その夜、仕事から帰ると家に明かりが灯っていて、妻は戻って来ないかも知れないと心配していた私は少し安心して玄関のドアを開けると、そこには見慣れない靴が置いてあります。
耳を澄ますと奥から2人の泣き声が聞こえ、一人は妻でもう一人は妻の母でした。
義母は私に気付くとすぐに土下座して、額を床につけて何度も何度も謝ります。
PCMAX
「娘を連れて帰ります。離婚されても仕方のないことですが、出来れば落ち着いたら迎えに来てやって下さい。親馬鹿で勝手なお願いだと分かっていても、どうか娘を許してやって欲しいです。お願いします」

妻は泣きながら寝室に行ってしまったので、義母に頭を上げてもらって話を聞くと、たまたま用があって妻の昼休みに電話したそうです。
その時妻は浮気のことは一切話しませんでしたが、義母は短い会話の中で妻の異変に気付きます。
それで心配になって、妻の帰って来る時間に合わせて来てみると頬が腫れていて、泣いて謝るだけの妻を見ていて全てを悟りました。

「暴力は自分でも気付かないうちにエスカレートしていきます。娘は叩かれても仕方ないけど、それではあなたまで壊れていってしまう。こんなことをした娘のために、あなたがそのような男になっていくのは見ていられない」

確かに義母が来ていなければ、今日もまた手を上げていたでしょう。
当然親なので、殴られると分かっている娘を放ってはおけないのでしょうが、私のことを心配してくれているのも事実です。
暫らくして義父が車で到着し、赤い目をして玄関で土下座する義父に連れられて、妻は実家に帰っていきました。
妻がいなくなると、私の怒りは全て近藤に向かってしまいます。

「今から来い」

「今日は遅いので、明日にして頂けませんか?」

近藤の口調は、真面目で誠実な男を演じていた時に戻っていました。
おそらくあの後冷静になって考え、ここは私と争わない方が得策だと思ったのでしょう。

「駄目だ。それなら来なくてもいい。明日役所で話そう」

やって来た近藤は暫らく玄関の外で立っていましたが、妻を実家に帰らせたことを告げると、中に入ってきて土下座をして、涙まで見せて演技を始めました。

「謝っても許す気は無いから、いくら頭を下げても何も変わらないぞ。早速慰謝料の話をしよう」

「慰謝料はお支払いします。ただご存知のように、今の私にはお金がありません。払えても30万が限界です。それも分割でないと」

「聞き間違いか?一桁違うが」

今の近藤には30万も、300万ほどの価値があるのかも知れません。
しかし違法な復讐までは出来ず、近藤が一番困るお金で復習するしかないのです。

「それなら裁判だ。例え弁護士費用などでマイナスになろうとも、徹底的にやってやる」

私達が離婚しない場合、裁判をすれば100万もとれないでしょう。
しかし近藤の方も裁判となれば、それ以外のお金も掛かります。
結局慰謝料は100万で、妻の貸した20万を足して120万となりましたが、私はそれで満足でした。
何故なら私も育ちが裕福ではなかったので、お金が無い時は例え千円のお金でも苦しいのを知っていたからです。
借金まみれの近藤にすれば、金持ちの一千万にも、いいえ一億にも匹敵するかも知れません。
現実に支払えない額に決めて開き直られるよりも、払って苦しむ方が復讐になると思ったのです。
これ以上拗れて仕事にも関わってくるのを恐れたのか、近藤は渋々この条件を呑みましたが、やはり一度には払えないと言います。

「分割は認めない。お前を信用など出来ないから3日以内に払ってくれ。それも拒むのなら、法廷で話をしよう」

素人では途中で支払わなくなった時の対処が難しく、他にも私の狙いは高利の所で借金をさせることなのでこれだけは譲れません。

「3日でなんて無理だ」

しかし近藤はまたどこかで借りたらしく、2日後には現金で120万持って来ました。

「領収書を頂けますか?但し書きに慰謝料と書いて、これ以上金品を要求しないことも書き添えて下さい。お願いします」

私が言われた通りに書いて渡すと、それを二つ折りにしてポケットに入れた近藤の目付きが変わりました。

「これで話は付いたのだから対等だ。それにしても、オマンコもしていないのに100万は高かった。こんなことなら美雪が欲しがった時に、俺の太いチンポを捻じ込んでやればよかった」

「何が言いたい!」

「離婚届を持って来た日の夜、俺が指でオマンコの中を擦ってやっていた時に、美雪が『もっとー』と言って腰を振るので、指を2本に増やしてやろうと思ったら『これが欲しいの』と言ってチンポを握ってきたのを思い出したので。その時俺は、もしもの時の慰謝料の金額も変わってくると思って我慢したが、こんなことなら入れてやれば良かった」

当然全て真実ではないのでしょうから、近藤に帰れと言って、このような話は聞かずに奥に引っ込めば良かったのですが、全てが嘘だとは思えずに、妻がどのような行為をされていたのか気になってしまい、その場を立ち去ることが出来ません。

「それにしても、指を2本に増やしてやって早く擦ってやったら、急に潮を噴いたので驚いた。あんなに勢いよく飛ばすから、俺はオシッコをしてしまったのかと思った。そうそう、潮を噴かせるコツを教えましょうか?美雪の場合、指をこうやって少し曲げて」

「もういい!」

しかし近藤は、私を無視して話し続けます。

「4晩もベッドを共にして、お互いに口で慰め合いながらも、どうして俺が最後までしないでも我慢できたか分かります?もちろん手や口で何度も出してもらいましたが、それだけではなくて素股をさせていたからです。素股って分かりますよね?上に跨がった美雪が俺のチンポに手を添えて、濡れたオマンコを擦り付けるのです。日曜は昼間でも催してくるとさせたので夜にはかなり上手くなって、俺が教えなくても濡れたオマンコを自分で開いて、ビラビラでチンポを包むようにして激しく腰を振っていました。少し腰の位置を変えれば、いつスルリと入ってしまっても不思議ではない状態だったので、美雪は入れて欲しいのを我慢するのが辛かったと思います。どうにかクリに擦り付けることで我慢して喘いでいましたが」

私は近藤の胸倉を掴んでしまいましたが、その時近藤はミスをしました。
今から殴られるかも知れないというのに、一瞬ニヤリと微笑んだのです。
近藤はこのことで、少しでもお金を取り戻そうとしている。
このまま殴ってしまえば、近藤は民事で私は刑事。
このことで立場の逆転を狙っている。
私が近藤の意図を察して掴んでいた手を放すと、近藤は悔しそうな顔をした後、話を続けて更に私を挑発してきます。

「あの時の美雪は、凄く可愛い声を出すのですね。『美雪のオマンコが、指でいっちゃうよー』と言って」

「もう帰れ。嘘は聞き飽きた。美雪がそのようなことを言うはずがない」

「ご主人には分からないのでしょうね。不倫というのは旦那とする時よりも数倍感じるらしい。離婚の原因になった人妻もそうだったが、普段旦那とでは出来ないような恥ずかしい行為も平気で出来るし、旦那には恥ずかしくて言えないような事情も平気で口にした。美雪はもっと凄かった。最初こそ『明かりを消してー』なんて言って恥ずかしそうにしていたが、達してしまった姿を一度見られてからは大胆になって『オマンコ感じるー』『クリ吸ってー』『オチンチン舐めたいのー』なんて言葉を、平気で口にして喘いでいたぞ」

「もう帰れ!」

さすがに聞いていられずに、私が奥の部屋に逃げ込むと、ようやく近藤は帰っていきました。
私は今まで、職場に訴え出て社会的制裁を課すことを躊躇していました。
それは近藤が職を失い、養育費まで払えなくなっては子供達が可哀想だからだと自分を誤魔化していましたが、実際は妻に不倫された情けない夫というレッテルを貼られるのが怖かったのです。
たいして大きくもない町に住んでいるので、いつしか友人や知人の耳に入るかも知れないと思うと怖かったのです。
このような場合、後ろ指をさされるのは近藤ではなくて妻であり、このようなことをされても妻に縋り付いている私なのです。
おそらく以前の不倫相手のご主人も、同じような気持ちで職場には訴え出なかったのでしょう。
それで近藤はそのようなことなど考えもせずに、慰謝料を支払ったことで全て終わったと高を括り、私を挑発してきたのだと思います。

翌日、私の足は会社に向かわずに、知り合いの議員の家に向かっていました。
私はより厳しい処分をお願いするために、名前を出す許可をもらいに行っただけなのですが、結局役所まで一緒に来てくれ、朝から何事かという視線を送る職員に混じって、立ち尽くす妻と近藤の蒼ざめた顔がありました。
私は午後から会社に行き、夜家に戻ると明かりが点いています。

