼女の口調を真似た。
背中が揺れだした。
笑っているようだ。
彼女は振り向いた。

「ありがとう・・・あなたは優しいのね・・・」

瞳が涙に滲んでいた。

「チュウして・・・」

僕は差し出された唇を吸った。
僕は美雪の母親の服をゆっくりと脱がせた。
その間、彼女はされるがままだった。
ブラジャーが外されて胸が露わになる時、両手で彼女は胸を覆ったが、僕はその手を掴み下ろさせた。
白い豊かな胸が淡い間接照明に浮かび上がる。
最後にショーツを足首から抜き取った。
目の前に立つ美雪の母親を眺めた。
肩から始まった2本の線は胸に向かって大きく膨らみ、腰に下りるにつれて一旦狭まった後、また綺麗な曲線を描いた。
僕は息を呑んだ。

「あなたも・・・」

美雪の母親は僕の服に手を掛けた。
今度は僕が彼女のなすがままになった。
僕の足元に跪き、パンツを引き下ろす時、彼女は恥ずかしそうに下を向いていた。
僕たちはベッドに入り抱き合った。

「んっ・・・あんっ・・・」

ベッドに入った途端、それまでのゆったりとした時間が嘘のように僕たちは激しく求め合った。
互いの舌を貪り、首筋を舐め、耳を噛んだ。
僕の欲望が美雪の母親の欲望を掻き立て、さらにそれが僕の欲望を増幅させ・・・。
喘ぎ声が2人の共通の言葉のように交わされた。

「いやっ・・・いやっ・・・」

胸を荒々しく揉みしだき、頂きを強く噛んでも、彼女は歓びの声を上げた。
脚を大きく開かせ、挿入した指を乱暴に出し入れしても身を震わせた。

「私、あんまり上手じゃないけど・・・」

髪を掻き上げると美雪の母親は僕自身を握り、唇を近づけた。
彼女はまず僕自身の先っぽ辺りに唇をくっつけ、そのまま舌で撫でるように舐め上げた。
思わずぴくんと脈打った。

「どうすれば気持ちいいか言って」

彼女は僕が歓ぶ場所を、方法を探した。
彼女の喉の奥深くに当たるほど包まれた時、僕は大声を上げて仰け反った。

「こうすればいいのね・・・」

彼女は時おり喉を詰まらせながらも、僕自身を奥まで含んでくれた。
僕は目を開け、少し体を起こした。
美雪の母親の頭が上下を繰り返している。
すぐ後ろの壁は一部が鏡張りになっており、そこに美雪の母親のお尻が映り込んでいた。
彼女はうずくまっているので肉の裂け目はぱっくりと開かれ、全部が丸見えだった。
彼女に最初に逢ったときの、凛とした表情を思い出した。
その人があられもない格好で、ただ僕を歓ばせたいが為に懸命の奉仕をしてくれていた。
僕は体の向きを変えると、彼女の脚の間に顔を埋めた。
互いに舐め、啜りあった。
自分たちが演じる痴態が、さらに興奮を高めていく・・・。

「んふっ・・・んあっ・・・」

彼女は僕自身を含んだままで、くぐもった声を上げていた。
僕が充血した敏感な突起を唇で摘んだときは、僕自身を口から離し、喘いだ。

「ねぇ、欲しい・・・」

美雪の母親は、さらなる深い肉の繋がりを欲しがった。
それは僕も同じ思いだった。
僕は美雪の母親にそのまま入れたかったが、おばちゃんの言葉を思い出し、スキンをつけ、充分に待たされたそこへと入り込んだ。

「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ・・・」

すぐに美雪の母親は反応した。
僕が突くたびに腿を高く上げ、深く導こうとした。
僕も彼女の脚を肩に掛け、奥へ深く打ち込んだ。
彼女を焦らし、その様を楽しむ余裕はとてもなかった。
ひたすら奥へ奥へと突き続けた。

「んんーっ・・・んんーっ・・・んんーっ・・・」

美雪の母親は僕にしがみつき、肩口に噛みついた。
それさえも僕の快感を呼んだ。
僕は繋がったまま美雪の母親の体を起こした。
自由な動きを得た彼女の腰は、逆に僕が突かれているかのように思えるほど激しく動いた。
その動きで僕の尻がシーツに擦れて焼けるように熱かった。
僕はたまらず仰向けになった。

