妻のひとみは私と同い年の42歳。
高校生の頃から交際を始め、別れたり復縁したりを何度か繰り返しながら、13年程前に結婚した夫婦です。
子供にはまだ恵まれておらず、妻は不動産屋で夕方から閉店までの仕事をしています。

妻はかなりの美人で、私の友人からも、「お前の奥さん20代に見えるし綺麗でいいなあ。一度でいいからデートしたいよ」と羨ましがられます。
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美しく、男から言い寄られることが多いのに身持ちが堅いというのも妻の長所ですね。
私はそんな妻を嬉しく思いながらも物足りなさを感じていました。

4日前の日曜日でした。
不動産屋の忘年会があるとのことで、私が出勤する夜8時半頃、妻は普段より少しお洒落をして出掛ける準備をしていました。
忘年会は夜10時からとのことで、当日出勤の人は閉店後に合流するのだそうです。
私はいつも通り仕事に行きました。
日曜日は暇なので深夜2時すぎには一仕事終わります。
トラックを走らせながら営業所に戻る途中でした。
たまたま妻が忘年会を行うと言っていた居酒屋のある通りを走っていたので、私は何の気なしに、ちょうど終わったくらいなら送ってやろうと思い、妻に電話をかけました。
コールは鳴るものの妻は出ません。
私達夫婦は、お互いがそれぞれの友達などと飲みに出たりしている時も、楽しい時間を邪魔しないために電話などは極力しないようにしています。
あまり干渉し過ぎないことが夫婦円満のコツかな・・・とも話し合っていますので。

その時もたまたま通りがかったから電話したという程度なので、妻が出ないことはそれほど気になりませんでした。
さらに一仕事終えて朝を迎え、帰宅すると妻は熟睡中でした。
翌月曜日は私も妻も休みだったので、夜は2人で晩酌をしました。

「昨日の忘年会はどうだった?たまたま店のとこ通ったから電話したけど、盛り上がってて出なかった?」

私が話を振ってみると、妻は携帯を開いて確認したようで、「ごめん、気付かなかったよ。2時半くらいだとカラオケに移動してたなぁ」と返してきました。
その後、妻は忘年会の様子を話し始めます。
開店から夕方までの勤務は妻と同年代のパートも多いらしいのですが、やはり夫や子供がいるので忘年会に参加する人はおらず、当日は店長以外では妻が最年長で、ほとんどが20代前半の若い子達だったそうです。

「私はお姉さん的なポジションで慕われてるから・・・」

笑いながらうそぶく妻ですが、やはりカラオケとなると世代の違いを感じたと嘆いていました。
私が、「お姉さん的に慕われてるって言ってもなぁ・・・。やっぱりひとみさんに惚れてます、みたいな奴でもいないことには・・・」と何の気なしにからかったのですが、それに対して妻が気になる話を始めたのです。

「バカにしてるみたいだけど、私だって結構捨てたもんじゃないんだからね」

「お?若い同僚にコクられでもした?」

私が冷やかしながら返すと・・・。

「う~ん・・・コクられたっていうか・・・。まぁ飲みの上での話だから怒んないで聞いてよ?」

そう妻が前置きして始めたのはこんな話でした。
妻は不動産屋で働き始めて2年ほど経つのですが、同じ時期に入ったK君という男の子がいるそうです。
K君は現在22歳で社員として入社しました。
同時期に入ったものの、社員であるK君は覚えることも多く仕事の責任も重かったので、一時期悩んでいたそうで・・・。
そんな時は妻が相談相手になっていました。
実際に2人の弟を持つ妻なので、K君にしても良いお姉さん的な感じで色々話せたのでしょう。
立ち直ったK君は仕事をよくこなし、現在はバイトをまとめるチーフなのだそうです。
妻は自分が少しでも役に立ってK君が頑張っている姿を見ると、本当の弟のように嬉しいと話します。

そのK君なのですが、忘年会の居酒屋でだいぶ酔っ払ったようです。
若い女の子達は面倒くさがっていたので、妻は自分が飲みながらもK君の相手をしていたそうです。
その時、1人の若い女の子が、「なんだかチーフとひとみさん、年の差カップルみたいでお似合いですよね」とからかいました。