「仕事には行っていたのだな」

「あなたに、仕事には行けと言われたから」

「お義父さんとお義母さんはどうしている?」

「父はあの日車の中で、『お前は私達も裏切ったんだぞ』と言った後、一切口を利いてくれません。母は私の顔を見るたびに泣いています」

妻はただ私から言われたので仕事に行っていたのではなくて、年老いた両親の悲しむ顔を、一日中見ていることが耐えられなかったのでしょう。

「実家に戻らずに、どうしてここに帰って来た?」

「このままだと、あなたに捨てられる気がして怖かったの」

「俺に捨てられる?俺から離れて行ったのは美雪だろ」

妻は俯いてしまいます。

「それよりも処分はどうなった?」

議員の力を借りたからか処分はすぐに決まったようですが、それは私が望んでいたものよりも軽く、妻は3ヶ月の減給で済み、近藤も3ヶ月の停職と支所への配置転換で済んだようです。
確かに3ヶ月も給料が出ないことは厳しい処分なのかも知れませんが、最低でも諭旨免職、出来れば懲戒免職まで望んでいた私からすれば、軽い処分に思えました。
その夜私は妻を抱こうとしましたが、どうしても近藤の言っていたことが思い出されて勃起しません。

「やはり夫婦としては無理なようだ。離婚した方がいい」

妻は何とか勃起させようと必死に手や口を使って来ますが、近藤にも同じことをしていたかと思うと、妻が一生懸命すればするほど逆に普段よりも小さくなってしまいます。

「もう諦めろ。俺を裏切った汚れた身体では無理だ」

「このまま離婚はいや」

顔を上げてそう言った妻は、また唇を近づけていきます。

「素股って知っているか?」

妻の動きが止まりました。

「美雪は素股が上手らしいな」

「それは」

「やってみろ」

「出来ません。許して」

「近藤にはしてやっても、俺には出来ないか。分かった。出て行け!」

妻は不恰好に股を開き、軟らかくてすぐに下を向いてしまう頼りない物に手を添えて、オマンコを擦り付けるように必死に腰を振り続けていましたが、近藤にもこのような恥ずかしい姿を見せたかと思うと、悔しくて勃起などするはずもありません。
私には嫌悪感を覚えることはあっても興奮などなく、冷静な目で妻の動きを見ていましたが、その時大きな疑問を持ちました。
それは健康な男と女がここまでしておいて、本当に挿入まで至らなかったかということです。

「止めろ。それよりも聞きたいことがある。本当にここまでで、近藤は我慢したのか?」

「本当です!本当にこれ以上は何もしていない!本当です!」

妻は一旦動きを止めて叫ぶようにそういうと、今までよりも激しく腰を振り続けていました。
結局妻も多少湿っていた程度で濡れているというほどではなく、私にとっては擦れて痛いだけに終わり、私の上から離れない妻を強引に横に降ろして寝室を出て行こうとすると、テーブルに置かれた妻のバッグの中にある携帯が鳴り出しました。

「携帯が鳴っているぞ」

しかし妻は誰からの電話か分かっているようで、俯いてしまって取りに行こうとはしないので、私がバッグから出して渡すと、妻は表示も見ないで大きな声を出しました。

「もう連絡して来ないで。私は何も話すことはありません」

妻はそう言って一方的に切りましたが、すぐにまた掛かって来たので今度は私が無言で耳に当てると、電話の主は一方的に話しています。

「もう一度考えて欲しい。このままだと一生旦那に責められながら暮らすのだぞ。そんな人生でいいのか?それよりも離婚して俺と楽しく暮らそう。自己破産して、きれいになって一から出直す。必ず美雪を幸せにすると約束する。何より俺となら身体の相性もぴったりだろ?美雪だって、旦那のチンポよりも気持ちいいと何度も言ってくれたじゃないか。どうした?聞いているのか?」

明らかに近藤の話は、妻と最後までいったと取れます。
私は真実を知りたくて、妻が実家にいると思って話し続ける近藤の話を、怒りを抑えて黙って聞いていました。

「電話を切らないということは、本当は美雪もそうしたいのだろ?俺と初めて一つになったあの旅行の、ホテルでの楽しかった夜を思い出してくれ。美雪もあんなに喜んでくれて、朝まで何度も何度も求めてきたじゃないか。思い出してくれたか?それでもまだ迷っているのか?それなら俺が背中を押してやる。俺が旦那に全て話せば否が応にも離婚になる。それなら美雪も諦めが付くだろ」

「ふざけるな!」

「えっ?美雪じゃない?」

近藤が慌てて電話を切った後、私は怒りから妻の携帯を繋ぎ目の所から折ってしまいました。
妻は私の怒りようから全てを悟ったのか、泣きながら必死に何か言い訳をしていましたが私には聞こえません。

「美雪!」

私が頬を張ると妻はベッドに仰向けに倒れたので馬乗りになり、また右手を振り上げた時に家の電話が鳴りました。

「美雪は帰っていたんだな。てっきり実家にいると思っていたから驚いて切ってしまったが、よく考えれば、どの道話すつもりの内容だから慌てることは無かった」

「何が言いたい!」

旅行の時に初めて妻を抱き、妻が家を出て泊まっていた時は夜に限らず、時間さえあればセックスをしていたと言います。
しかし近藤は、男をオマンコに向かい入れたかどうかでは私の怒りの度合いはかなり違い、隠し通すことが出来れば最後には必ず許してくれるから、絶対に認めるなと妻に言ったそうです。
近藤も、最後の一線は超えなかったと私に思わせておけば、同じ怒りでも役所までは乗り込んで来ないと予想していたようです。
結局2人の理由は違っても、隠し通した方が得策だということでは一致していたのです。

「よくも余計なことをしてくれたな。お蔭で俺は役所に居辛くなった」

「自業自得だ!」

「それを言うならあんたも同じだ。あんな好き者の女と結婚したのだから、浮気されても自業自得だ。それにしても、あんたも情けない男だな。他の男のチンポでヒーヒー言っていた女と、よく一緒に居られるものだ」

「大きなお世話だ」

「そうか?それは全てを知らないからだろ。何なら美雪が何をしていたのか詳しく教えてやろうか?慰謝料は払い終わって、これ以上は請求しないと一筆書いてもらったし、役所は辞めるから俺には知られて困ることは何も無くなった」

私は挑発に乗らずに、受話器を置こうと思いましたが出来ません。
それどころか、全神経を耳に集中させてしまっているのです。
近藤は何とか私と妻の仲を裂こうと、自慢するかのように詳しく話し出しました。

「あんたは幸せな男だな。会う度にキスをしていて、本当にそれだけで済んだと思っていたのか?俺達は小学生じゃないんだぞ」

確かにその通りで、私は信じたわけではなくて信じようとしていたのだと思います。
近藤の話によると、最初の頃は他にも人のいる喫茶店などでしか会ってもらえなかったそうですが、ある日話が終わって家まで送る途中で車を停めて強引にキスをしてからは、人気の無い堤防や公園の駐車場に車を停めても何も言わなくなり、その内夜の公園にも黙ってついて行くようになりました。

「最初はキスをしても舌を入れられないようにしていたが、すぐに自分からも舌を絡めてくるようになったよ。それに慣れてくると美雪も大胆になってきて、キスをしながらお尻を触ったりオッパイを揉んだりしても、何も言わずに逆に身体を預けて来るようになったので、次に逢った時にはパンツを脱がしてやろうとしたら、やめてーと言いながらも俺が脱がせやすいように腰を浮かせていたので、パンティーに手を滑り込ませてオマンコに指を入れてやった。口では嫌がっていても身体は正直だな。終わった時には車のシートまでぐっしょり濡らしていた。美雪も俺の指が余程気持ちが良かったとみえて、次の日からは俺が触りやすいようにスカートを穿いてくるようになったぞ」

そう言われてみれば、それまで妻はほとんどパンツルックだったのが、その頃からスカートで出掛けることが増えたような気がします。
私は妻を睨みましたが、妻は震えていて私を見ません。

「まだいくらも経っていないが、ウブだった美雪の恥ずかしそうにイク表情と、年の割には可愛いあの時の声が懐かしい」

妻は最後の一線にはこだわっていて、さすがにホテルに行くことは拒んでいたようですが、その代わりに近藤に言われるまま、手や口を使って近藤を満足させるようになっていきます。

「すぐに美雪も慣れてくれて、公園のベンチでも飲んでくれるようになったよ。そうそう、美雪は外だと余計に興奮するようで、オマンコに指を入れて親指でクリを触りながら、隣のベンチのカップルが見ているぞと言ってやったら、凄い力で俺に抱きつきながら、たて続けに3回もイッてしまったことがあった」

