何年前になるかな・・・大学行ってた時だけど、俺って高校まで堅物でさ。
親が歳いってるせいもあって結構厳しい家でさ。
志望大学もチョイ無理目だったせいもあって、女の子と付き合った事もなくてさ。
そんなヤツが大学受かっちまったんで、当然遊びたいよな?
だけどそんな簡単にハイそうですか、なんて女の子いないし、彼女なんて中々出来なかったんだよな。
コンパ行ったって話し掛ける事も出来ないし、向こうから声掛けられても、真っ赤になるだけ(笑)
思えば純情だったな。

だから必然的に男ばかりと遊ぶ訳。
そんな友達の中にSって奴が居た。
コイツは女の子にもモテたし、元々都会育ちだったもんで・・・なんて言うかな。
俺にとっては師匠!みたいなモンだった。
金は持ってなかったけどいい奴だったよ。

Sに色んな相談もした。
どうやったら女の子と話せる?とか、どうやって付き合うのか?とかね。

Sは色々アドバイスしてくれた。
俺はその頃メガネ掛けてたんだけどコンタクトにしたりとか、服装とか今に流行りはコレだとか、髪はこうしたら・・・とかね。
まぁSのお陰もあって徐々にだけど、俺も変ってきたんだよ。

あれは2年の時のコンパだったと思うけど、ネルトンごっこが流行ってたんだよ。
それでその時は女の子から告白するバージョンだった。
Sは「俺、あの子いいなぁ」なんて言ってた。

俺も可愛い子だなぁと思ってたけど、まぁ無理だろうと思ってたし、Sだって無理だろうとも思ってた。
一番可愛い顔したし、皆彼女を狙っていたと思う。

そして告白タイム。

なんとその彼女は俺の前に立ったんだよ。
驚いた。
「彼女にお願いします」って言われたのも驚いたけど、廻りの男連中からの嫉妬の眼にも驚いた。
まさか俺がこんな事で羨ましがられるなんてさ。

そして俺は彼女と付き合い出した。
名前はMにしとこうか。

楽しかった。
初めての彼女だったし、何よりも自分がドンドン変って行く、自信がついてくる気持ちってのかな?楽しかった。

だけどやっぱり、俺はオクテだったんで、Sにも相談してたんだよ。
セクースに持ち込めないんだよってな。
Sは何故かその相談には親身になってくれなかった。
その時は余り気にしてなかったけど、後から分かったんだよね。

ある日、Sと俺のアパートで呑んでると彼女から電話が入った。
今から遊びに来ると言う。

「あぁ、今Sと呑んでるんだ。三人で呑もうよ」

暫くするとMが来た。
色んな話ししてて、盛り上がった。
気がつくと酒が切れてた。

「俺ちょっと酒買ってくるわ」と言ってふらつく足で立った。

「じゃぁ俺、チュウハイ頼むわ」
「私は・・・そうだなぁ・・・おつまみ欲しい~」
「分かった、行って来るよ」と俺は玄関から出た。

階段降りて、ありゃ?財布忘れた事に気がついて戻った。
玄関開けて部屋に入ろうとしたんだが、2人は話しが盛り上がってて俺の気配に気がつかなかったみたいだ。

何話してるんだろうなぁ?って思って聞き耳たてたんだ。

「ねぇMちゃん、何故アイツが良かったのさ?」
「え~何故って?」
「俺、Mちゃん好みだったんだよね」
「え~そうなんだー?」なんて会話していた。

そうしたらSが
「でもあいつHしないでしょ?」
「え~そうだけど・・・・」
「たまにはしたいでしょ?セックス?」

オイオイなんて事聞いてんだよと思い、驚かせようと襖に手を掛けたその時にSが「俺で良かったらどぉ?」って聞こえた。

当然、彼女は断ると思ってた。
彼女の返事はなかった。
代わりに長い沈黙があっただけ。
俺は想像するしかなかった。
あそこで襖を開けていたら、チョットは俺の人生も変ってたかな。

沈黙の後、「ダメ・・もうすぐK(俺ね)が帰って来るし・・・」と彼女の声が聞こえた。
俺はキッチンに置いてあった封筒(家賃を払おうと準備していた)を取って、そっと玄関から出ていった。

