階段を上がった先は左右二つの部屋に分かれている。
一つはピアノの個人レッスン用、一つはリトミックといって、早い話が幼児の音楽教室用で、幼児は踊ったりするための広い部屋だ。
結衣が飾り付けをするのもそこだった。
PCMAX

リトミック用の部屋の扉は少し開いていたため、俺は階段の一番上から一段下がったところに座り、そこで部屋の中の音を聞こうとした。

男女の声がした。
結構テンションが高く、お酒が入っているのかな、と思わせるようだった。
最初は話の途中だったために、何を話しているのか判らなかったが、途中から話が変わって結婚の話になった。
扉は真ん中の部分がガラス張りになってるため、そこからそっと覗くと、両者とも扉に背を向けた形でL字形に座っていた。
一瞬だけ覗いて、すぐにまた階段に座った。

「あーあ、俺ももうすぐ結婚だわ」

一度しか会ったことがないので、確信は持てないがおそらく晃一の声だった。

「なんでー、嫌なの?結婚っていいと思うけどなあ」

これは間違いなく結衣。

「まぁ、いいっちゃあいいけどさあ」

「なんで?嫌な理由でもあるの?」

「えー、だって結衣と結婚できないじゃーん」

笑いながら晃一が言う。

(こいつは何を言っているんだ)と頭の中で“イラッ”という効果音が鳴るのがわかる。

「何言ってるのー。晃一は加奈ちゃん(晃一の彼女)を幸せにしなさい」

「加奈は幸せにするけど、結衣は俺のアイドルだからさ。ってかふられたし(笑)」

「まー、タイミングが悪かったよ。でも、私は和真のアイドルだから、もう手出しちゃダメだよ」

この結衣のセリフはすごく嬉しかった。
この時点で出ていってやろうとも思ったが、何を思ったかもう少し二人のやり取りを聞いていようと思い、階段に腰掛け続けた。

一瞬の沈黙が流れた後に、「ちょーっと・・・」という結衣の声がした。
慌てて扉のガラス部分から中を覗いてみると、晃一と思しき男が結衣の肩に手を回していた。

「いいじゃん」

晃一が言う。

「ホントにだーめ。晃一酔いすぎー。私も酔ってるけど、晃一よりはマシだな。ここまでで終わり!おさわりは厳禁です」

笑いながら結衣が言う。
断りながらも、断った後で空気が悪くならないように気を遣っているのだろう。
結衣らしい断り方だ。

「えー、じゃあキスだけしていい?」

「いや、ホント無理。加奈ちゃんいるでしょ。私も和真いるもん。だからダメでしょ。」

「俺も加奈いるし、結衣には和真くんいるよ。だからお互い結婚する前に最後」

と言うが早いか、後ろからだとはっきりは見えなかったが、晃一が結衣のあごを持って強引にキスをしたと思う。

「ちょっと、ほんとやめて。手伝ってくれるって言ったから連れて来たんだよ。こんなことしたらもうみんなで遊べないよ」

結衣が怒って、というよりも悲しそうに言った。
そんな結衣の悲壮感とは対照的に、晃一は笑いながら、「別にみんなで遊ぶときはそのとき。大丈夫でしょ」と言う。

さらに晃一が言い放った一言に、俺は脳を揺さぶられた気分だった。

「だって、前に俺らエッチしたじゃん」

その言葉を聞いたとき、本当に脳天からキリで穴を空けられたんじゃないかと思うくらい、全身に電流のようなものが走った。
あれをショックと言うのかもしれない。
付き合った後、成り行きでお互いの恋愛の話を聞いていたが、晃一と付き合ったなんて話は聞いたことがなかったし、付き合わないのにセックスするなんてありえない、と言っていたはずだ。

「あの時は別れたばっかで、何かおかしかったから。もう過去のことでしょ。お互い忘れよ」

結衣がこれまた悲しそうな声で話す。

「一回も二回も一緒だよ。あの後だって結衣、俺に好きって言ってくれたじゃん」

「あの時はね。若かったんだよ。今は和真が好きだから・・・。あのとき私が『中途半端なことしてごめん』って言った時、『俺らこれからも友だちだよな』って言ってくれてすごくホッとしたんだから」

気のせいか、結衣の声が涙混じりになってきた気がする。

「あー、ごめん。そうだね」と晃一。

晃一がこれで怯んだと思った俺は、少し落ち着いた。
そして、この場は見なかったことにして、一度外に出て音を立てながら入って行ってほうが、とりあえず平和なんじゃないかという事を考え始めていた。
でも、性欲に支配された男はそんなものではめげなかった。