近藤の話はどこまでが本当なのか分かりませんが、私は悔しさを押し殺しながら、その先が聞きたくて仕方がありません。

「美雪も俺の硬いチンポを喉まで入れながら、本当はオマンコに欲しくて仕方がなかったのだと思う。最後の一線は超えられないと自分が言って拒んでいた手前、オマンコして欲しいとは言えないから、旅行に連れて行ってと言ってきたのだと思う。もうチンポが欲しくて限界だったのだろう。その証拠に、もしもばれた時の言い訳の為に俺が2部屋予約したら、別々に寝るのかと勘違いした美雪はがっかりした表情を浮かべていた。大人の男と女が旅行に行って、何もしないはずなど無いのに」

旅行に行くということは、そういうことなのです。
キスだけで済んだと信じようとしていた私が馬鹿なのです。
いくら男性経験は私だけだと言っても、大人の妻にはそのくらいのことは分かっていたはずです。

「ホテルで2人だけになるとさすがに罪悪感が湧いてきたのか、急に迷いだして拒んだので、入れなければ浮気にはならないと苦しい言い訳をしたら、チンポを入れて欲しかった美雪はすぐに納得して跨がってきた。美雪が自ら俺に跨がって、オマンコにチンポを当てて震える姿は可愛かったぞ。まるで少女のようだった。しかしそれも最初の内だけで、しばらく擦り付けていたら欲しくなってしまったようで、美雪の方から、我慢できないから入れて下さいと言い出した。それで俺が、欲しければ自分で入れてみろと言ったら、美雪は何と言ったと思う?主人のよりも太くて大きいから怖いの。あなたが入れて下さい。優しくしてねだと」

さすがに聞いていられなくなった私が受話器を置こうと耳から離した時、その様子を見ているかのように近藤の話はマンションでの行為に移っていき、やめておけば良いのにまた耳を傾けてしまいます。

「マンションに来た日の美雪は凄かった。多少自棄になっていて全てを忘れたかったのか、女には経験豊富な俺でも、あんなに激しいセックスは初めてだった。俺が終わっても休憩もさせてもらえずに、もっと欲しいと言ってすぐに挑んできた。結局朝までに5回も搾り取られてしまった。さすがの俺も、こんな事が続いては身がもたないと思って、翌日にはバイブを買いに行った。あんたは美雪にバイブを使ったことが無いらしいな。お蔭で最初は怖いと言って、かなり激しく抵抗されたよ。最も押さえ込んで強引に使ってやった凄く感じたようで、俺がいない時には独りで使っていたくらい気に入ってくれた。美雪はバイブのことを、何と呼んでいたと思う?オモチャのチンポだと。俺が激しく使ってやると、オモチャのチンポいいー。オモチャのチンポでイクーと言って、ベッドから落ちそうなほどのた打ち回っていたぞ。そうそう、大事なことを言い忘れたが、美雪とのセックスでは一度もゴムを使わずに、必ず奥深くに出させてもらっていた。でも俺を怨むなよ。生の方が気持ちいいと言って、美雪が使わせてくれなかったのだから」

「なにー!」

「生がいいー。中にいっぱい出してーと女に言われては、男としては仕方ないだろ」

私は受話器を置きましたが、怒りよりも寂しさを感じていました。
近藤の話が全て本当だとは思いません。
例え自分が妻と元の鞘に戻れなくても、逆恨みから何とか私と妻の仲を引き裂いてやろうと思って言っているとすれば、嘘もかなり混じっているでしょう。
しかし妻が近藤とセックスをしたことと、更にそのことについて嘘をついていたのは明らかでした。

「近藤に入れられていたのだな?」

妻は返事もしないで震えて泣いていたので、私は髪を掴んで頭を揺すっていました。

「近藤に入れられて喜んでいたな?」

「ごめんなさい。許して下さい」

「いや、許せない。最後まで関係を持ったこともだが、まだ嘘をついていたことは絶対に許せない」

「これを知られたら、完全に終わってしまうと」

私は近藤に言われたことを、一つ一つ妻に問い質します。

「近藤に触って欲しくて、スカートを穿くようになったのだな?」

「違う。彼に穿いて来いと言われて」

「嘘をつくな。奴もそう言ったかも知れないが、美雪も奴に触ってして欲しかったのだろ!第一、どうして近藤の言うことを聞かなければならない」

私は妻の頬を張り倒していました。

「ごめんなさい」

「触ったり触られたりするだけでは物足りなくなって、近藤のオチンチンが欲しくなって旅行に誘ったのか?」

「違います」

泣きながら必死に言い訳をする妻の話によると、徐々に行為がエスカレートしていくことに怖くなった妻が別れを切り出すと、近藤は別れる条件として最後の思い出作りに旅行に付き合えと言いました。

「別れたくない。もうどうなっても良いからご主人に全て話して謝り、美雪さんを奪い取りたい」

私に知られるのを恐れた妻はこの言葉で旅行を承諾してしまい、私に知られないように友達との旅行を利用してしまいます。
ただし部屋は別で、身体の関係を持たないことを条件にしましたが、少し話をしたいという近藤を部屋に入れると浴衣の紐で両手を縛られてしまいます。

「やめて!何をするの!」

「お願いだ。最後に、最後に」

しかし妻は激しく抵抗したため、近藤が出した条件は素股でした。

「本当に嫌だったのなら、どうして大きな声を出して助けを呼ばなかった。もう嘘は吐くなと言っただろ!本当は抱かれたかった。そうだな?」

「誰かが来て、あんな姿を見られるのが嫌でした」

「俺を裏切ることよりも嫌だったのか?それなら聞くが、嫌だったのだから感じなかったのだな?素股をしている時、濡れていなかったのだな?どうだったのか近藤に聞いてやる」

私が電話の方に歩き出すと、下着だけを着けた妻が阻止しようと駆け寄って来たので、私は妻を蹴り倒しました。
義母が言っていたことは本当で、一度暴力を振るうとそれはエスカレートしていき、妻が倒れてテーブルに腕を強くぶつけた時は一瞬しまったと思いましたが、すぐにまた蹴り付けてしまいます。

「感じなかったのかどうか、はっきりしろ!濡れなかったのかどうか、はっきりと言ってみろ!」

「感じました。濡れてしまいました。ごめんなさい」

「そらみろ。何が嫌だっただ。その分だと、美雪が我慢できなくなって入れて欲しいと頼んだというのも本当のようだな」

「違います。絶対に入れないと言っていたのに、後に押し倒されて無理矢理」

「裸で性器と性器を擦り合わせていて、無理矢理も何もあるか!」

妻も近藤も信じられません。
正直、多少でも妻を信じたいのですが、これだけ裏切られていると何もかも信じられなくなっています。
それなら妻に尋ねる意味が無いのは分かっていますが、おかしなことに信じられなくても、少しでも否定して私を楽にして欲しくて聞いてしまうのです。
激しい口調で妻を問い詰めている時、泣き過ぎて吐きそうになりながら謝る妻を見ていると、私は不思議な感覚に囚われました。
私が妻の不倫を責め、妻が私に必死に謝っているという目の前で起こっている状況が、現実に起きていることとは思えなかったのです。
私たち夫婦に起こっていることでありながら、まるで他の夫婦の間で起こっていることのような感覚がしていたのです。
いままで妻は、子育て、家事、私の世話、仕事と、自分を捨てて献身的に頑張ってきてくれました。
私も頑張ってきたつもりですが、やはり妻とは比べものになりません。
私はそのような妻を愛し、妻のために生きてきました。
勿論子供達も可愛く、子供達のためでもあったのですが、何より妻の喜ぶ顔が見たくて頑張り、妻の嬉しそうに微笑む顔を見るのが一番の幸せでした。
最近は離婚する夫婦が増えたと聞いても、私達とは別世界の出来事だと思っていて、この世に私達ほど愛し合っている夫婦はいないと思っていました。
おそらく妻も、数ヶ月前までは同じことを感じてくれていたと思います。

それが今は。

付き合い始めてから30年近くの想いが、ここ数ヶ月で壊されても頭がついて行きません。
30年という月日をほんの数ヶ月で無駄にされても、すぐに信じることなど出来ないのです。

「痛い!」

その言葉で我に返ると、私は妻の髪を掴んで部屋中を引きずり回していました。
そのようなことをしている自分が信じられず、慌てて妻から遠く離れると、妻はその場に座り込んだまま声を押し殺して涙を流していて、私の手には髪の毛が何本も絡み付いています。

「実家に帰れ。帰って、近藤と2人で逢うようになってからのことを、全て詳しく書け。いつ何処で近藤と何があったのか。その時美雪はどのような気持ちだったのか。どんなに恥ずかしいことで俺には知られたくないことでも、全て詳しく書いて見せろ」

私は妻と2人でいるのが怖くなっていました。

「近藤に触られて、その時感じたのか感じなかったのかも書け。近藤に感じたのなら、どの様に感じて身体はどの様に反応したのかも詳しく書け。それを読んで今後どうするか結論を出すが、もう嘘は書くなよ。その結果離婚になっても、嘘だけは絶対に吐かないでくれ。何日でも待つから、書き終わったら電話して来い」

