10年くらい前、記憶が曖昧なくらい酔っ払って家に帰る途中、前から気になっていたスナックにふらりと入ってしまった。

いつも仕事の帰りに通るときはやっていなくて、深夜にコンビニへ買い物に出たときなどには明かりが灯っているという、夜遅くから朝までというスタイルのスナックだ。
PCMAX
窓が曇りガラスになっていて、中がどうなっているのか、何度その前を通っても分からなかった。
駅からはだいぶ離れた住宅街の中にあるので、地元の常連客しかいないだろうと思うと、20代の僕としては入る気にもなれなかった。
ただ、ときどき漏れ聞こえてくるカラオケの声が店のママらしき女性の声だったりすることがあって、それについては(艶っぽい、いい声だな・・・)となんとなく思っていた。

その夜、どうしてその店に入ってしまったのかは、自分でもよく分からない。
酒のせいで人恋しくなっていたのと、明け方になっていたので、「もう閉店です」と言われるのを見越してドアを開けていたような気がする。
本気で飲みたいわけではなくて、中の様子がチラッとわかって、ママの顔を確認できればそれでいいという気分だったんじゃないだろうか。
いずれにしても、僕は千鳥足でドアに近づくと、体重をかけるようにしてドアを押し開けた。

「あら・・・」

開けると、思っていたよりも豪華な感じのする店内が目の前に開けた。
内装が赤と黒で統一されていて、雰囲気は明るい。
いや、明るいというより華やかで、安っぽい子供っぽさは一切なかった。
10人くらい掛けられる黒いカウンターとソファ張りのテーブル席が二つ。
自分の家の近くにこんな立派なスペースがあったのかと内心気押されてしまう。

「あら」と最初に声を出したのはカウンターに座っていた熟女だった。
赤いドレスを着ていたから瞬間にママだと思ったが、カウンターの中にももう一人熟女がいて、そっちは黒いドレスを着ていた。
その2人が少し驚いたような顔でドアを開けたまま固まっている僕を見ていた。

「あの・・・まだやってますか?」

ドアにもたれるように立って尋ねると、また2人の熟女が顔を見合わせた。

「ん、いいわよ。もう閉店にしようと思ってたけど、まだ閉めたわけじゃないから」

赤いドレスの熟女がスツールに腰掛けたまま、そう言って微笑んだ。
その堂々とした佇まいに何となく気圧されつつ、店内に一歩踏みだす。
その途端に膝がカクンと折れて僕は床に片膝をついてしまった。

「あらあら、大丈夫?」

赤い熟女が笑い声を含んだ声で言ってくるが、スツールから下りてくることはなかった。

「だ、大丈夫です。一杯だけいただいて帰ります」

僕はそう言ってヨタヨタと立ちあがると、入口に近いところにあったソファにどっさりと座り込んだ。
我ながらみっともない酔い方だと恥ずかしくなったが、目が回ってしまっていてどうにもならなかった。

「何飲むの?」

これはカウンターの中の黒いドレスの熟女が言った。

「角の水割りを・・・」

「はいはい、角の水割り、水多めね」

からかわれていると思って顔が熱くなったが、水は欲しかったので嫌な気分にはならなかった。
ただただ自分が情けなく、しゃんとしようとするのだが首が据わらない。
瞼も落ちそうになってくる。
それをこじ開けるようにして見ていると、黒熟女がカウンターの中で作った薄い水割りを赤熟女が受け取って僕のいるテーブルに持ってきてくれた。

赤熟女は「はい、どーぞ」と言ってグラスを置くと、「こんなおばちゃんしかいない店だけど・・・」と言いながら僕の隣にドスンと腰掛けてきた。
そのままぴったりと密着してくる。
見るからに豊満だったが、腕に触れてくる赤熟女の肉はビックリするほど柔らかかった。
眠気を誘う柔らかさで、ますます首が据わらなくなってくる。
赤熟女に首をもたせかけて眠れたらどんなに気持ちいいだろうと思った。