「ちょっと~、年の差って失礼ね」

と、妻は笑いながら返したそうですが、K君は・・・。

「でしょ?俺はずっとひとみさんが好きなんだよ・・・。でもさ・・・ひとみさんには旦那がいるんだもん・・・」

呂律が回らないながらも、そんな事を言ったそうです。
結局その場は、「ひとみさんは旦那さんとラブラブなんだからチーフじゃ無理ですよ~」という若い子のからかいにK君が怒りながらも落ち込んでという、酒の席にありがちなグダグダな展開で終わったそうです。

一次会が終わり、カラオケに移動ということになりました。
妻は帰ろうと思ったらしいのですが、まともに歩けもしないK君が、それでもカラオケに行くと言って聞かず、心配で一緒に行くことに。
カラオケは結構盛り上がったらしいのですが、そこでちょっとした事件が起きました。
トイレに行ったきり帰って来ないK君を、他の男の子が見に行くと案の定ぐったりしていたそうで、肩を貸して部屋の前まで連れてきたものの、「ひとみさんが迎えに来てくれないなら部屋に入らない」と、訳のわからないクダを巻いているとのこと。
妻は仕方なく面倒を見ることにしたそうです。
ロビーで水を飲ませながら介抱していると、酔ったK君は妻にコクり始めたそうです。

「嬉しいけど、私はおばさんだしさ、旦那もいるし・・・。K君にはもっと良い子がきっと見つかるよ」

妻がやんわり嗜めると、K君はフラフラした足取りで外へ出て行きました。
当然、妻は心配でついて行きます。
するとK君は車に乗り込みエンジンをかけたそうです。
悪いことに居酒屋からカラオケまで運転代行を頼んでK君の車に乗り合わせて来ていたのでした。
慌ててK君を止める妻。
かなりの泥酔状態ですから運転させるわけにいきません。
助手席に乗り込んでなだめすかし、なんとかエンジンを止めさせるところまでいったそうです。

「いい加減にしなさいよ。飲酒運転なんて最低だからね!」

妻はそう叱りつけました。
すると酔いのせいもあるのか、K君は泣き出す始末。
放っておけば良いのにと思ったのですが、妻は年長者でもあり母性をくすぐられたとかで、放っておけず慰めたのだそうです。
ぐったりしているK君を抱くようにして頭を撫でたりしながら、どうにか無事に帰宅させる方法を考える妻。

「好きなんです・・・好きなんですよ・・・。ひとみさんが好きなんです・・・」

K君はうわ言のように呟いていたそうで・・・。

妻は、「そんなに私のこと好きでいてくれるなら言うことを聞いてくれるでしょ?」と語りかけました。
何度も頷くK君。

「じゃあ今日はもう帰ろうね?」

妻が言うとK君は素直に頷きました。
運転代行を頼み、後は任せようと思ったらしいのですが、少し心配になった妻は面倒ではあったものの一緒に乗ってK君の家からタクシーを頼むことに。
車の中では妻に寄りかかってずっと眠っていたK君。
ふらつく身体を支えながら部屋の前まで連れて行ったそうです。

「で、何事もなくタクシーで帰って来たの?」

妻が一通り話し終えたところで聞きました。

「う~ん・・・何事もなく・・・ではないか・・・」

「なに?そのまま襲われたとか?」

「それはないけど・・・キスされた・・・」

意外とあっさり話す妻。

「怒らないでよ?K君はかなり酔ってたし。普段は真面目な良い子なんだから・・・」

当然怒りと嫉妬はあったのですが、同時にちょっと楽しみな感覚もありました。

「なんで?無理やりされたの?」

首を横に振る妻。

「『キスしたい』って言われたから・・・なんだか可哀想な感じがしたし、断ってまた泣かれてもね・・・」

妻はそこまでしか話しませんでした。
それ以上、何かあったのか、無かったのかわかりませんが・・・。

<続く>