「ああぁっ・・・もうすぐ・・・来そう・・・来るの・・・来るのっ・・・」

僕に跨がった美雪の母親の腰の動きはさらに貪婪になった。
僕は目の前で上下する膨らみを掴み弄び、頂きを捩じ切るように摘んだ。

「来るっ、来るっ、来るっ、来るっ・・・くっ・・・るっう・・・」

その瞬間、彼女は大きく胸を反らし、口を開いた。
しかし声は出ず、ぱくぱくさせていた。
その後、大きく息を吐いた。

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ・・・」

彼女は僕の胸に倒れこんだ。
荒い息遣いが僕の胸に伝わる。
彼女の体は時おりぴくんぴくんと痙攣していた。
僕はまだ達していなかった。
僕はまだ息の荒い彼女の背中に腕を絡めると、いきなり下から突き上げた。
速い動きで連続して突き上げた。

「ああーーっ!」

美雪の母親は、がばっと体を起こすとまた腰を動かし始めた。
そして果てると倒れこんだ。
しばらくして僕はまた下から突き上げた。

「ねぇっ・・・お願い・・・一緒に・・・いっ・・・しょ・・・に・・・」

彼女は腰を動かしながら僕に懇願した。
僕はすっかり汗ばんだ彼女とぴったり肌を合わせると、最後に渾身の力で腰を動かした。
少し眠った後、僕と美雪の母親はまたお互いの体を、反応を、隅々まで確かめ合った。
僕の腕の中で軽く寝息を立てている彼女の顔を見て、僕はこれからもずっと彼女との時間が続くことに、叫びたいくらいの幸せを感じた。

次の週、僕はかなり焦っていた。
美雪の母親とぷっつり連絡が取れなくなったからだ・・・。
僕は毎日、電話を掛けた。
しかし、美雪の母親が電話を取ることはなかった。
美雪に聞いてみたかったが、あの美雪が最近は元気がなく、休み時間も1人で塞ぎこむことが多かった。

(まさか、美雪にばれたのでは・・・?)

そう考えたが、美雪は僕を完全に拒絶する風でもなかったので、それは無いはずだ。
僕の知らない所で何かが起こっているようで不安だった。
結局、美雪に聞くしか方法はなく、僕は一緒に帰る時に聞き出すことにした。
いきなり母親のことを聞くわけにもいかず、迷っているうちにとうとういつも別れる交差点まで来てしまった。

「・・・うちに来ない?」

美雪がぼそりと言った。
願ってもないチャンスに僕は素っ気なさを装いながら同意した。
美雪の家に入ると、僕は真っ先に美雪の母親の姿を探した。
しかし彼女はいなかった。
美雪の部屋に通された。
僕は椅子に座り、美雪はベッドに腰掛けた。

「お母さんは?」

努めて違和感がないように聞いた。

「来週までいない・・・、今パパの所にいる」

「・・・急用で?」

「知らない・・・」

僕は美雪の母親に裏切られた気がした。
妻が夫の赴任地へ行くのは別に普通だが、黙って行ったことが嫌だった。
僕に言えない理由に違いないと思った。
僕は気分がささくれ立つのを感じた。
夫に組み伏されて恍惚の表情を浮かべる美雪の母親の姿が頭をよぎった。

「何か話があるから家まで来たんでしょ?」

嫉妬と猜疑に苛まれ、黙ったままの僕に美雪が尋ねた。

「いや、別に・・・。お前こそ、話があったから家まで誘ったんじゃないのか?」

「いや、別に・・・」

美雪は唇を尖らせて、僕の口調をそのまま真似た。
カチンと来た。

「お互い用がないなら帰るよ」

僕は立ち上がった。
前を美雪が立ちはだかる。

「バカ!どうして言わなきゃわかんないの!」

美雪は射抜くような目で僕を見た。
美雪の視線に耐え切れず顔を背けると、あの姿見があった。
姿見に、ショーツの中へ手を入れて自慰をする美雪の姿が、僕の脚の間で頭を動かしている美雪の母親の後ろ姿が映った。
耳の中が、きーんと鳴った。
僕は美雪にいきなり抱きつくと、ベッドに押し倒した。