「ごめん。でも、結衣の涙見てたらホント抱きたくなった」

そう言いながら、また結衣に覆いかぶさりキスをした。
そのまま今度はそのまま胸を掴み弄り始めた。

「イヤ、イヤ・・・」と体をよじっていたが、晃一が自分の顔を結衣の顔の横に持ってきて、耳を舐めた瞬間に「んっ」という声が出た。

いや、声ではなくてあれは息だった。
晃一は耳がポイントだと思ったのか、しばらくの間耳を舐め続けた。

「いや・・・んっ・・・はぁっ」

結衣が声にならない声を出し始める。
いや、これは廊下で見ている俺の耳には届いていなかった。
いつもは耳元で聞こえる結衣の声を頭の中で思い出し、聞こえているような気になっていたのだと思う。

そのまま晃一は耳から首筋へと顔をずらし、首筋から結衣の正面へと顔を持ってきた。
そして、一瞬、結衣と顔を正対させた後、結衣の唇に自分の唇を重ねた。
さっきは瞬時だったキスが今度は、1秒、2秒、3秒、4秒と続いた。
唇を一度離して、もう一度重ねる。
顔と顔の角度が付き、先程のキスとは違って、明らかに同意の上のキスだった。
ここからは部屋に入っていくことも、その場を立ち去ることも、俺の選択肢には無かった。
というよりも完全に思考がストップして、そこで覗いて見ているしか出来なかった。
俺の下半身は当然ギンギンに硬くなっていた。
このスレのことが頭に浮かんだ。

晃一は結衣の全身にキスをしながら、結衣の服を脱がせていく。
結衣は上半身を脱がされかけたところで、手元のリモコンで電気を消した。
胸を見られたくないのだろう。
だが、晃一にとって見れば、この行為は“完全にこの女をものにした”と思った瞬間だろう。

そこからは普通の男女だった。

電気を消したが、窓からは夜の街の光が入ってくるので、こちらから二人の姿は割とはっきり見えた。
晃一は結衣の胸に顔をうずめる。

「あっ・・・あっ・・・恥ずかしい。見ないで」

結衣が言うが、晃一は返答することなく、愛撫を続ける。
そのまま胸と同時に下半身へと手を伸ばす。
恐らく下着の上から、結衣の股間を触りだした。

「んっ、んっ、ダメだって・・・いやっ」

そう言いながら、とても本気でだめだと思っている様子は無い。
さっきの「ダメ」とは180度違う「ダメ」だ。

そして、晃一は結衣の下着を取り、結衣は衣服を何も着けていない状態になった。
窓からの光が彼女を浮かび上がらせ、影絵のようできれいだった。
でも、結衣を触っているのは俺ではなかった。

下着を脱がせた晃一は口で結衣の股間を愛撫しようとした。
しかし、さすがに「恥ずかしい。絶対ダメ!」と今度は本気の拒絶をした。
それには晃一も素直に応じ、指での愛撫を始めた。
結衣は感じてくると、相手にしがみつく癖がある。
その時も最初は「んっ・・・」といった大人しい感じだったが、だんだんと「あっ、あっ!やばい、きもちっ・・・あん」という声に変わり、その細い腕は晃一の体に巻きつけられていた。

晃一の愛撫は執拗だった。
声を出すこともなく、黙々と指を動かす。
と言っても、こちらからは晃一が動いているのは見えない。
ただ、男と女が密着し、女が声をあげているだけだ。
晃一が愛撫を続けていると、結衣の声がさらに激しさを増した。

「結衣めちゃめちゃ濡れているよ。気持ちいいんだ」と晃一。

「そんなこと言っちゃやだ。恥ずかしい・・・」と結衣。

そして・・・。

「やばい、無理・・・はずかしっ・・・あんっ!あっっ・・・いく・・・」

結衣は晃一の指だけで絶頂を迎えてしまった。

ぐったりする結衣に対して、晃一は「今度は俺を気持ちよくして」と、フェラチオを要求し、寝ていた体を起こし立ち上がった。
そして結衣の顔の前に自分の股間を持ってきて、結衣の手をとり、自分のペニスを触らせた。
最初はぐずるような仕草をしていた結衣だが、しばらくすると自分の顔を晃一の股間の前に持っていき、フェラチオを始めた。

不思議な光景だった。
自分の彼女が他の男のペニスを咥えている。
結衣は晃一の股の下部に顔をうずめる。
睾丸に対する愛撫をしているようだ。
そこから顔の位置は上がっていき、ペニス本体への愛撫を始めた。
暗くて結衣の顔が動いているくらいしかわからないが、音だけは確実に“ペチャッ、ペチャッ”と聞こえてきた。

