同僚のTとその奥さんが、俺の家に遊びにきていて、俺の妻と4人で酒盛りになった。
俺は酒を飲むとすぐに頭が痛くなってしまう体質で、その夜もビールを飲んでいるうちに頭がガンガンしてきたので、すぐに横になった。

Tは体育会系のスポーツマンで、ウインドサーフィンをやっていて酒にも強い。
Tたちはビールを数本空けて、今度は焼酎を飲み始めた。
俺の妻も結構酒が強いのだが、お摘みを作ったりして、しょっちゅう台所に立つので、あまり飲んでいないようだった。
俺に続いて、Tの奥さんがダウンして横になった。
俺の妻は、「汗をかいた」と言って風呂に入りにいった。
Tもしばらくは一人で飲んでいたが、とうとう横になって、3人がテーブルの周りで雑魚寝する形になった。
俺は頭がまだ痛んで、眠ることもできずに、ぼーっと部屋の灯りを見上げていた。

しばらくして、俺の妻がお風呂から出てきた。
妻は横になっている俺を見て起こそうとした。
俺はパジャマに着替えさせられるのが面倒だったので、とっさに目を閉じて眠ったふりをした。
妻は俺を起こすことを諦めて、テーブルのそばに座ると、残っていた焼酎をちびちび飲み始めた。
すると、眠っていたはずのTが身を起こして俺の妻に声をかけた。
妻とTはテレビを見ながら酒を飲み始めた。
俺は眠ったふりを続けて、薄目を開けて二人の様子をちらちら見ていた。

妻はタンクトップにショートパンツという格好で、お風呂上がりにはいつもこうなのだが、両肩と太ももが剥き出しで、いくら友人と言っても、俺以外の男の前でこんな格好でいるのはいかがなものか、と俺は痛む頭の中で考えた。
お風呂上りで、黒髪がまだ濡れてつやつやしていて・・肌が首筋までほんのりピンク色に染まっている。
夫の俺から見ても色っぽかった。

まだぼーっとしている俺の頭では二人の会話はよく聞き取れなかったが、そのうちにTの持病の腰痛の話になった。
あつかましいことにTは、俺の妻に「腰を押してくれ」と言い始めて、妻がやるとも言わないうちから、さっさとうつ伏せになってしまった。
俺は普段からめちゃくちゃ気の強い妻を見ているので、この時も、てっきり妻が怒って、口癖の「ばかじゃないの」とでも言って部屋を出て行くのではないかと思った。
ところが意外なことに、妻はくすくす笑いながらTの腰に手を当てて、「どこがいいの?ここ?」と尋ねている。
Tは、「全然力が入っていない」と文句を言って、もっとちゃんと押すようにとせがみ始めた。
妻は、しょうがないわねえと笑いながら駄々っ子のお願いを聞くみたいに、「はい、はい」と言ってTの腰を押すために体を起こした。
妻が立ち上がったので、足でTの腰を押すのかなと思ったのだが、なんと妻はTの体を跨ぐと、そのお尻の上にべったりと座りこんでしまったのだ。
そしてTの広い背中の上にのしかかるように、両手の指を腰に当てて指圧を始めた。

俺の心臓がドキドキし始めた。
妻の顔が見る見るうちに真っ赤になり始めたのは、一生懸命押しているためか、焼酎の酔いが回り始めたのか、それとも何か別の理由からだろうか。
Tは、「おー、気持ちいいよ」と大袈裟な声を上げた。
でも、いくら妻が顔を真っ赤にして押しているからといって、か弱い女の力ではたかが知れている。

「気持ちいい」のは、力を入れて押すために腰をぎゅっと挟んでいる妻の剥き出しの太ももの感触じゃないのか、と俺は勘ぐった。

妻が、「きゃ!」と小さな叫び声を上げた。
俺の位置からはよく見えなかったが、Tの手が、“間違えて”妻の太ももに当たってしまったらしい。
Tはにやけた顔で、「ごめん、ごめん」と謝っている。
それでも妻は座ったままマッサージを続けている。
それからも、なぜかTの手が間違って妻の膝小僧や太ももに当たるので、妻は握りこぶしでTの背中をどんどん叩いて反撃し始めた。
でも、なぜか妻はきゃっきゃと笑って楽しそうで、俺と喧嘩する時と違って、こぶしにも全然力が入っていないみたいだ。
眠ったふりをしたままの俺は、これからどうなってしまうんだろうと、どんどん心配になってきた。

妻が体をどけてTが起き上がった。
Tが今度は、「自分は肩を揉むのが上手い」などと言い張って、妻の肩を揉んでやると言い出した。
Tは、なんというか女あしらいが上手くて、俺には絶対真似できないのだが、女性にこういうことを言っても、あまりいやらしく聞こえないのだ(少なくとも、相手の女性に対しては、ということだが)。
妻はしばらくの間は断っていたが、酔っ払ったTがしつこく言うので、とうとう観念してTに背中を向けて正座をした。