「いやっ!いやっ!」

美雪は足をばたばたして抵抗した。
スカートが捲れ、太腿が露わになった。
僕は構わず美雪を押さえつけ、シャツをスカートから引き出し、手を突っ込んだ。
ブラジャーに触れた。
そのまま乱暴に掴んだ。

「いやあーーーっ・・・」

叫んだ後、美雪の抵抗が止まった。
顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
僕は急速に冷めていった。
僕は美雪の胸から手を離すと、おずおずとシャツから手を抜いた。
美雪の泣きじゃくる声が僕に突き刺さる。

僕はいたたまれず部屋を出た。
最悪だった。
僕は全てを自分でぶち壊したのだ。
翌日、美雪はいつも通り学校に来たが、僕に近寄りも目を合わせもしなかった。

次の週にあんなに待ち焦がれていた美雪の母親からの電話があっても、僕は喜べなかった。
彼女は、「会って話をしたい」と言った。

鴨が連なって暢気に泳いでいる。
その周りの道を親子連れや老夫婦が散歩していた。
僕は池がすぐ見下ろせるベンチに腰掛けていた。
隣には美雪の母親がいる。
この公園を指定したのは美雪の母親だった。

「黙って行ったのは謝るわ。ごめんなさい」

美雪の母親は、以前のような雰囲気に戻っていた。
ついこの間、この人と狂おしく求めあったのが信じられなかった。
僕は覚悟した。

「私・・・あれから気がついたの。私は誰かに傍にいてもらわないとダメなんだって。でも・・・悪いけどそれはあなたじゃないわ。それで私、主人の所へ行ってこう言ったの。『私、あなたと一緒に住みますから、あなたもあの女と別れて下さい』って。ずっと話し合って・・・主人もまたやり直そうと言ってくれた。私、そうしたいの」

僕は俯いたままで黙っていた。

「あなたには本当に悪いと思ってる。でも、あなたのおかげで私は夫とやり直す気になったの。あなたとのことは私の中の大切な思い出にしたいから、だから・・・きれいに終わらせて」

彼女は僕に深々と頭を下げた。

「もう何もかも・・・決まってるんですね」

それしか言えなかった。
ふと、美雪の顔が浮かんだ。

「あの・・・美雪さんは?」

「16歳の娘を1人置いていけないわ。美雪には主人の所へ行く前に私の気持ちを話したんだけど、あの子、最初はいやだと言ったわ。でも昨日、美雪は一緒に行くと言ってくれたの」

僕は目の前の池に飛び込みたい心境だった。
あの時、美雪は僕に伝えたかったのだ。
それなのに僕は・・・。
ひたすら美雪に謝りたかった。

僕たちは最後に少し長めの握手をした。
一瞬だけ彼女は僕の腕の中で見せた表情になった。
2人の指が離れたとき、僕は肝心なことを知らないのに気がついた。

「あの、ご主人はどこに・・・いるんですか?」

「えっ?・・・ごめんなさい、言わなかったかしら。シンガポールよ」

僕はベンチからずり落ちそうになった。
僕が好きになる人は、みんな僕から去って行く・・・。
公園から帰る道、柄にもなく感傷的になり、一人で笑ってしまった。
でもそのあとで鼻の奥がつんとした。

(明日、どれだけ罵倒されても美雪に謝ろう)

そう決心した。

家の前に人が立っていた。
美雪だった。

「家、誰もいないの?」

美雪は部屋に入ると、緊張を紛らすように聞いた。

「うん、親父もお袋も日帰り温泉ツアーに行った。馬鹿みたいに毎月のように行ってる」

「いいじゃない、仲が良くて・・・」

そのまま美雪は俯き、押し黙ってしまった。

「あの、美雪・・・この間は・・・」

美雪は俯いたまま、「もういい」と言うように首を振り、そのまま話を始めた。
さっき美雪の母親から聞いたことだった。
僕は初めて聞くふりをした。

「そうか・・・寂しくなるな・・・」

偽らない本心だった。

「嘘、せいせいしてるくせに・・・」

美雪はまだ俯いていた。
僕は美雪がいじらしくなった。
もっと前に美雪ときちんと向き合えば良かったと思った。
僕は美雪を抱き締めた。
美雪は抗わなかった。
美雪のうなじからコロンの香りがした。