「あら~、もうおねむになっちゃった?」

カウンターの中から黒熟女が言ってくる。
それから少し赤と黒の2人だけで何かゴニョゴニョ言っている気配があって、黒熟女が看板を内側に入れているガタガタという音がした。
ドアが閉まって、鍵の掛かる音がして、急に店内の空気の密度が濃くなったような気がした。
閉店した後も僕を店に置いてくれているということに対して、僕の中になんとはなしの下心が芽生えてきた。
当時は僕もまだ二十代。
熟女に可愛がられるというのもあり得なくない話だったから。

実際、隣に座って密着してくる赤熟女は、僕の太腿に手をのせてゆっくりと撫で回すような動きを見せていた。
急速に酔いが覚めていくような気がした。
もちろん嫌だったからではなくて、チャンスの到来に身体が緊急事態宣言を出したような感じだった。
僕は敢えて酔ったままのふりを続けながら、神経を研ぎ澄ませて2人の熟女の気配をじっと窺うことにした。
我ながらいやらしい男だったと思う。

「ねぇ、お姉ちゃん、この子、もう起きていられないみたい」

赤熟女が笑いを含んだ声で言いながら僕の頭に手を置いてきた。

「あらぁ、あんまり無防備にされると、つい悪戯したくなっちゃうわねぇ」

近づいてきた黒熟女の答える声が艶っぽい。
僕は寝たふりをしているわけではなかったから、2人は僕に聞かせるようにわざとそんなことを言っているのだと思った。

「私も横に座っちゃおうかなぁ。2人でサンドイッチしちゃおうか?」

黒熟女の言葉に赤熟女が同意して、テーブルの位置が少しズラされた。
黒熟女が僕の前を通って赤熟女とは反対側に腰掛けてくる。
他にひとりの客もいない閉店したスナックの中で、左右から濃い香水の匂いが押し寄せてくる。
両側から太腿に手を乗せられる。

「僕ちゃーん、もうおねむなんでちゅかー?」

「悪戯されてもいいんでゅかー?」

右から左から耳元に息を吹きかけられると、僕の股間が正直に反応してズボンを下から押し上げた。

「うぅーん・・・」

僕は甘えたような声を上げて泥酔していることをアピールしつつ(もちろん大量のアルコールが体内にあることは事実だった)、姉妹らしい2人の熟女がいったい何をしてくるのか、こみ上げる期待に心臓をバクバクさせていた。

左右から密着してくる姉の黒熟女と妹の赤熟女。
化粧と店内の薄暗さで年齢はちょっと分からなかった。
ただムンムンに香るフェロモンと肉の柔らかさでどうにも勃起が止まらない。
酔ってスケベになった僕は自分でも嫌になるほど浅ましい男だった。

「大丈夫?もう飲まないの?」

赤熟女が僕の顔を覗き込みながら聞いてきた。
僕は半眼になって、「ううん、飲むよ・・・」とグラスを口に当てて薄い琥珀色の液体を咽喉に流し込んだ。
そうしながらもベロンベロンに酔っている演技を少しオーバーにし続けた。

「そんなに一気に飲んじゃダメ。もっとゆっくり飲まないと。おばちゃんが口移しで飲ませてあげよっか?」

黒熟女が反対側からそう言ってきて、赤熟女が、「おねぇちゃんズルい~」と言いながら僕の腕に豊満なバストを押しつけてきた。
なんだか僕にとってどんどん嬉しい展開になってくる。
でも焦りは禁物だと酔った頭で考えて、まずはされがままになることにした。

「だってぇ、この子、可愛いんだもん」

「おねえちゃん、いい男が来るといっつもそうやって自分のものにしようとして」

「ふふふ、ちゃんといつもお裾分けはしてあげてるでしょ」

そう言いながら黒熟女が僕のシャツの上から乳首に指を当ててきて、僕は演技をする間もなく「あっ」と呻いてビクンとなった。

「ほら、すごく感じやすいみたい」
「もう、おねえちゃん。この人、今日初めて来てくれたんだよ?」

「でもベロベロに酔っちゃってるみたい。そういう子には気付け薬をあげないと」
「何よ、気付け薬って?」

「そうねェ・・・」

黒熟女が僕の耳に唇を寄せて来て、「何がいいかなぁ?」と甘ったるい声で囁きながら、ズボンを突っ張らせている勃起の根元に手をスルスルと寄せてきた。

<続く>