Tの肩揉みは、自分で自慢するだけあって上手いみたいで、最初はくすぐったそうにしていた妻も、だんだん言葉少なになって気持ちよさそうにして、マッサージに身を任せている。
妻の華奢な剥き出しの肩や腕を、Tがその日焼けしたがっしりとした手で無遠慮に触りまくっているのだ。
俺の心臓がますます高鳴って、口から飛び出しそうな感じとはこのことだった。
俺は心の中では、大声で怒りたいような、泣きたいような気持ちが入り乱れて、胸が張り裂けそうに鳴った。
それでも俺はたぬき寝入りを続けた。
俺は切羽詰った場面になると、いつも余計なことをくよくよ考えてタイミングを逃してしまうのだ。
この時も、今、俺が起きたら、3人とも気まずくなるんじゃないかとか、Tとはこれからも仕事で顔を合わせるので、変な感じになるのはまずいんじゃないか、などと色々考えてしまったのだ・・・orz

Tが大人しく肩揉みをしていたのは最初のうちだけだった。
妻が笑い声を上げる。
Tが妻の腰のくびれた部分やわき腹を触り始めたのだ。
妻はTに対して怒るどころか、俺を起こさないかと恐れるように、笑い声を必死で抑えて腰をくねらせるようにして、Tの攻撃をおざなりにかわしているだけだった。
怒りとも悲しみともつかない気持ちと、これから二人はどうするんだ?という不安(と期待)で胸が張り裂けそうになった。
そして一番情けなかったこと、それは、先ほどから、俺のアソコがカチンカチンになっていたことだった・・・orz

その時、ずっといびきをかいて寝ていたTの奥さんが、うめきながら体を起こした。
妻とTは慌てて体を離した。
妻は立ち上がって、そそくさと台所へ駆け込んでしまった。
Tの奥さんは、二人の様子には全く気づいていなかったようだ。
奥さんが気持ち悪そうに口に手を当てて、「吐きそう」と言い出したので、しばらくの間大騒ぎになった。
妻が洗面器を持ってきたり、Tが奥さんの背中を擦ったりしている間も、俺はやっぱりたぬき寝入りを続けていた。

Tの奥さんがやっと落ち着いて再び横になった。
妻とTも、なんだかしらけたような感じになって、妻は寝室へさっさと引き上げてしまい、Tは奥さんの隣で横になると、すぐにいびきをかき始めた。
俺も起き上がって、寝室に引っ込めばよかったのだが、タイミングを逃した気分で、そのまま横になっていた。
酒と異常な興奮のせいで頭がガンガン痛むのに、目が冴えて眠ることができない。
もちろん俺はほっとしていたが、一方で少し失望したような気持ちを感じていて、自分でも驚いた。
その夜はとうとう一睡もできずに、リビングでTたちと雑魚寝をしたまま一晩を過ごした。

明け方に近づいた頃だった。
Tがもぞもぞと体を動かして起き上がった。
俺はとっさに目を閉じた。
俺が薄目で様子を窺っていると、Tは体をふらつかせながらリビングを出て行く。
俺の心臓が再びバクバクと言い始めた。

Tが妻の寝ている寝室に入って行ったらどうしよう?
そして、妻がTを追い返さなかったら・・・。

俺は息を止めて、必死で耳を澄ませた。
Tはどうやらトイレに入って小便をしているようだ。
そしてすぐにリビングに戻ってきて、元の場所に倒れ込むようにして、すぐに寝入ってしまった。

朝の7時くらいに、ようやくうとうとし始めたと思ったら、そのまま眠ってしまったようだ。
目が覚めると、もう昼前だった。
俺が起き上がると妻が、「おはよう」とにっこり微笑んだ。
俺は、思わず妻の顔をじっと眺めてしまった。
昨晩は何事もなかったかのように妻はケロリとしていて、俺の方がドギマギして顔を伏せてしまった。

それから数ヶ月間は、妻がTと浮気をしてはいないかと、くよくよ悩む毎日だった。
平日はTとは会社で一緒なので平気なのだが、休日になって妻が一人で出掛けたりすると、俺はひとり家の中で、妻がTと会っていやしないかと身悶えしていた。
普段はすっぴんの妻が念入りに化粧をしたり、珍しくスカートを穿いただけで、疑り深くなってしまった。

そして、あの夜のことを思い出しては、あの時、Tの奥さんが起きなかったらどうなっていただろう?とか、Tが寝室に入っていったら俺はどうしただろう?寝室に飛び込んでTになぐりかかっていただろうか?それともじっとしたままだっただろうか?などという考えを弄り回していた。

結局、あの晩のことは酔っ払いのおふざけだったのか、その日以降、二人の間には何事も起こらなかったようだ。
もっとも、俺の注意の届く範囲内では、ということだが・・・。