私は何故このようなことをさせようとしているのか、自分でもよく分かりません。
知れば知るほど辛くなるのは分かっていても知りたいのです。
翌日会社から帰ると電話が鳴り、妻だと思って慌てて出ると、期待に反して聞こえてきたのは近藤の声でした。

「美雪に代わってくれ」

「もう付き纏うな!これ以上付き纏うようなら、ストーカーで訴える」

「ストーカー?冗談はやめてくれ。俺と美雪は、身体の隅々まで全て見せ合った仲だ。美雪も世間体や子供達の手前離婚が怖いだけで、それさえなければ、俺に抱かれたいと思っている。一匹のメスとして、俺というオスに惹かれている」

私が離婚を躊躇しているのは、そのこともありました。
どんなに酷い男だと分かっていても、そのような男に惚れてしまう女もいるのです。
それは近藤が言うように、頭では分かっていてもメスの部分が拒否出来ないのかも知れません。
妻のメスの部分が、より若くて強いオスを欲しがっているとすれば、近藤の嘘がばれた今でも離婚して自由になれば、また引き寄せられてしまうかも知れないのです。
私は、それだけは許せません。

そのような人間はどうなろうと放っておいて、離婚して自分の幸せだけを考えれば良いのかも知れませんが、それは悔しくて出来ないのです。
このようなことをした妻でも、まだ愛情が残っているのでしょう。
私の幸せの中に妻も入っていて、それを外すことが出来ないでいるのです。
私は迷いましたが妻を試す意味からも、実家に帰っていて別居していることを告げ、近藤に付け入る隙を与えました。

妻は書くのに手間取っているのか、2日後の金曜になっても連絡がありません。
近藤に別居していることを告げたことも気になっていた私は仕事にも身が入らず、定時に退社して家に戻り、明日実家に行ってみようと決めてコンビニで買ってきた弁当に箸をつけた時、電話が鳴りました。

「いつまで掛かっている!正直に書けばいいだけだ!」

声が似ていたので、てっきり妻だと思ってそう言いましたが、それは義母でした。

「美雪はそちらに帰っていますか?」

「いいえ。どうしたのです?」

「美雪がまだ帰って来ないの。役所に電話したら定時に帰ったと言うし」

妻は今まで、まっすぐに帰って来ていたと言います。
まだ8時で、子供ではないので普通なら心配しないのですが、昨夜からの妻の様子がおかしく、何か胸騒ぎがすると義母は言うのです。

「何か変わったことはなかったですか?」

「あの男から電話が」

近藤から毎晩何度も電話が掛かり、そのたびに義父か義母が出て妻には取り次がなかったのですが、昨夜は見かねた妻が電話に出て強く断っていたそうです。
私は妻の携帯を壊してしまって、その後持たせていなかったことを後悔しながら近藤のマンションに向かっていると、途中で妻が帰って来たと義母から連絡があったので、妻の実家に方向を変えました。

「近藤と会っていたな」

「はい」

私は妻と近藤に隙を与えて、試したことを悔やみました。
私は怒る気力もなく、ただ脱力感だけを感じていましたが、それを聞いていた義父は妻に掴み掛かり、義母は大きな声を出して泣き出しました。

「違うの」

妻は仕事帰りに毎日待ち伏せされ、言い寄られても無視していたのですが、実家に帰っていると知ってからは、それに加えて毎晩電話をかけてくるようになったので、もう関わらないで欲しいと話して来ただけだと言います。

「こんなに長く何を話し合っていた!おおかたホテルで話し合っていたのだろ?車で近くまで送ってもらったとすれば、2時間以上は楽しめたはずだ」

「駅前の喫茶店で話していました」

「散々騙されたのに、それを信じろと?」

「喫茶店の人に聞いてもらえば分かります。すぐには聞き入れてくれなかったので長くなってしまって、店員さんに嫌な顔をされたので覚えていてくれると思います。あなたにこれ以上嫌な思いはさせたくなかったので、なんとか自分で解決しようと」

「嫌な思い?近藤と2人だけで会うのが、一番嫌なのが分からないのか」

近藤の本性が分かった今、どのような理由があろうとも普通なら避けるはずです。
近藤の言うことは嘘ばかりで、まともに話して分かる相手で無いことも知ったはずです。
やはり裸で抱き合った仲だからなのか、妻は私が思っているほど、近藤を酷い男だとは思っていないのかも知れません。
私は2人だけで話したくて妻を連れて家に帰りましたが、床に正座した妻は私が近づくたびに身体を硬くします。
おそらく私が、暴力を振るうと思っているのでしょう。
平気で男に股を開いていた妻と、平気で暴力を振るうようになった夫。
こんな夫婦に未来はあるのかと、絶望感に押し潰されそうになります。

「もう俺が嫌になっただろ?」

「そんな事はない。元の夫婦に戻りたい。どのようなことでもしますから、許して下さい」

「本当か?」

妻は何度も頷きます。

「それなら前にも言ったように、近藤を殺して来い。俺以外に、美雪の全てを見た男が生きていることが許せない。俺意外に、美雪の中に入った男が生きていることが許せない。頼むから殺して来てくれ。近藤を殺して、抱かれたのは間違いだったと証明してくれ。奴を殺して、愛しているのは俺だけだと証明してくれ」

「それは」

「何でもするというのは、またお得意の嘘か!」

「く、る、し、い」

私は妻を押し倒すと馬乗りになって首を締めていて、妻が声を出さなければ、そのまま締め殺してしまっていたかも知れません。
私が手の力を緩めると妻は大きな息をしていて、それは妻が感じている時の息遣いに似ていました。
妻の顔をよく見ると、涙が流れた部分だけ化粧が落ち、乱れた髪が口元に纏わりついて艶っぽく見えます。
気付くと、浮気されてからは全く勃起しなかったオチンチンが、スラックスとパンツを突き破りそうなほど硬くなっていて、私は荒々しく妻の服を脱がせると下着だけの姿にしました。
すると妻は、黒く色っぽいパンティーとブラジャーを着けているではありませんか。
今日は濃い色のパンツを穿いていたので、黒いパンティーでも普通なのかも知れませんが、私には近藤と会ってそのようなことになった時の為に、このような色っぽい下着を着けていたとも思え、また怒りが込み上げて、急いで下半身だけ裸になるとパンティーを横にずらして、濡れてもいない妻の中に捻じ込みました。

「痛い。あなた、痛い」

「嘘をつけ!近藤の太いのを何度も突っ込まれて広げられているから、俺のなんか入っているかどうかも分からないだろ」

「痛い。痛いです」

「近藤のは怖いほど太くて大きかったそうだな。そんなに大きかったのか?言ってみろ!」

妻は仕切に首を振ります。

「嘘をつけ!俺のよりも大きかったのだろ?もう嘘は吐かないと言っただろ。言え!正直に言え!」

私が腰を動かすと、妻は苦痛に顔を歪めます。

「痛い。言います。言いますから。大きかったです。怖かったです」

近藤からこの話を聞いた時、男は大きさだけではないと自分に言い聞かせていましたが、こんなくだらないことを一番気にしていたことを知りました。
そんな事は大したことではないと強がりながら、本当は一匹のオスとして、近藤に劣等感を持ったことを実感しました。
太くて硬く、大きな武器を持ったオスに、妻を盗られるのではないかと気にしている自分を知りました。

「太いのは気持ちよかったか?大きいので、俺では経験したことがなかったほどの快感を得たのか?」

「感じるのは、大きさだけじゃない。あなたが好き。あなたとの方が良かった」

「もう嘘は沢山だ。正直に言えばいい。大きいのは気持ちよかっただろ?太くて気持ちよかっただろ?言え!正直に言え!」

妻と繋がりながら右手を振り上げると、妻は何度も頷きました。

「はい。気持ち良かったです。叩かないで」

私は激しく腰を振って妻の中に吐き出しましたが、妻にとってこの行為は、暴力以外の何物でも無かったと思います。

「なぜ泣く?近藤の太いのを思い出して、寂しくなったか?それとも、俺にされたのがそんなに嫌だったのか?」

「違います。私は誘惑に負けて、一番大事な物を失ってしまった。一時の快楽のために、絶対に壊してはいけない物を壊してしまった。私は」

「俺が壊れていると言うのか?壊れているのはお前だろ!どうして平気で俺を裏切れた。どうしてあんな男に股を開いた。そんな事の出来るお前は、壊れていないのか?そんなこと、普通の人間には出来ない。普通の感情を持った人間なら、こんな酷いことができるはずない。お前は鬼だ!人間の振りをした鬼だ!」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