多分キスをしていたんだろうな、あの2人・・・。
自分でも動揺していたと思う。
何を考えてあんな事したんだろう?
酒屋で買い物を済ませ、公衆電話から自分の部屋に電話した。
暫くのコールの後、Sが出た。

「どうした?」
「いやさ、欲しい酒が店になかったんで、もう一軒の方に行って来るよ。だからあと3、40分掛るよ。」

そうしてまた俺は部屋に戻った。
今度はワザと足音を殺して。

確信めいたものは有ったんだが、やっぱり聞いた事のない彼女の声と言うより喘ぎか。
押し殺しているつもりなんだろうが、漏れてくるような・・・。

「ん、ん、はぁ、ん、ん・・・・」

あの時の音は忘れられない。
童貞だった俺だが中で何が起きているかは手に取るように分かった。

自分で怒っているのか、興奮しているのか分からなかった。

ただ・・・ただ・・酷く体が熱かった。

「あ、あ、ぁ、ぁ、ああ、ああっ!」

彼女の声が高まってきた時、俺は居たたまれなくなって、またそっと部屋から出た。
階段の処に座り込んでビールの蓋を開けた。
ぐーっとビールを呑んで、夜空を見た。

自分で今の気持ちが整理付かなかった。

頬を何か冷たい物が零れただけだった。
時計を見たら、電話してから30分位しか経ってなかった。
なんだかどうでも良くなって、2本目を開けた。

涙はもう出なかった。
眼が乾いてきてる。
同時に心も乾いて来るのが分かった。

「もうそろそろ戻らなきゃな」

ヨロヨロと立ち上がり玄関の前に立った時、フイに中からドアが開いた。

「お!心配してたぞ!Mちゃん、K帰ってきたよ~」
「あーん、心配してたんだよ~」
「何やってたんだ?オマエ?」

その後の会話は余り憶えていない。
それより不思議な映画を見ていたような感じだった。
2人がつい先ほどまでやっていた行為よりもショックだった。

何故平然としていられるのだろう?

殺意ってのはこういう気持ちなのか?って思った記憶がある。

その後も俺はMと付き合っていた。
無論Sとも。
セックスもした。
誘う時も自然に出来たなぁ(笑)
そりゃそうだよな。
彼氏以外の男とも(しかも俺の友人と)平気で出来る女だから、嫌われたって良いんだから、遊び感覚でサラって誘えるさ(笑)

結局大学卒業するまでMとSとは続いた。
多分偶にはMとSは関係があったと思う。
2人とも連絡が付かない事があったし、SはMとのデート代を俺に借りにきた位だ。
(これは想像だが多分当っていると思う)

だけど俺は素知らぬフリを続けた。
卒業間近になって俺はMと婚約した。
と言っても、卒業して休みに入ったら、俺の故郷の両親に会わせる約束をしただけなんだけど。
彼女の方も概ね同じ認識をしていたと思う。

卒業前にまた、三人でアパートで呑んだ。
色んな話しをした。
皆ベロベロになってた。
俺は酔いながらも頭は冷静だった。
深い水の底に段々沈み込んでいくような感じかな?

「引越しは来週中にするからさー」と俺。
「お、手伝おうか?」とS。
「いや、散らかってるから来てもらうのも迷惑なんだよ(笑)」

「秋位には専務の奥様って言われてるんだよ~」とMに俺。
「え~、なんて返事すれば良いのぉ~」とM。
「ちぇ!金持ちは良いよなぁ!!」とS。

俺は多分、その時一番Mに優しかったと思う。
色んな夢をMから聞いて、俺はMに色んな夢を聞かせた。

俺の実家は小さいながらも、工場を営んでた。
オヤジが一代で築いた会社だ。
ここまではホントの話しだ。
ただ一つの嘘を除いてな。
実家の所在地は2人に明かしてなかった。
他の奴にも。

俺は翌日、荷物をダッシュでまとめて帰った。
置き手紙も残さずに。

あれから11年経つけど、あの2人どうしてっかな?
案外ケコーンしてたりしてな(笑)