「ねぇ・・・」

ずっと僕の胸に顔を埋めていた美雪が口を開いた。

「・・・何?」

「・・・しよ・・・」

消え入りそうな声だった。

「えっ・・・」

「命がけで言ったから、もう言わない・・・。絶対に振り向かないでよ」

僕は「うん」と大仰に頷いた。
美雪が服を脱ぐ気配が背中に伝わってくる。

「いいよ・・・」

振り向くと、美雪は僕のベッドで布団を肩まで被ってむこうを向いていた。
椅子の上に美雪の服がきちんと畳まれて置いてあった。
僕も服を脱ぎ、ベッドの中に入った。
布団を捲ると美雪の華奢な背中が見えた。
美雪の肩に触れると、美雪は一瞬身を竦めた。
顔を僕の方に向かせた。

くりっとした瞳、小っちゃくて丸い鼻、ぷるんとした唇・・・。
こんなにまじまじと美雪の顔を見たのは初めてだった。
美雪はとても可愛かった。
僕は唇を美雪の唇に重ねた。
美雪の唇を吸った。
美雪は少し唇を開いて受け入れた。
舌で美雪の舌を軽く舐めると、美雪もそれに応えておずおずと舌を動かしてきた。
お互いの唇や舌が触れ合う音や吐息が僕の興奮を高めていく。
美雪も徐々に慣れてきて、僕の舌に自分から舐めてきた。
2人の吐息はだんだん荒くなり、舌は相手の舌を奪うように絡み合う。
美雪が突然顔を僕から外し、大きく息を吸った。

「はぁ、苦しかった・・・」

「どうした・・・?」

「・・・なんか胸がぎゅーんとなって・・・」

僕は布団を捲り、美雪の上半身を眺め、まだ固い感じが残る胸に触れ、頂を口に含んだ。
美雪は体をぴくんとさせた。
舌先で頂きを転がすと、いよいよ体が揺れだした。
美雪はくすぐったいのだ。
見るとしっかり目と口を閉じて耐えていた。

「くすぐったい?」

「うん・・・でも大丈夫・・・」

僕が脇腹や臍辺りに舌を這わせると、美雪はさらにお腹をひくひくさせた。
僕は唇を一旦美雪のお腹から離すと、横から抱いて体を密着させた。
もう一度キスに戻った。
一方で右手を徐々に下げていき、美雪の茂みに触れた。
脚は閉じられていたが、キスの熱が高まると少しずつ脚は開かれていった。
指を進める。
そこはまだ湿っているだけだった。
僕はゆっくりと指を動かした。

「・・・ううん・・・」

美雪が少し反応した。
僕は唇を首筋に移し、指も少しだけ深く沈めた。
脚がまた少し開いた。

「・・・んん・・・んん・・・」

美雪は首筋を仰け反らせ、吐息を漏らした。
僕の指に次第に滑らかさが加わってきた。
指を美雪の敏感な部分に軽く当て、動かした。

「・・・あっ・・・」

美雪がびくっと震えた。
耳を舐めていた唇を胸に移し頂きを転がすと、また震えた。
今度はくすぐったくないようだ。
指が熱い潤いの中に浸ってきた。
指の振動を速めた。

「いや・・・いや・・・」

美雪は僕にぎゅうっとしがみつき、訪れる波に備えていた。
ぴちゃぴちゃと指の間から音がする。
はあっと息を吸い込むと、美雪はぶるるっと痙攣した。
美雪の熱を帯びた頬が僕の首筋に押し付けられた。