妻の言うように、私は壊れてしまったのかも知れません。
妻の苦痛の表情を見ていると心が休まるのです。
しかし原因は妻にあると思うと、妻にそれらしいことを指摘されるのは耐えられないのです。
妻が泣き疲れて眠ってしまうと、綴じられた数枚のレポート用紙を、妻のバッグから出して読んでいました。
そこには妻が近藤と2人で会うことになったきっかけから、近藤のマンションでの情事までが克明に綴られています。
最初近藤に相談を持ち掛けられた時、妻は嬉しかったそうです。
それは頼られる嬉しさと、世話を妬ける嬉しさです。
私は子供が手を離れた時、妻と新婚をやり直す喜びからデートするようになり、セックスも増えて行きました。
しかし妻はそうではなく、子供の世話を焼けなくなった寂しさを、私で埋め合わそうとしていました。
そこに近藤が現れて、妻は近藤の相談に乗ることにのめり込んでいきます。

――――――
◯月◯日
車で送ってもらう途中で、突然キスをされました。
私のような歳の離れた女にそのような感情を持つことが信じられず、驚きで身体が動かずにキスを許してしまいましたが、家に帰ってあなたの顔を見た時に、罪悪感で泣けそうになり、もう2人では会わないと決めました。
――――――
◯月◯日
彼からの誘いを断っていましたが、子供のことで重大な局面迎えたので、どうしても相談に乗って欲しいとメールが入り、突然キスをされたことも、何度もメールで謝って来ていたので、子供のことでは仕方ないと思って会いました。
しかしそれは、いつの間にか頼られることに心地良さを覚えていて、彼の相談に乗れないことが寂しくなっていたので、断れなかったのかも知れません。
私が助手席に乗ると車はどんどん街から外れて行き、不安になった私が何処に行くのか尋ねると「誰にも聞かれたくない内容なので、今日は車の中で聞いて欲しい」と言って、ほとんど車の通らない堤防に止まりました。
彼の話は養育費のことで、これならいつものファミレスでも良かったのではないかと思っていると、急に覆い被さってきてシートを倒され、必死に抵抗したのですが唇を重ねられ、服の上から乳房を揉まれました。
私が何とか唇から逃れて罵ると、彼は耳元で「妻も子供も失うと決まった時、もう死んでしまおうと決めた。でも美雪さんを愛してしまったことに気付いて、生きていようと思った。美雪さんに嫌われたら死んでしまう。助けて欲しい。私を助けられるのは、美雪さんしかいない」と囁かれ、なぜか身体の力が抜けてしまって、今度は彼の舌まで受け入れてしまいました。
――――――

その後、近藤の行為は徐々に大胆になっていきますが、妻は近藤の自殺を仄めかすような言葉もあって、その都度口で注意をするだけで何をされても会い続け、ボタンを全て外されてブラジャーを押し上げられ、オッパイを吸われるような行為をされるようになっても、その間近藤の頭を撫でながら励ますようになっていきました。
読んだ限りでは近藤は完全に女と意識して、なんとかものにしようとしているようでしたが、この頃の妻はまだ男女の関係というよりも、母性本能に近かったように感じます。
しかしそれが男女の関係に変わるのに、さほど時間はかかりませんでした。

――――――
◯月◯日
夜の公園の駐車場に止めた車の中で、彼に乳房を吸われていた時、生理前だったからかいつもよりも感じてしまって、不覚にも声を出してしまいました。
すると彼は私のパンツのボタンを外したので、これには激しく抵抗しましたが、その時近くで男女の話し声が聞こえ、このような姿を見られるのは恥ずかしくて耐えられなかった私は、気付かれないように抵抗を止めてじっとしていました。
すると彼は私が動けないのを良いことに、手を一気にパンティーの中へ滑り込ませてきたので必死に彼の手を押さえて耐えていましたが、話し声が遠退いて行った頃には、彼の指は私の一番感じる所を捜し当てていて、そこを集中的に責められたために頭が朦朧としてきて、いつしかパンツやパンティーも脱がされてしまい、私は唇を噛みながら声を殺して達してしまいました。
私は彼で達してしまったことがショックで、大変なことをしてしまったと呆然としていると、その間に下半身だけ裸になった彼が覆い被さって来たので「これ以上、主人を裏切れない」と言って私が泣くと彼は謝り「その代わりに手で出して欲しい」と言って聞きません。
あまりのことに私が躊躇していると「最後の一線を越えなければ、裏切ったことにはならない。私も美雪さんにご主人を裏切らせたくない。でも生理的に出さないと済まない状態なので、このままだと美雪さんを無理にでも襲ってしまいそうだ。お願いだからそのようなことをさせないで欲しい。手でしてくれるだけなら、裏切ったことにはならない。美雪さんだって、私の指で」と言われ、達したばかりで正常な判断が出来なかった私は、襲われるよりは良いと思って、手ですることを承諾してしまいました。
それまでは恥ずかしくて目を逸らしていたのですが、触ろうとしてよく見ると彼のは太くて大きく、何より色が真っ黒で怖くて触れません。
すると彼は私の左手にティッシュを持たせ、右手を掴んで自分の下腹部に持っていくと握らせて、添えた手を上下に動かし始めます。
暫らくそのような状態が続きましたが、彼が空いた方の手を伸ばして、また私の敏感な部分を触り始めたので、私はもう彼の手が添えられていないのも気付かずに必死で手を動かし、彼をティッシュで包むと同時に私も達してしまいました。
――――――

この時近藤は、妻に初めてされることで興奮していてすぐに出してしまいましたが、次に会った時には手だけでは出ないと言って口を使うことも要求し、帰りが遅くなることが気になっていた妻は、早く終わらせたくてその要求に従ってしまいます。
この時の感想に、近藤のオチンチンは黒くて太く、前回で触るのには多少慣れていても、口に入れるのは凄く怖かったと書いてあることから、逆に妻はこのような物をオマンコの入れられたら、どのような感じなのだろうと想像していたのかも知れません。
妻は仕方なくこのような関係になったような書き方をしていますが、それは嘘を書いているのではなくて、そう自分に言い聞かせて信じ込み、自分の中でこのような行為を少しでも正当化させていたのでしょう。
そうしなければ、罪悪感に押し潰されていたのかも知れません。
私としか付き合ったことのない妻は、若い誠実な男と付き合っていて楽しかった。
私以外の男に初めて性的な興奮を与えられ、その快感から逃げられなかった。
しかもその男は、私とでは経験出来ないような快感を与えてくれるかも知れない、強い男を物を持っていた。
しかしそれらを認めてしまうと、自分が嫌な人間に思えてしまう。
結局、このような快感を失うのが嫌で必死に自分を弁護しながら、関係を深めていったのでしょう。

――――――
◯月◯日
このままの関係を続けていては大切な家庭を壊してしまい、あなたを失ってしまうと思った私は、もう2人では会わないと、彼に別れを切り出しました。
しかし彼は「美雪さんが放れて行けば、もう私には何も無くなる。そんな人生なら死んだ方がマシだ」と言って聞いてくれません。
私が自殺するのは良くないことだと説得すると、今度は「美雪さんの言う通りだ。死ぬ気なら何でも出来る。ご主人に今までの関係を話して謝り、美雪さんと別れてくれと頼んでみる。死ぬ気で美雪さんを奪い取ってやる」と言われました。
それは私が一番避けたいことで、そのようなことになれば離婚されてしまうと思って彼を必死に説得すると、別れてくれる条件に彼が出してきたのは、最後に私と一つになることでした。
しかし私がそれだけは出来ないと断ると、彼が次に出した条件は、2人が付き合っていた思い出に旅行に行くことです。
彼は「部屋は2部屋とって別々に寝て、最後まではしない代わりに、いつものように触らせて欲しい。手や口で出して欲しい。この条件を呑んでくれれば別れる」と言ったので、私はあなたや友達まで裏切って旅行に行くことを承諾しました。
――――――
◯月◯日
私達は友達と行くはずだった温泉地から、一番近いシティーホテルを予約していました。
ホテルにしたのは、2部屋とるのに素泊まりにすれば旅館よりも安かったのと、彼が「最後を誰にも邪魔されずに、2人だけで過ごしたい」と言ったからです。
色々な所を観光し、外で食事を済ませてからホテルにチェックインすると、彼はすぐに抱きついてきました。
私はシャワーを浴びたかったのですが彼は許してくれず、そのまま下着だけの姿にされてキスをされ、彼に抱きつきながら立ったまま指で一度達してしまい、その後シャワーを浴びていると彼が入って来て、彼の下腹部を洗うように言われましたが、明るい所で裸を見られているのが恥ずかしくて、彼を振り切って逃げました。
それからお互いに浴衣を着てワインを飲んでいましたが、彼に「さあ、ベッドに横になって。約束だろ?」と言われてグラスを取り上げられ、これで彼と別れて普通の生活に戻れると思った私は、素直にベッドに横になりました。
このこともあなたに嘘をついていました。