そして晃一の「結衣フェラめちゃうまいね。和真にしこまれたわけ?めちゃ気持ちいいわ。やべー。口でイッちゃいそう」という声も聞こえた。

それを聞いた結衣は俺のことが脳裏によぎったのだろう。
フェラをストップした。

それに気づいたのか晃一が、「なに?もうここまでしたらやめれないでしょ」と言った。

結衣は「もう辞めよ・・・」と言うが力は無かった。

晃一はそんな結衣を見下すかのように、「思って無いくせに」とニヤニヤしてゴムをしながら、結衣を寝かせ、結衣の足を開いた。

結衣は抵抗する様子もなく、晃一に身を委ねている。
晃一は寝かせた結衣の足の間に自分の腰をうずめた。

(ゴムはするんだな)と、ぼんやり思った。

晃一のものが入った瞬間、結衣は「ダメッ!いやっ・・・あっっっ」と罪悪を感じながらも抗えない快感をどうしたらよいのか、自分を持て余しているように見えた。
そして晃一はしばらく正常位でゆっくりと腰を動かし始めた。
結衣は晃一のゆっくりだが大きいピストン運動に合わせて吐息を漏らす。
少し早く動くと「あっっ」と声が漏れてしまう。
しかし、声をあげないように我慢しようとしている様子も見て取れる。

晃一はそんな結衣に対して、「気持ちいいよ。結衣も気持ちいいなら我慢しないで、もう今日だけは壊れちゃいなよ。俺も壊れそう」と言いながら、結衣の体を起こし、対面座位へと移行する。
対面座位は結衣の一番好きな体位だ。
『和真の顔がよく見えるし、体が一番くっつくから気持ちいいの』とセックスの最中に言っていた。
対面座位に移行した瞬間、結衣の何かが弾けた。

「あっっ!あっっ!気持ちいい・・・もっと早く!動いて!」

さらに「いやっ、やばいよ。気持ちいい。どうしよっ・・・あっっ!」と続ける。

その声に応えるように晃一の腰の動きが早くなる。

「んっ、あはっ!はっ、はっ・・・いっちゃうよ、いっちゃう!!」と言い、結衣の体がビクンッと跳ねた。

二度目の絶頂だった。

こうなったら、三度目も間違いなく昇り詰める。
それが結衣だ。

晃一は体を寝かせ、騎乗位になった。
そして、結衣に体を動かすように促す。
結衣は騎乗位が苦手だ。
しかし、苦手なりに結衣は自分から腰を振った。
晃一を積極的に受け入れた。
いや、自ら求めた。
そして、晃一はペニスを入れたまま結衣を回転させ、そのまま後背位で攻め始めた。
後背位は男の征服欲が最も満たされる体位だという。
晃一は、自分が好きだった、しかも婚約者のいる女を後ろから征服している。
どんな気分だったのだろうと思うと、いまでも訳の分からない気分になり、叫びそうになる。
結衣は自分の愛する婚約者が見ているのも知らず、婚約者以外の男によって、女の声をあげさせられている。
こう書くとまるで虚構の話のようだ。

「いきたいの?でも俺の質問に答えてないよ。和真とどっちが気持ちいい?」と聞いて、少し動く。

晃一が少し動いただけで結衣の体は野生の猫に近づいたときのようにビクッと跳ねる。

「やだ、そんなの・・・」と結衣が言う。

「じゃあ、もう動いてやんない」

晃一がそう言うと、結衣はなんと自分から腰を晃一の腰に押さえつけ始めた。
しかし、晃一は手でそれを止める。

「いじわる・・・そんなの言えないよ」

結衣がそう言うと、晃一はもう一度結衣の股間に腕を伸ばし、おそらくクリトリスを触りながらピストン運動を再開した。

「あっ!あっっ、はぁっあはぁ!やばい、いくっ、いっちゃうよ!」

「はぁ、はぁ、どっちがいいんだよ。俺が彼氏か!」

「んっ!こ、こう、晃一のがきもっ、きもちいい!あー、あーーーーっ!」

結衣が三度目の絶頂を迎えると同時に晃一も結衣の中で果てたようだった。
セックスが終わると結衣は呆然とした様子で、その場からしばらく動けないようだった。
晃一はさっきまでのサディスティックな感じとは違い、優しく、「お互い言えないね。内緒だね」と言い、最後に結衣にキスをしようとした。
そのキスを拒んだのは、結衣の最後のプライドなのかもしれなかった。

俺は、結衣の忘れ物の掲示物を下駄箱に置き、その場から静かに立ち去り家に帰った。
妙に冷静だった。
それからその日、結衣には一切連絡しなかった。

結衣はおそらく母親から、俺が音楽教室に行ったことを聞いたのだろう。
夜中の間中、着信が続いてた。
それからの話は、大した話もないし、抜けるシーンも無いので省きます。
というか現在進行中。
それはスレ違いなので、ここには書きません。
書いててあの時のことを思い出して激しく鬱になってきた。
これは相当長い期間フラッシュバックする気がする。

寝取られ体験を通してわかったことが一つある。

『彼女を寝取られた男はオナニーが増える』

以上です。

あれから2ヶ月経つけど、時々精神的に不安定になったり、かなりイライラしやすくなってるのを感じる。
こういう時にそばに居て欲しい彼女に裏切られるのは辛いな。