「大丈夫か?・・・」

「・・・うん・・・びっくりした・・・」

思わず笑ってしまった。
僕は美雪から体を離すとスキンをつけた。
本当はひとつになる前にもっと美雪の体を確かめたかったし、美雪にも僕にそれをして欲しかったが、我慢した。
美雪の脚を拡げさせ、その間に体を入れた。
美雪は横を向いて目を閉じていた。
美雪の腿を持ち上げると、美雪の全てを見ることができた。
僕は僕自身を宛てがうと、美雪に体を重ねた。
一気に入りたいのをこらえて、慎重に浅いところでの律動を繰り返した。
美雪はさほど痛くなさそうだったが、体に異物が入る怖さが身を固くさせていた。
美雪の掌は冷たいのに汗でじっとりとしていた。
ゆっくり腰を沈ませた。
美雪の体が強張った。

「うん・・・大丈夫・・・そのまま来ていいよ・・・」

美雪は僕の問いかけにそう答えた。
そのうちだんだんと美雪の中での動きが滑らかになってきたので、僕はもう少し深く入った。

「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

僕と美雪の動きがひとつに重なりだした。
僕の動きにあわせて美雪から声が漏れる。
美雪の腰が僕を迎えに動き出した。
僕は根元まですっかり美雪に包まれていた。
最初より中が熱く感じられ、僕は急速に昂ぶった。
美雪の唇に噛みつくようにキスすると、美雪も応じた。

「もう少し速く動いてもいい?」

「うん・・・うん・・・いい・・・」

美雪の頭を抱えて体を密着させ、腰の動きを速めた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

僕の首に回された美雪の腕に力が込められる。
僕は美雪の名を何度も口走りながら昇り詰めた。

「やだ・・・それ恥ずかしいよ・・・」

ベッドの上で美雪は膝を曲げ、背中を向けてしまった。
美雪の胸から茂みへと徐々に唇を移動させ、いよいよ脚を開かせようとしている所だった。
明後日には美雪はシンガポールへ行ってしまう。
僕は美雪のあらゆる所に、僅かでも自分の痕跡を残したかった。
3週間前に初めて美雪とひとつになってからその思いは大きくなるばかりで、準備に追われている美雪を呼び出して家に誘った。
美雪は断らなかった。

「わかったよ・・・」

僕は仕方なく美雪の膝から手を離し、向けられた背中に体を密着させた。
美雪の胸を掌に包み、指先で軽く頂きに触れた。

「・・・あっ」

美雪の頂きは、さっきまで僕の舌で転がされた余韻が残っていて、まだ硬いままだった。
背中へ唇を這わせると、美雪は首を仰け反らせた。
そのままうつ伏せにさせた。

「・・・んんっ・・・んんっ・・・」

美雪は枕に顔を押し付けたまま、仔犬が甘えるような声を出した。
僕は唇を背中から腰へ、そしてお尻へと移し、舌でぺろっと舐めた。

「いやっ・・・」

美雪は体を捻って仰向けになった。
脚が開かれたので僕は難なくそこへ顔を埋めることができた。

「・・・やだ・・・やだったら・・・」

美雪は身を捩って僕から逃れようとしたが、僕は離さなかった。
美雪はもう十分に潤っていた。
僕は泉の入口に舌を潜らせた。
美雪のそこは匂いも味もほとんど無かった。
僕は泉の湧く所よりほんの少し上を舌先でつついた。

「あん・・・」

美雪は電気が走ったように体を震わせた。
僕はそこを中心に舌を動かしながら目を開けた。
美雪の薄めの茂み越しに、形の良い胸が、起きている時とほぼ変わらないまま揺れていた。
その向こうに羞恥と快感がないまぜになった表情まで見渡され、シーツに押しつけられた僕自身が痛いくらいに反った。

「んっ、んっ、んっ、んっ・・・」

その瞬間、美雪は枕で顔を覆った。

「・・・バカ・・・スケベ・・・」

美雪がうらめしそうに呟いた。
美雪は火照った顔を僕の胸に押しつけている。

「じゃ、スケベついでに・・・」

僕は美雪の手を取り、僕自身へ導いた。
美雪は抗わなかったが、その手は僕自身に添えられただけだった。
美雪の手に僕の手を重ね、ゆっくりと握らせ、上下させた。
しばらくそうしていると、僕が手を離してもそのまま美雪の指は僕を握り、おずおずと運動を繰り返した。