彼が私の部屋に話しに来て、急に浴衣の紐で手を縛られて仕方なくしたと言っていましたが、本当は抵抗もしないでベッドの上で裸にされて、彼に身体の隅々まで舌を這わされていたのです。
今までのような狭い車の中とは違い、彼に裏も表も気が遠くなるほど舐められて、私は何度も何度も感じてしまいました。
次に私が彼を満足させる番になり、必死で手や口を使って終わらせようとしましたが、その間も彼に触られていて、私の方が先に達してしまって最後まで出来ません。
すると彼が「出してくれる約束だったから、このままだと別れない」と言い出し、「触られていては出来ない」と言っても「触らせてくれるのも約束だ。毎回感じていないで、少しは我慢すればいい」と言ってやめてくれず、なんとか感じないように我慢しようと思うと、余計に神経が集中してしまって感じてしまいます。
私が困っていると彼は私を押し倒して足を開き、脚の間に座って私に彼を擦り付けて「こうすれば出るかも知れない。入れないからいいだろ?」と言いました。
しかし先が入り口に当たるたびに、私はいつ入れられてしまうか不安で、仕方なく「私にさせて欲しい」と言って上に跨がり、腰を振って擦り付けていたのですが、結局私が先に達してしまい、彼の胸に顔を埋めると下から強く抱き締められて、動けない状態で彼に入れられてしまいました。
彼のは太くて中がいっぱいになり、このまま動かされたら私はどうなってしまうのか想像もつかず「入れないで。早く抜いて」と言うのが精一杯で、強く拒否する余裕も無く、怖くて彼にしがみついてしまい、それに気を良くした彼は更に奥まで入れてきたので、彼ので子宮を押された私は悲鳴を上げてしまいました。
彼のが動き出すと、中の物を全て掻き出されるような感覚で、私は我を忘れて大きな声を上げ続けていたと思います。
最後は中に出されてしましたが、私は彼に抗議する気力も無く、彼に連れられてシャワーを浴びにバスルームに行き、すぐに回復した彼にそこでも入れられて狂ったように大きな声を上げ続け、ベッドに戻るとまた身体中に舌を這わすという最初の行為に戻って一から始まり、結局開放された時には夜が明けていました。
これで全て終わったと思っていましたが、帰りに家の近くまで送ってもらって別れを告げると「抱いてみて気が変わった。こんなに身体の相性が良いとは思わなかった。ここで諦めたら、美雪さんのような女性には二度と巡り会えない。今からご主人に美雪さんをもらいに行く」と言われ、約束が違うと言っても相手にしてくれません。

結局はあなたに話さない条件として、これからも付き合うことを承諾させられてしまいました。
――――――

近藤と関係を持った箇所は、より詳しく書けと言ってありましたが、これだけ詳細に書かれると、とても平常心では読めません。
別れるために行った旅行で、逆に妻達の関係は深くなってしまい、その後は会う度にホテルで抱かれていました。
その頃私を拒否していたのも、毎回身体の隅々までキスされていたので痕跡を見つけられて、近藤との関係が私にばれるのを恐れたからです。
私には妻が本当に嫌だったとは思えません。
近藤とのセックスに、溺れてしまったような気がします。
自分では否定していても、身体は求めてしまっていたのかも知れません。
中に出されていたことで妻のメスの部分が、逞しいオスの遺伝子を欲しがっていたのかも知れません。
その証拠に私に家を追い出された時、近藤との別れを真剣に望んでいれば、近藤に助けは求めなかったと思うからです。

――――――
◯月◯日
あなたに初めて叩かれて、家を出されて離婚を現実のものと認識した時、頭が混乱してしまって、誰でも良いから助けて欲しかった。
自業自得だと分かっていても、辛くて寂しくて、誰かに縋り付きたかった。
原因が、昔から私が一番軽蔑していた不倫だけに友達にも知られたくなく、ましてや両親や子供達には、絶対に知られたくなかったので助けを求められない。
お金も持っていなかったので、ホテルに泊まることも出来ません。
そうかと言ってあのままでは、近所の人に知られてしまう。
私は卑怯な人間です。
誰かに助けてもらいたいけれど、私がこのような酷い人間だと誰にも知られたくないと思った時、私は彼に電話をしていて、彼に頼ってしまうと完全に終わってしまうと気が付いた時は、既に彼のマンションにいました。
この日の彼は紳士的で、少し冷静になった私が帰ろうとすると「ご主人も興奮しているだろうから、今帰っては逆効果だ。私に考えがあるから安心して、今夜はそのベッドでゆっくり眠るといい。私はソファーで寝るから」と言って引き止められました。

翌朝彼は、自分達の離婚のために用意してあったという離婚届を持って来て「無理に戻ろうとするから、離れたくなる。逆にこれに署名して離れる素振りを見せれば、引き戻したくなるものだ。必ずご主人と元に戻れるように上手くやってやるから」と言ってくれたので嬉しくて、私は藁をも縋る思いで言われるままに署名しました。
彼があなたに会いに行き、私は祈るような気持ちで待っていましたが、帰って来た彼に「ご主人の意思は固く、離婚は避けられそうにない。裁判をしても離婚になる可能性が高いから、こうなったら諦めて今後の人生を考えた方が賢明だと思う。私にも責任があるから、美雪は私が幸せにしてやる」と言われて目の前が真っ暗になり、私は絶望感から抵抗する気力も無く、裸にされて彼の舌が身体を這っていくのを、他人事のように見ていました。
しかし、悲しいことにそんな時でも私の身体は反応し始め、感じてしまうと今度は嫌な現実かから逃げたくて、何もかも忘れたくて、私は積極的に快感を求めるようになっていきます。
私はまた彼に抱かれてしまったことで、更に現実に戻るのが怖くなってしまい、その夜は彼の上になり下になり、時には犬のような格好までして彼を求め続け、あなたの所に行った帰りに彼が買ってきた、厭らしいオモチャまで使われて、一晩中狂ったように声を上げ続けていました。
あの時穿いていたエッチな下着も、その時彼が買って来ていて、着の身着のままだった私は服や下着の替えが無く、彼のワイシャツを借りて着ていたので、下に何も着けていないよりはマシだと思って、仕方なく着けていた物です。
――――――

妻は軽い気持ちで、若い男との交友を楽しんでいた。
それが相手の男の方が一枚も二枚も上でずる賢く、年上だったと言っても男性経験が私しか無い妻は、簡単に手玉にとられてしまった。
そう考えると、私は近藤に対して新たな怒りが湧きました。
私を裏切ったのは近藤ではなくて妻です。
しかし近藤に対しても、このままでは怒りが治まらず、妻を叩き起こすと化粧をして、出掛ける用意をするように言いました。
私が妻の告白文を読みながら、考えたのは犯罪行為です。
それも妻さえ上手くやれば、警察には捕まらないような卑怯な犯罪。
おまけに妻を試すことが出来る、一石二鳥の行為です。

「美雪。今から近藤をホテルに誘え」

「えっ!」

「俺が仕組んだことは絶対に言うな」

「あなた、何を?」

「黙って指示通り動けばいい。何でもすると言っただろ」

妻は不安そうな顔で私を見ていましたが、何でもすると言いながら、近藤を殺すことを断った手前、私の2度目の指示には逆らえません。
私は台詞をメモ書きして渡すと妻に何度も読ませ、近藤に電話するように言いました。
妻は恐る恐る電話しましたが、夜中の2時ではさすがに眠っているのか出ません。
妻はほっとした表情で受話器を置こうとしましたが私はそれを許さずに、出るまで掛け続けているように指示します。
私も受話器に耳を付けて待っていると、ようやく近藤が出ました。

「美雪です」

「美雪?こんな夜中にどうした?」

「やはり主人とは無理みたい。今まで言い争っていて、また叩かれました。もうどうしたら良いのか分からなくなって」

「旦那は?」

「怒って車で何処かに出て行ってしまいました」

「俺の所に来るか?」

「帰って来た主人が、探し回ってマンションに来ると嫌だから、何処か他の静かな所で相談に乗って欲しい」

「じゃあ、すぐに迎えに行くから、この間迎えに行った公園で待っていてくれ。俺が行くまで旦那に見つからないように、何処かに隠れていろよ」

妻を手に入れるチャンスだと思った近藤は、眠気も忘れて張り切っていました。

「私はどうすれば良いですか?お願いですから、怖いことはやめて」

「俺の指示に黙って従っていればいい。近藤に会ったら国道に出た所の、本屋の横を入って行った所にあるホテルに誘え。他のホテルと間違うな。あの古いホテルだぞ」

「私は何をすれば」

「簡単だ。ホテルに入ったら一時間で出て来い。きっかり一時間で出て来いよ。それと絶対に抱かれるな。抱かれそうになったら、舌を噛んででも抱かれるな。キスもさせるな」

「どのように誘って、どの様に断って出てくれば」

「抱いて欲しくて我慢できないから、そこのホテルに入ってと言えばいい。しばらくそれらしい話をして、奴が何かしようとしたら、やっぱりこんな汚いホテルで抱かれるのは嫌。もっときれいなホテルで抱いてと言って出て来い」

私は先回りをしてホテルの近くで車を停めて待っていると、妻を乗せた近藤の車が入って行きます。
このままここにいては怪しまれるので一時その場を離れ、約束の20分前に戻ると時間を持て余したのか近藤の車が出て来たので、私は慌てて車から出るとカメラのシャッターを切り続けました。
近藤はフラッシュの光に気付き、車から降りて近づいてきましたが、写真を撮っているのが私だと分かると、足を止めて立ち尽くしてしまいます。

「何のつもりだ!また不貞行為か?今度は裁判所で会おう」

「不貞行為などしていない。それに慰謝料なら前に払った」

「何も知らないようだな。あれは以前の損害に対する慰謝料だ。また新たに損害を受ければその都度請求出来る。おかしいと思って美雪を泳がせて後をつけたら、案の定こんなことか」

近藤も手際の良さに疑問を感じ出し、私達を疑っているようなことを言い出したので、真実味を出すために近づいてきた妻を怒鳴りつけました。

「お前は何度裏切ったら気が済む!今回は絶対に許さないぞ」

妻はようやく私の計画が分かり、悲しそうな目で私を見ながら泣き出しました。
妻を連れて家に戻ると、私の顔に久しぶりに笑みが浮かびます。

「上手くいったな。また近藤から金をとってやる」

その時車の止まった音がして、納得の行かない近藤が入って来ました。

「お前達、仕組んだな?これは美人局だ。立派な犯罪だ。それに、美雪を抱こうとしたのは事実だが、まだ不貞行為はしていない」

「美人局だと思うなら訴えろ。俺は絶対にお前を許さない。不貞行為かどうかも、この写真で裁判官が判断してくれる」

私の自信あり気な言葉で怯んだ近藤は、今度は自己破産するので払わなくても済むと言ってきました。
しかし私が慰謝料は相殺されないことを言うと、今度は無い所からは取れないと開き直ります。

「お前は十年も働かずにいるつもりか?役所を辞めてもいつかは働くだろ?その時はいくら金が掛かっても勤め先を調べ上げて、強制執行してでも必ず払わせてやる。俺達は離婚するから、今度は数十万では済まないぞ」

私はお金などどうでも良いのですが、今の近藤にはお金が一番堪えるのです。
近藤が帰ると、今度は妻に悪振っていました。
それがどのような結果になるかも知らずに。
私は美人局をした後ろめたさもあって、悪を気取って強がらずにはいられませんでした。

「今回の決着がついた頃、また近藤を誘え。性欲だけの馬鹿男は何度でも引っ掛かる。ただ、今回と同じではさすがに奴も疑うだろうから、次は少し触らせてやれ。それが上手くいったら、その次は抱かれてもいいぞ。美雪もご褒美が欲しいだろうから」

「あなた、もうやめて」

「やめて?近藤が可哀想になったか?そりゃそうだな。美雪と近藤は、全て見せ合った仲間で、俺が2人の仲を切り裂く敵だった」

「違います。もうこのようなことは」

「誰のせいでこうなった?お前は売春婦と同じだ。この間の80万も、美雪が身体を売って稼いだのと同じだ。一度身体を売ったら何度売っても同じだから、何なら近藤以外の男も引っ掛けて抱かれろ。そのたびに俺が慰謝料をとってやる。どうせ汚れきった身体だ。これからも、もっと身体を売って金を稼げ。俺はその金で若い女と遊ぶ」

「こんな事は、もう許して下さい」

「こんなこと?俺のしたことと、美雪がしたこととではどちらが酷いことだ?美雪は自分の性欲の為に、俺の30年を無駄にしたのだぞ。やめてやるから俺の30年を返せ。美雪のような淫乱な女と関わった、俺の30年を返せ」

これを言われては、妻は何も言えません。

「そうだ。いっそうのこと、本当の売春で稼いでくれないか?熟女の派遣をしているところもあると聞いたぞ。それがいい。美雪は大好きなセックスが出来て、俺はその金で遊べる」

妻は涙を流しながら、私の目をじっと見詰めました。

「離婚、離婚して下さい」

私は耳を疑いました。
妻の口から、離婚の二文字が出るとは思っていませんでした。

「財産分与も何もいりません。慰謝料も分割で払っていきます。お願いですから離婚して下さい」

私は慌てました。
私は2人に騙されて、近藤に負けたまま終わるのが嫌だったのです。
近藤に負けた男と妻に思われるのが嫌で、近藤を騙すことで私の方が上なのだと、少しでも思わせたかっただけなのです。

「子供達にも離婚理由を話すぞ」

「自業自得ですから仕方ありません。蔑まれても仕方のない、私は情けない母親です」

子供で脅しても駄目なことから、妻の決心は固そうです。

「俺に責められて暮らすのが嫌になったか。結局、最初から償いなどする気は無かったか」

「責められるのは仕方ないです。私は殺されても何も言えないような裏切りをしたから」

妻は胸の内を話しました。
実家で今までのことを書いていて、どれだけ自分が酷い人間か、どれだけ近藤が裏表のある人間か、はっきり分かったと言います。
しかし近藤と電話で話し、甘い言葉を並べられて復縁を迫られると、口では厳しく非難していても、悪い気はしなかったのです。
電話を切ってからそのような自分の気持ちに気付き、激しい自己嫌悪に陥って、会ってはっきりと断る決心をしました。

「酷い男と分かっても、嫌いにはなれないということか?」

「嫌いです。自業自得だけれど、今では彼を怨んでいます」

妻は近藤と会って、二度と付き纏うなときつく抗議しました。
しかし知らぬうちに、一番新しい、一番色っぽい下着を着けていたことを、私に指摘されて気付きます。

「抱かれることも想定して、あの下着を着けて行ったのか?」

「二度とあなたを裏切るつもりは無かった。彼と関係を持つなんて考えてもいなかった。でもあなたに言われて思い出したの。あの日、無意識のうちに一度着けた下着をわざわざ脱いで、あの下着に穿き替えたことを」

「遠回しに言っているが、結局会って抱かれたかったのだろ。お前はセックスで気持ち良くさえしてくれる男なら、どのような男でもいいんだ。離婚してやる」

離婚すると言ってしまい、しまったと思いましたが今更撤回も出来ず、そのままの勢いで妻の名前の書かれた離婚届を持ってくると、書き掛けてあった私の欄に署名捺印して、妻の目の前に叩きつけてしまいました。

「これはお前が役所に行った時に出しておけ。これで俺も楽になった」

「あなた、ごめんなさい。こんな妻でごめんなさい。長い間ありがとう」

「何がありがとうだ。そんな気持ちも無いくせに。これで近藤に抱いてもらえると、腹の中では舌を出しているのだろ?慰謝料は500万。分割でいいから必ず払え」

私は苦し紛れに、お金で思い止まらせようとしましたが、妻は何も言わずに頷きます。

「ごめんなさい。あなたの人生を無茶苦茶にして、ごめんなさい。ごめんなさい」

妻は何度も何度も謝りながら、玄関まで歩いて行ってしまいます。

「始発のバスまでいればいい。最後の情けだ」

私は引き止める良い方法が浮かばずに、時間稼ぎをしようとしていましたが、妻は靴を履いてしまいました。

「ありがとう。歩ける所まで歩いて行きます。本当にごめんなさい。謝っても許してもらえないだろうけど、ごめんなさい」

妻が出て行くと、情けないことに涙が出てきました。
これが30年間いつも隣に寄り添っていた妻との別れだと思うと、声を出して泣きました。
今なら間に合うかも知れないと思いましたが、引き止めたところで妻を許す自信もありません。
許すのも辛く、別れるのも辛い。
結局私は動くことが出来ませんでした。

妻は出て行ってから一度も連絡がなく、そのことからも、私など忘れて近藤と楽しくやっているのだと思っていた私も、一切連絡をとらずに極力考えないようにしていました。
しかし妻と別れて初めての月末に通帳を記入すると、約束通り妻から慰謝料が振り込まれていたので、本当に妻と他人になってしまったことを実感して寂しくなり、寝取った近藤に対する怒りがまた湧いてきて、慰謝料の話も終わっていなかったので電話をかけましたが、マンションの電話も携帯も、「この番号は現在使われていません」とアナウンスが流れるだけで繋がりません。