「美雪・・・」

美雪が顔を向けた。
見つめ合った。
そのあと美雪は視線を下げ、迷うような顔になった。
僕がどうして欲しいのか察したようだ。
沈黙が続いた。
美雪の手だけが動いていた。

「もし布団を捲ったら、私帰るから・・・」

美雪は頭から布団を被ると、僕の脚の間にうずくまった。
程なく僕自身に温かくて柔らかい感触が訪れた。
初めはちょんちょんと控えめな刺激が続いた後、とうとう先っぽ全体が包まれた。
根元は休みなくしごかれている。
布団が小刻みに揺れていた。
僕は布団の中の美雪を想像して、うっとりとなった。
昂ぶりが急速に体を突き抜けた。
堪らなくなった僕は布団を剥がし、美雪の・・・。

「美雪・・・美雪ぃっ・・・」

1人寝転がったベッドの中で僕は達した。
久しぶりの自慰のせいか、いつもより長い絶頂が続き、その後徐々に高まった熱が少しずつ冷めてゆく。
僕は体を起こし、自分の痕を拭うと大きく息を吐いた。

合同模試が終わった後、木枯らしに身を竦めながら帰宅すると、郵便受けに手紙が差し込まれていた。
美雪からだった。
美雪たちが日本を発って半年以上が経っていた。
彼女たちが目の前から居なくなってから、僕はしばらく落ち込んでいた。
ようやく夏休みが終わる頃に元に戻ったが、それでもぽっかりと開いた穴は今でもきれいに埋まった気がしなかった。
封を切り手紙を開いた。

『元気ーーぃ?』

文頭に色つきの文字が躍っていた。
美雪の声が聞こえてきそうだ。
手紙には学校のバスケット大会で優勝したこと、両親とタイへ旅行に行ったこと、その両親が今は陶芸に凝っていること、もっと語学を勉強して将来は通訳になりたいと思っているといった内容がとりとめも脈絡もなく綴られていた。
僕はすぐ横で美雪のおしゃべりに付き合わされているような気になった。
でもそれはとても楽しいことだった。

写真が同封されていた。
見ると、手を繋いでいる美雪の両親が写っていた。
美雪の母親は少しふっくらしたような感じがした。
そして、その横に小麦色に日焼けした美雪と、その肩を抱いている背の高いインド系っぽい男が写っていた。
裏返すと『彼はただのクラスメートです。誤解しないでね』と書いてあった。

「おい!初めての男に他の男に肩を抱かれた写真を送るかよ!不倫した男に旦那と手を繋いだ写真を送るかよ!」

僕は声に出してツッコミを入れた。
まったく、女って逞しいや・・・。

僕はベッドにどーんと体を投げ出した。
僕がうじうじしている間に、彼女たちは自分たちの居場所を見つけて、馴染んで、根を下ろしていた。
笑いが込み上げた。
笑い声がだんだん大きくなっていった。
そうすると心の中の澱が少しずつ無くなっていくような気がした。

ピンポーーーン!

呼鈴が鳴った。

(誰だろう)

あいにく両親はいつものように日帰り温泉ツアーに出かけていた。
僕はベッドから起き上がった。
ドアを開けると、見知らぬ女性が立っていた。

「あのー、私、この地区の担当になりまして、そのご挨拶に参りました」

保険の外交のおばさんだった。
おばさんは、よく見ればわかるのに、僕をこの家の主と勘違いして営業トークを始めたが、ひどくたどたどしかった。
たぶんこの仕事を始めたばかりなのだろう。
おばさんは30代くらいで肉感的な体をしていた。
この寒いのに何軒も回ってきたのだろう、額に薄っすらと汗が滲んでいた。
汗と香水の混ざった匂いが僕の鼻腔をくすぐった。
それは久しぶりに僕の中の何かを呼び起こす刺激だった。

「あの・・・外寒いし、中に入りませんか?」

おばさんは、「あ、ありがとうございます」と深々とお辞儀をした。
ジャケットの下の薄手のセーターの胸の辺りがぶるんと揺れた。

(僕も懲りない奴だなぁ・・・)

おばさんを居間に案内しながら、自分に呆れていた。
でも、これから楽しいことが起こりそうな気がして、自然に顔がほころんできた。

<続く>