翌日は土曜日なので役所で妻を捕まえることも出来ず、朝早くにマンションへ行ってみよう決めて眠りましたが、夢の中ではマンションに行くとドアが開いていて、中に入ると近藤と妻がベッドの中で、裸で抱き合って私を指差して笑っています。
その後眠れなかった私は、これが正夢だと余計辛くなると思いながらマンションに行くと、このような早朝から入り口に人相の悪い2人の男が立っていて、私が近藤の部屋のチャイムを押すとすぐに駆け寄って来ました。

「親父さんは、近藤の知り合いか?」

「いいえ、知り合いとは少し違いますが」

借金絡みだと思った私は、妻のことが心配で鎌をかけてみました。

「実は少しお金を貸していたのですが、一向に返してくれる気配が無いので、この時間ならいるだろうと思って来てみました。留守なのですか?」

2人は顔を見合わせて笑っています。

「親父さんも、朝早くからご苦労だったな。残念ながら、どうも逃げたらしい」

その時もう一人の男が走って来ました。

「大家を叩き起こして、鍵を借りてきました」

部屋の中は、泥棒でも入ったかのように荒れています。

「余程慌てていたな。家財道具一式置いて逃げたか。3日前から、また年増女を連れ込んでいたから油断してしまったが、舐めた真似をしやがって。どこへ逃げてもすぐ探し出して、死んだ方がマシだと思うほど、きっちり追い込みを掛けてやる。俺達の商売は、舐められたら終わりだからな」

その女は妻だと思った私は詳しく聞きたかったのですが、この時の男の横顔に恐怖を感じたので、これ以上関わるのをやめました。

「親父さんも、奴の居所が分かったら連絡してやろうか?もっとも、俺達の回収が先だがな」

「ありがとうございます。貸したのは5万なので、私は諦めます」

連絡先を教えるのが嫌で、嘘をついて断りました。

「5万?そりゃあ諦めた方がいい。この辺りの主な所からはほとんど借りているから、素人の親父さんのところまでは、とてもじゃないが回って来ない」

近藤は公務員という安定した職業だったので、みんなが競って貸したと言います。
ところが役所を辞めてしまったことで、一気に回収に回りました。
それで近藤は堪え切れなくなって、多少なりとも手に入った退職金を持って逃げたのでしょう。

「それに、おそらく遠くに逃げただろうから、回収に行くだけでも泊まりになると、5万くらいの金は掛かるかも知れない」

近藤はこの男達に追い詰められて地獄を見ろと思いましたが、行動を共にしているかも知れない妻のことは心配です。
すっかり妻は近藤と一緒にいると思い込んだ私は、妻についての情報を聞こうと、車に戻って妻の実家に電話しましたが、電話に出た義母は私の声を聞くと泣き出しました。

「電話してくれてありがとう」

どうにかその部分だけは聞き取れましたが、後は泣き声が混じってしまって、何と言っているのか聞き取れません。

「美雪は何処にいます?」

私は妻の実家に急ぎました。

「美雪は?」

母の話によると、妻はどうにか仕事には行っているそうですが、帰って来ると部屋に閉じこもってしまって出て来ないそうです。

「美雪はずっとここに?」

「他にどこに?仕事以外は外にも出ないわ」

近藤は妻を諦めると、さっさと次の女を作っていたのです。
私は妻のいる部屋に行きましたが、妻は正座してじっと何かを見ていて、ドアを開けて覗いている私に全く気付かず、こちらを見ようともしません。
私は声を掛けようとしましたが、妻の横顔にはどこか鬼気迫るものがあり、結局声も掛けずに義母達の所に逃げ返ってしまいました。

「ずっとあの調子なの。あのようなことをしたのだから、笑えないのは仕方がないけれど、悲しみもしないし泣きもしない。まるで感情が無くなったみたいで」

義母はまた涙ぐんでいます。

「いつもああやって、ずっと写真を見ているか、離婚届を見ていて」

妻はまだ、離婚届を出していませんでした。

「写真?」

「ええ。ここに置いてあった、あなた達が付き合っていた頃の写真」

私も何故か涙が出てきましたが、それでもまだ妻を許せないのです。
義母は、このままでは妻が精神的に病んでしまうのではないかと心配しています。

「少しは楽になれるかも知れないから、一度心療内科の先生に看てもらおうと言ったら、このまま壊れてしまいたいと言って、絶対に行こうとしないの」

義母と義父は、離婚されるのは仕方なくても、妻が壊れてしまわないように助けて欲しいと言いますが、久しぶりに会った私には、妻は既に壊れてしまっているように見えました。

「美雪」

後ろに行って優しく話しかけましたが、妻はアルバムを見詰めたまま振り向きもしません。

「美雪!」

ようやく振り向いた妻の目には、見る見る涙が溜まっていき、それが毀れるのと同時に私に抱きついてきました。

「あなた!」

ドアの所では、妻が泣いて感情を表してくれたと言って、義母がまた泣いています。

「俺にもその写真を見せてくれ」

それは一冊のアルバムで、どのページでも妻と私は寄り添い、笑っていました。

「これは、初めてドライブした時の。これは、2人で海に行った時の」

妻は涙を流しながら、嬉しそうに説明します。
おそらく毎日このアルバムを見ながら、この頃に戻りたいと思っていたのでしょう。

「説明してくれなくても、全部覚えているさ」

「ほんと?」

妻の笑顔を見たのは久しぶりです。
私もこの頃に戻りたいと思いましたが、妻の嫌なメスの部分を見てしまったことが、すぐには頭から離れません。
この時私は、強くなりたいと思いました。
妻の寄り道など、笑い飛ばせる男になりたいと思いました。

「これも覚えている?」

「当たり前だ。それは遊園地での写真で、このとき初めて美雪にキスを」

「覚えていてくれてありがとう。この時観覧車に乗って一番上に着いた時、あなたが突然キスしてきて」

妻から笑顔が消えて、また涙が毀れます。

「ねえねえ、これは?」

「これは同じ遊園地だが、美雪にプロポーズした時のだ」

「この時も観覧車に乗って一番上で。この時私のお腹の中には」

妻は啜り泣きを始めましたが、後ろで義母が大きな声で泣き出したので、妻の泣き声は掻き消されてしまって聞こえません。
私も涙が毀れてしまいそうになったので、トイレに行くと言って廊下に出ると、いつからいたのか義父が真っ赤な目をして立っています。
私はトイレで考えていましたが、やはり妻は普通ではないと感じました。
妻がこのようになったのは、自業自得だけだとは言い切れません。
妻は罰を受けただけだとは言い切れないのです。

あの時、私は壊れかけていました。
妻に暴力を振るうことが平気になり、犯罪行為までしてしまった私は、既に壊れていたのかも知れません。
確かに妻に出て行かれた後は、食欲も無くて辛く寂しい思いをしましたが、妻といた時は常に興奮状態で、あのままの状態ではエスカレートする一方だったでしょう。
妻がそれを分かっていたとすれば。
妻は私にどの様に責められても、塞ぎ込むことはあってもこのような状態にまではならなかったでしょう。
妻にとって私と別れることが一番辛く、そうなれば自分が壊れてしまうのを知っていたとすれば、妻は自分を犠牲にして、私が壊れてしまわない道を選んだことになります。
そして妻は壊れてしまった。
いいえ、壊れてしまって自分で無くなってしまった方が、楽だと思ったのかも知れません。
もしもそうなら、妻を治さなければ。
いまなら、まだ間に合う。

私なら治せる。

これは近藤では決して治せない。
いいえ、どんな名医でも治せないかも知れない。
妻を治せるのは、この世で私だけだと思いました。

「美雪、遊園地に行こう」

「遊園地?」

土曜の午後、子供連れや若いカップルしか乗っていない観覧車に、場違いな親父とおばさんが乗っていました。

「懐かしい」

「ここから、やり直すか?」

「えっ?」

「美雪を許した訳ではない。一生許せないかも知れない。でも、許す努力はしてみたいと思った。美雪はどうだ?」

「あなた!」

妻は私に抱きつこうとましたが、ゴンドラが揺れてバランスを崩したので、妻を受け止めた私が抱き締めていました。

「美雪。どうして慰謝料を1万円だけ振り込んだ?毎月1万円だと、40年以上掛かるぞ」

「分からない。ただ、ずっとあなたに関わっていたかったのかも知れない。酷い妻だったけれど、ずっとあなたに覚えていて欲しかったのかも知れない」

私の決断が正しかったかどうかは、まだ先にならないと分かりません。
このことで、私も妻も更に苦しむ時が来るのかも知れません。
ただ、理屈ではなくて、妻とは離れられない運命を感じます。

このような妻も私の好きだった妻の一部だと、受け止めようと思った時、私は長い悪夢から醒めました。

これらは全て、私が妻と同時に見た、夢の中の話です。